「インプレ」はインプレッションの略語で、「印象」という意味です。
ネット上には「○○のインプレ」といったブログや記事が散見されますが、ロードバイクのホイールについても、実に多くのインプレが並びます。
同じホイールを使っていても、賛否があるのはなぜなのか?
インプレの不思議を探ってみましょう。
インプレは個人の印象にすぎない
インプレは「印象」という意味ですから、どうしても主観が入ります。
評価や評論も当然ですが、どんなに俯瞰的な目で見ていたとしても、100%の客観性を持った論調はあり得ません。
また、人には好き嫌いがありますから、それも論調に出てしまいます。
例えば、ラーメン屋さんのインプレ記事があったとします。
そのお店は、こってりとしたスープが売りですが、記事を書いた人は、あっさりとしたスープが好きだったとします。
その結果、その人のインプレは「こってりしすぎている」になる可能性が高いです。
ロードバイクのホイールであれば、柔らかめの乗り心地が好きな人が、ガチガチの高剛性のホイールを「硬すぎる」と評価するということです。
ですから、インプレは「白」を「黒」と言ってしまうような明らかな間違いは別として、個人の受けた「印象」なので、正解も不正解もないのです。
そのため、インプレを見るときの心構えとしては、「こんな意見もあるんだな」くらいの感覚で良いと思います。
ロードバイクのホイールでインプレの評価が分かれる理由
ロードバイクのホイールのインプレで評価が分かれる理由は、比較対象が違うことが考えられます。
例えば、ロードバイクのホイールの売れ筋ゾーンである、アルミリムの中級グレードのインプレがあったとします。
具体的には「カンパニョーロ・ゾンダ」「フルクラム・レーシング3」辺りですが、インプレの多さでは群を抜いています。
重量は約1500~1550g、価格は6~7万円といったところです。
これらは、初心者の方が初めてのホイール交換をする際に適していると言われています。
初心者向けの完成車には、2000gを超えるような重量のホイールが装着されていることが多いです。
そのため、ゾンダやレーシング3を選んだ人のインプレは、「走りが軽くなった」「少ない力でもホイールがするする回る」になるのです。
確かに、ホイールの重量が500g軽くなれば、走りの印象は大きく変わりますので、先述したように決して不正解ではありません。
ところが、既にゾンダやレーシング3を卒業し、もっと軽量で高性能なホイールの乗り味を知っている人が昔を懐かしんでインプレをすれば、全く別の話になるでしょう。
「今想えば、あんなに重いホイールを回していたのか」「値段相応だった」みたいなインプレになってしまいそうです。
このように、同じホイールでも比較対象が変われば、インプレの論調が大きく変化するということになります。
ロードバイクのホイールのインプレは同条件下のものではない
ロードバイクのホイールにおいて、インプレの評価が食い違う要因を考えていますが、次は条件の違いです。
同じホイールを評価しているとしても、全ての人が同じ条件の元というのはあり得ません。
フレーム・タイヤ・乗り手の体重や脚力・路面の状態など、これだけ違う要素がある中で、ホイールの評価が同じになるわけがないです。
硬いフレームなら、いくら柔らかめのホイールだって、全体の印象は「硬め」になります。
また、硬めのホイールでも、空気圧が低い太めのタイヤを履いて走れば、柔らかい乗り心地になるでしょう。
体重70kgの人と50kgの人のホイールのインプレも、評価は違ってきます。
ホイールは上から荷重が掛かると、多かれ少なかれ、たわみます。
70kgの人が乗れば、50kgの人が乗ったときよりは大きくたわみますから、70kgの人は「剛性が低い」と評します。
しかし、50kgの人は、そのたわみ具合が、ちょうど良いと思ってもおかしくないです。
剛性の低さは、よほどグニャグニャなホイールでもない限り、乗り心地の良さに繋がりますから、高評価になることもあります。
そういった意味では、同じ人が同じフレームと同じタイヤで、何本かのホイールを履き替えながら比較しているインプレは、素晴らしいと思います。
ロードバイクのホイールの剛性
ロードバイクのホイールにおいて「剛性」は、非常によく議論される要素のひとつです。
剛性は、物質が変形する度合いを表します。
そのため、剛性が高いとなれば変形しにくいことになり、低いとなれば変形しやすいことになります。
ホイールに限らず、変形しないということは「硬い」ということであり、変形しやすいものは「柔らかい」です。
また、ホイールの話で言うと、剛性が高く硬いホイールはパワーロスをしないので、ペダルを踏んだ力がダイレクトに動力になってくれます。
ペダルを踏めば踏んだ分だけ、前に進んでくれるような感覚です。
ところが、乗り心地は硬いですし、衝撃を吸収しませんので、地面からの振動はそれなりに伝わって来ます。
一方、剛性が低く柔らかめのホイールは、たわむ分、パワーをロスします。
しかし、その分、衝撃は吸収してくれますし、当たりが柔らかいので快適な乗り心地になります。
これがホイールにおける剛性の話ですが、これにも好き嫌いや個人差があるので、インプレの評価が変わってくるのです。
ホイール剛性にも好き嫌いがある
先述したラーメン店のインプレにならえば、ホイールの剛性にも好き嫌いはあります。
これはロードバイクのホイールメーカーの人のブログで読んだ話ですが、何人かの選手に試作品で試乗してもらったそうです。
その結果、ある人は剛性が低いから高めてくれと言い、別の人は反対のことを言ったそうです。
これで分かるのは、平均値的な基準の剛性というのは存在せず、こういったプロのライダーでも、好き嫌いで判断している可能性が高いということです。
また、先述した比較対象の話にも関係しますが、インプレで「硬い」と評されているホイールが、ホイール界全体でも「硬い」とは限りません。
例えば、先ほど取り上げたレーシング3とゾンダを比較した場合、一般的な意見をまとめれば、レーシング3のほうが「硬い」ホイールとなります。
しかし、ホイールの硬さはリムの高さや、スポークの素材でも大きく変わります。
リムは高くなると剛性が高くなりますし、スポークはスチールよりも硬いアルミを使えば、ホイールの剛性は高くなります。
レーシング3は、リムはノーマルな高さですし、スポークもスチール製です。
そのため、レーシング3よりも明らかにリムが高いものや、アルミスポークを採用しているホイールは、レーシング3よりも硬い可能性があります。
あくまでもゾンダより硬いというだけで、レーシング3が特別に硬いホイールというわけではないのです。
インプレを気にし過ぎない
ロードバイクのホイールは軽量で高性能ですから、市場の需要も高く、その分インプレも星の数ほどあります。
ここまで話してきたように、インプレはあくまで個人の主観ですから、全ての人が共感できるものではないです。
多数派と少数派に分かれるでしょうが、私と皆さんが同じだとは限りません。
30万円の高級カーボンリムホイールでレースに出る人もいれば、6万円のレーシング3で大健闘しているライダーを私は知っています。
ロードバイクのホイールは、ピンキリであるがゆえに、上を見たらキリがないのです。
自分の経済事情でも変わってきますし、価値観の違いもあります。
自分が良いと思っているホイールをこき下ろしているインプレがあっても、それはその人の主観であり、価値観の違いだと割り切るべきです。
インプレは一歩引いて、参考程度に読まれることをおすすめします。
インプレは主観!
今回はロードバイクのホイールに対するインプレを、どのように解釈するのかを考えてみました。
インプレは主観なので、正解・不正解ということはなく、あくまでも、ひとつの意見として参考にするのが良さそうです。
ホイールだけの購入で試乗させてくれるお店は少ないですが、何とかして自分に合った1本を見付けて欲しいと思います。