完組ホイールのメーカーの中でも人気のあるフルクラム、その中でも練習用ホイールとしてだけではなく、レースでも使用可能なのがレーシング5です。
レーシング5を普段使っている人は分かるでしょうが、メンテナンスをしないでいると、ホイールからカラカラというラチェット音が鳴り出します。
爆音がいいと考えている人が居ることは認識していますが、ホイールの寿命を縮めてしまうので、いいことではありません。
今回はその理由と予防法についてご説明します。
フルクラムレーシング5ラチェット音が気になる?
冒頭で述べたようにメンテナンスをやらないで乗っていると、カラカラと気になる音がしてくると思います。
フルクラムレーシング5の取扱説明書によると、使用する気象条件や使用強度にもよりますが、概ね2000~5000キロ位毎に注油をしてあげる必要があるということです。
日々の走行距離を記録している人は把握してますが、記録してない人でもラチェット音が耳についてうるさいなと感じたら、注油の時期なのです。
自分で実施するのは難しそうなのでショップに頼むのもいいですが、そのたびにメンテナンス代金を払うくらいなら自分でできたほうが今後のためにもいいですよね?
注油をするにはハブ軸を分解する必要があります。
フルクラムのホームページに分解結合の方法が公開されていますが、日本語の説明がないので画像で想像するしかありません。
でもフルクラムの各ホイールは、どのホイールも簡単に分解結合ができるようになっているようです。
フルクラムレーシング5のラチェット音が鳴る理由
では、なぜラチェット音が大きくなったら注油が必要なのでしょうか?
理由は後輪ハブ軸のフリーボディーの内部構造にあります。
それはフルクラムレーシング5に限らず多段変速のついたスポーツ用自転車ホイール全般の共通事項です。
ペダルを回すのを止めても、ホイールが回り続ける理由は、後輪のハブにはフリーボディーとラチェットがついているからです。
詳しくご説明すると、フリーボディーの外側にばねの力で外側に出てくる爪が付いています。
その爪がハブ軸の内側の凸凹に引っかかって動力を伝える仕組みになっています。
外側のフリーボディーが止まると爪の引っ掛かりが解けて、爪がフリーボディー側に引っ込み空回りするようにできているからです。
そこでラチェット音が鳴る理由が出てきます。
その理由とは、フリーボディー外側の爪と、ハブ軸内側の凸凹が空回りする際に擦れて出る音だったのです。
そして、このラチェット音が大きくなるということは、中のグリスが変質して柔らかくなり、摩擦が大きくなっている証拠です。
そのまま走ると内部の凸凹と爪が摩擦で摩耗してしまい、ハブ軸自体が使えなくなる可能性があります。
特にフルクラムのホイールは、メンテナンスのタイミングが分かりやすいように、グリスが変質したらラチェット音が大きくなるように作られているのでしょう。
そのため、定期的にフリーボディーを外して、注油をして下さい。
フルクラムレーシング5のラチェット音はこれで防げる
日ごろの注油はラチェット音が大きくなった時のタイミングで、フリーボディーを外すところまでやればOKです。
スプロケットを外しているので、ついでに洗浄できるというメリットもあります。
また、ハブ軸は10000~20000キロ毎に点検・交換・注油してメンテナンスする必要があります。
その時はショップに持ち込む方がいいでしょう。
なぜならハブの分解はある程度の技術力と慣れ、そして部品交換が必要だからです。
ハブ軸をメンテナンスする理由は、ハブ軸の中にベアリングが入っていて、グリスが変質して量が減ると金属同士が摩擦で摩耗してしまうからです。
その時にベアリングやダストシール等の交換が必要な場合もあります。
また、ホイールセンターがズレていたり、スポークテンションが狂っていたりする場合もあるからです。
フルクラムレーシング5だけでなく、ホイール全般に言えることですが、ラチェット音が大きくなったら危険信号なのです。
フルクラムレーシング5のフリーボディーの取り外し
作業の工程ですが、まずフルクラムレーシング5の後輪をフレームから外します。
ラチェット音を抑制する為に、注油をしますがまず作業準備をします。
準備する工具は、
・スプロケット外し工具
・ロックリング外し
・モンキーレンチ
・5ミリ六角レンチ
・17ミリのスパナ
・先の薄いマイナスドライバー
を準備してください。
ケミカルは、パーツクリーナーとグリスを準備します。
それでは、フリーボディーの取り外しに入りますが、スプロケットの交換、及び洗浄整備については割愛させていただきます。
まず、ホイールからクイックリリースとスプロケットを外します。
フリーボディー側のハブ軸の中心に5ミリ六角レンチを挿し込み、フリーの中に見えるロックナットに17ミリスパナをしっかり噛み込ませます。
ロックナットは逆ネジなので、スパナが時計回りになるように回してロックナットを外します。
初めてハブ軸を分解するときはかなり硬いので、ロックナットの角をなめさせないように慎重に作業してください。
次はフリーボディーの中にリング状のスペーサーが入っているので、それを先の薄いマイナスドライバーで引っ掛けて持ち上げるようにして外します。
フリーボディーは引っ張るだけで外れます。
面倒でなければ、この先のダストシールとかベアリングも分解した方が、洗浄整備がしやすいのですが、2000~5000キロ毎の注油目的の分解はここで終わりです。
フルクラムレーシング5のラチェットにはこのグリスを!
外した部品はパーツクリーナーで洗浄します。
ハブ軸側をパーツクリーナーで洗浄するのは禁止です。
その理由は、ベアリングのグリスが流れ出る恐れがあるからです。
その際はウエス・綿棒・マイナスドライバー等を使って、古いグリスを拭きとります。
ここで使用する充填グリスは、市販の物であればどれでもいいという訳ではありません。
パブに注油する為なら、シマノのデュラグリスでは固すぎます。
逆にカンパニョーロのグリスは、柔らかすぎるようです。
そこで、エイカーのバイクグリスがハブとラチェット部分の専用品という表示で出ているので、一番いいかもしれません。
他にはフィニッシュラインのセラミックグリスか、プレミアムテフロングリスなどもおすすめです。
また、手がかなり汚れるのでチューブタイプか、グリスガンがあった方がいいです。
ここでご紹介した物は、フルクラムレーシング5だけに合うのではなく、他のホイールハブ全般に使えるグリスです。
確実にラチェット音は静かになります。
フルクラムレーシング5フリーボディーの組み立て
外した部品の洗浄が終わったらハブ軸を元の状態に組み立てていきます。
グリスをハブ軸のラチェットの凸凹が埋まるように充填します。
次にフリーボディーの爪と周りにグリスを充填します。
フリーボディーをハブ軸に挿し込みます。
フリーボディーを反時計回りに回して、グリスをハブ軸全体にいきわたらせます。
フリーボディーを再び抜くとハブ軸にグリスが集まってます。
周りのグリスが不足しているので、グリスを補充します。
再びフリーボディーをハブ軸に挿し込みます。
スペーサーをハブ軸に入れ、フリーボディーとハブ軸の間にしっかりと嵌め込みます。
ロックナットをハブ軸にねじ込み、5ミリ六角レンチをハブ軸に差し込み17ミリスパナで反時計回りにしっかり締めます。
ガタがないかホイールを回転させてみて確認します。
ハブ軸の組み立てはこれで終わりです。
この後、走るコースに合せて好みのスプロケットを選び、装着します。
さらにクイックリリースをハブ軸に挿し込み、フレームにホイールを装着します。
フルクラムレーシング5ホイールをクランクを動かして回転させ、ラチェット音を確認して下さい。
ラチェット音は以前より静かになっているはずです。
フルクラムレーシング5は定期的に手入れを!ラチェット音を消そう
フルクラムレーシング5のラチェット音が爆音だったのは、メンテナンス時期を知らせるサインだったのです。
爆音が気に入ってる人には申し訳ないのですが、そのまま乗っていると、いつかハブ軸のベアリングが潰れたり、フリーボディーの引っ掛かりが悪くなったりして痛い目に合います。
なので、ラチェット音が気になり出したら、定期的にメンテナンスをする習慣をつけて下さい。