ロードバイクの完成車に、アルミフレームでありながら、フロントフォークだけがカーボンという組み合わせをよく見ます。
衝撃吸収性の高いカーボンを、地面からの振動を拾ってしまうフォークに採用するのは理に適っています。
そこで今回は、カーボンフォークへの交換をおすすめすることとし、手順と注意事項についてもお話していきます。
カーボン・フロントフォークが担う重要な役割
今回は、ロードバイクのフロントフォークの話をします。
ロードのフロントフォークはフレームとセットとして扱われることが多く、単純に「フォーク」とも呼ばれます。
フロントフォークは、ハンドルと前輪を繋ぎ、自転車のかじ取りをする役目として、非常に重要な部分です。
しかも、振動など地面からの情報はフォークを通じて伝わってもきますし、吸収してもくれます。
そのため、吸収性の高いカーボン素材にすることが望まれ、エントリーグレードの完成車でも、カーボンフォークが採用されます。
フロントフォークは、ヘッドチューブに挿入する「ステアリングコラム」。
そして、前輪にクランプする「ブレード」または「レッグ」と呼ばれる部分から成ります。
どちらもカーボン素材のフルカーボンフォークと、ブレードだけをカーボン素材で作っているものがあります。
今回はアルミ素材のフォークを、カーボンフォークに交換することを考えていきます。
カーボン・フロントフォークの交換前に分解方法を確認
フロントフォークをカーボン製に交換する前に、まずはハンドル周りの分解と、メンテナンスの話からしていきます。
それができないと交換は困難なので、あらかじめ、お話しておきます。
ハンドルはステムというパーツによって、フォークのステアリングコラムに繋がっています。
そのため、まずはステムを外しますが、ハンドルは外さないままで、大丈夫です。
ステムの上部に付いているボルトを緩めて、キャップごと抜きます。
ステムは横に付いている固定ボルトを緩めると、フォークコラムから外れます。
外しますと、ハンドルの高さを調整するための「スペーサー」が噛ませてあるので、抜いておきます。
この時点でフォークは引き抜けますが、ブレーキが取り付けられています。
フォークは下に引き抜くので、同時にブレーキワイヤーも引っ張られます。
そこでワイヤーがブレーキから外れたり、切れたりすると後々厄介ですから、ブレーキは外しておいた方が賢明です。
カーボン・フロントフォークの交換前に分解方法を確認②
引き続き、フロントフォークの分解手順です。
ブレーキを外したら作業をしやすくするために、前輪も外しましょう。
クイックリリースを解除すれば、簡単に外れます。
この時点でフォークコラムに目を戻すと、上側のベアリングがあることが分かり、少しだけフォークを下に抜くと下側のベアリングが見えます。
ベアリングは、回転体をスムーズに回すためのパーツです。
自転車ではフォークの他に、クランクとフレームを繋ぐBB(ボトムブラケット)、車輪中央にあるハブなどに使用されています。
ハンドル周りのメンテナンスの肝は、このべアリングの清掃とグリスアップです。
メンテナンスはフォークを引き抜き、ヘッドパーツ群をパーツクリーナーなどで清掃し、ベアリングをグリスアップすれば完了です。
分解する際には、後からの組み付けのことも考えて、ヘッドパーツを外した順番通りに並べておいた方が良いですね。
カーボンフォークへの交換は、この後の作業になります。
どんなカーボン・フロントフォークに交換するか
まずは、フロントフォークをカーボン製に交換するにあたって、注意事項をご説明しておきます。
先述しましたが、フルカーボンにするかアルミコラムのフォークにするかを考えますが、これは正直どちらでも良いです。
何か無責任に聞こえますが、完成車の場合、フルカーボンにするとコストが掛かるから、アルミコラムにしていることがあります。
逆に、軽量化を図るために、フルカーボンを採用しているものもあります。
そのため、理由の大半はコストと軽量化であり、衝撃吸収などの機能に、大きな差が出るわけではありません。
後述しますが、アルミコラムの方が色々と扱いに、気を使わなくて済むことが分かってくるはずです。
あとは、サイズを合わせる必要があります。
コラムはヘッドチューブに挿入し、ステムで固定しますので、それぞれの径を合わせなくてはいけません。
現行のサイズで良いので、外したフォークをすぐに捨てたりせずに、寸法を測っておいてください。
フロントフォークの交換手順①
ここから、カーボン・フロントフォークへの交換の手順をお話します。
しかし、専用の工具が必要だったり、手間の掛かる作業になります。
ですから、この記事を読んでみて、自分ではできないと感じたら、ショップに依頼することを考えてください。
工賃はお店によって違いますが、5千円以内で収まるはずです。(フォーク代は別です)
では、作業手順をご紹介しましょう。
まず、古いフォークからベアリングを外し、新しいフォークに付け替える作業から始まります。
ベアリングの脱着がフォーク交換におけるメインイベントで、これをクリアするのが、一番厄介です。
特に下側は、コラムの根元にきつく圧入されているので、手ではびくともしないでしょう。
マイナスドライバーやカッターで外している人もいますが、専用工具を使用するのが無難です。
次に、外したベアリングを新しいフォークに取り付けますが、圧入するので、これも手では不可能です。
ベアリングを挿入して、コラムにパイプ状の工具を被せ、それを上からハンマーで叩いて、圧入していきます。
工具は専用のものもありますが、水道工事などに使う塩ビのパイプでも代用できます。
ホームセンターで3~40cmにカットしてもらって、200~300円です。
また、圧入時にアルミコラムならガンガン叩けますが、カーボンの場合は慎重にゆっくりと叩いて、圧入していってください。
ちなみに、ここまでの作業を専用工具で行いますと、工具代が4,500円くらい掛かります。
フロントフォークの交換手順②
下側のベアリングが圧入できたら、次はコラムをカットします。
コラムの長さはハンドルの高さを決めますが、もちろん今まで通りで良ければ、それに合わせてカットします。
金ノコを使って切る場合は、「ソーガイド」という工具があると、きれいに切れます。
または、パイプカッターを使っても良いです。
ソーガイドは約2,000円、パイプカッターは1,000円程度で手に入ります。
カーボンコラムは切断面が後からほつれてくるので、瞬間接着剤を切断面に塗付しておきます。
コラムをカットしたら、新しいフォークをヘッドチューブ挿入して、前輪とブレーキを組み付け直します。
ヘッドパーツとスペーサーをかませたらステムを戻しますが、この段階では横の締め付けボルトを仮止め程度にしておいてください。
ここで一度、古いフォークのコラムの中を覗いてみてください。
ナットのようなものが埋め込まれているのですが、これがベアリングの玉当たりを調整するために必要なパーツです。
アルミコラムは、このナットを圧入して、アンカーボルトをナットに通して、ベアリングを調整します。
アルミコラムなら、安価で軽量で固定力も強いので、その方式を取る人のほうが多いでしょう。
しかし、カーボンコラムは圧入には耐えられないので、その方式は採用できません。
そこでここでは、カーボンコラム用にカードリッジ式の「プレッシャーアンカー」をご紹介しておきます。
【Mr.CONTROL(ミスターコントロール):TK-012SW-50L コラムプラグ】
参考価格:¥1.050
コラム内径25.4mmまで対応しています。
フォークコラムの中にプレッシャーアンカーを挿入し、六角レンチでボルトを締めて固定します。
そして、一番最初に取り外した、ステム上部のアンカーボルト付きのキャップを戻します。
最後にアンカーボルトを締めていきますが、ベアリングの調節なので、とにかくゆっくりと行います。
ハンドルがガタガタと緩まない、かといってゴリゴリした重い感じにもならない、ちょうど良い場所を見付けて調節します。
あとは、横の固定ボルトを締めて、フロントフォークの交換は終了です。
フロントフォークの交換は意外と簡単?
皆さんは、今回ご紹介した手順を見て、フォークの交換は簡単だと思いましたか?
私が以前に、この手順を知ったときは簡単だと思い、後日無事に交換できました。
少なくとも、メンテナンスは必要不可欠なので、分解までは覚えておいた方が良いですね。