ロードバイクを購入してサイズを合わせたはずなのに、なぜかしっくりこないなと感じている方はいませんか?
いろいろなスプロケットに交換してみたけれど、使用するギアの範囲がロー側に偏っていたり、トップ側に偏っていたりしていませんか?
もしかすると、「クランクとチェーンリング」が、あなたの「体のサイズや脚力」に合っていない可能性があります。
今回は、クランクとチェーンリングの交換について考えてみましょう。
クランクを交換するのはなぜ?
市販のロードバイクの完成車に、最初からついてくる「クランク」、最近のものはどうでしょうか?
そもそもクランクは、身長に合わせてチョイスできるように何種類か用意されています。
しかし、完成車には、フレームサイズが小さくても大きくても関係なく、170㎜がついてきます。
つまり、違う自転車を選んだとしても、クランクのサイズは変わらずに一律170㎜がついてくるのということです。
例えば、身長が「180cm」の人と、「160cm」の人を比較して考えてみましょう。
180cmの人の標準股下はだいたい「76cm~80cm」、160cmの人だとだいたい「70cm~74cm」と、足の長さが違うのにクランクの長さが同じ場合を想定します。
自転車の場合、股関節が足の回転運動の中心となり、ペダルに足が固定された状態で膝関節の屈曲と伸展でペダルに動力が伝わり、クランクの軸を中心にチェーンリングが回ります。
当たり前ですが、身長が160cmでフレームサイズが小さい人は、180cmでフレームが大きい人に比べ「サドル高が低い」です。
そして、180cmの身長が高い人は股下寸法も長く、クランクが上死点に達した時、胸と膝頭の距離が離れた余裕のあるフォームでペダリングができます。
しかし、160cmで身長が低く股下寸法が短い人は、クランクが上死点に達した時、胸と膝の角度が近い窮屈なフォームでのペダリングを強いられます。
そのため、人それぞれの体格に合わせたクランクの交換が必要になってくるのです。
チェーンリングを交換するのはなぜ?
次に、完成車についてくる「チェーンリング」ですが、大概の場合「50×34T」がついてきます。
今度は体格ではなく「脚力」が人それぞれ違うのに、一律同じチェーンリングがついてくるというのは問題があります。
例えば、50×34Tで「リアディレイラーがSS」の場合、スプロケットは「最大28T」までしかつけられません。
しかし、筋力のある人で平地を「アウター50T×12から17Tくらい」で走れる場合、登りは「インナー34×14から19T」を使ったとすると、この人にはこのセットは合っていないと言えます。
なぜなら、スプロケットの中央からトップ側が主に使われていて、ロー側はあまり使われていないからです。
これを「52×36T」に変えると、近似値のギア比だと平地で「13から19T」、登りで「15から21T」を使えるようになり、このギア比だと少し軽いので、回転数も上がり、速いスピードで走れるようになるのです。
同じく「50×34T」で、筋力が弱く、登りが苦手な人が同じスプロケットを使って、いつも平地は「50×15から23」、登りで「19から28」を使って走っていたとするとどうでしょう。
露側に偏った使用域なので、これはこの人に合っていない組み合わせと言えます。
この人も「50×34T」にチェーンリングを交換するとどうでしょうか。
平地で「14から21T」、登りはインナーが同じなので変わりませんが、平地でのスプロケットの使用域がトップ側に移り、より効率良くスプロケットを使えるのでスピードアップにつながるでしょう。
そのため、クランクだけでなく、チェーンリングも交換した方がいいと言えます。
クランクとチェーンリングには様々なサイズがある
ここでは、国内需要最大手と思われる「シマノ」に関して、形状とサイズの推移をご説明します。
クランクのBBとの嵌合部(かんごうぶ)の形が、時代とともに変わってきているのはご存知ですか?
ちなみに、嵌合部とは、軸と穴のはまり合いの寸法のことを言います。
現在は、クランク軸がクランク本体と一体のホローテック2構造ですが、過去はクランク本体が独立し、クランク軸がオクタリンク形状でBBの軸に嵌合させる形でした。
アルテグラが10速で6700だった時や、105が5700系の時は、クランクから出ているチェーンリングを取り付けるアームが5本で、そのボルト取付部のサイズが2種類存在しています。
そのサイズの事を「PCD」と言いますが、チェーンリングのサイズとの関係で、52-39T以上のチェーンリングは「PCD130㎜」、50-34Tは「PCD110mm」という具合に2種類存在していました。
そして、まだ105コンポーネントの10速5700系、またはアルテグラ10速6700系を使っている人は、52セットから50セットに交換する場合、PCDが130と110でサイズが違うので、クランクも交換しなければなりません。
現在は、PCDが統一され、クランクも5本から4本となり、チェーンリングだけを交換することができます。
しかし、フロントディレイラーのキャパシティーの関係で、アウター・インナーの組み合わせを変えずに交換しなければなりません。
クランクとチェーンリングの組み合わせの種類
現在発表されている、シマノの4本アームクランクのラインナップはどうなっているでしょうか?
11速コンポではデュラエース9100、アルテグラ8000、105・5800、10速ではティアグラ4700、9足でソラ3000があります。
上位3機種が11速なので、現実的には11速の人はデュラエース、アルテグラ、105の中から選ぶのが妥当でしょう。
デュラエースは7種類のクランク長に、5つのチェーンリングの組み合わせが、チョイスできるようになっていて、別にパワーメーター付きクランクセットも3×3機種、クランク単体で7種類の中から選べます。
内容はクランク長の種類が
・165
・167.5
・170
・172.5
・175
・177.5
・180
の7種類です。
そして、チェーンリングセットの種類が
・50×34T
・52×36T
・53×39T
・54×42T
・55×42T
の5種類、チェーンリングセットそれぞれでクランク長が選べるようになっています。
デュラエースのパワーメーター付きは、ギア付きが3×3種類でチェーンリングが50×34T、52×36T、52×39Tにクランク長が170、172.5、175を組み合わせる形で、クランク単体は前述の7種類から選べます。
アルテグラは、4種のクランク長と4種のチェーンリングとなっています。
内容はクランク長が165、170、172.5、175で4種類、チェーンリングは46×36T、50×34T、52×36T、53×39Tで4種類の中から選べます。
105は、4種類のクランク長と3種のチェーンリングとの組み合わせになっています。
内容はクランク長が165、170、172.5、175で、チェーンリングが50×34T、52×36T、53×39Tの組み合わせで選べます。
クランクとチェーンリングを交換する際は、以上のラインナップからの選択になります。
クランクとチェーンリングの交換!取り外し方
クランクとチェーンリングの組み合わせが決まったら交換します。
その手順を現行の4本アームクランクについてご説明します。
まず、工具を用意しましょう。
・5ミリの6角レンチ
・T30トルクスレンチ
・シマノのTL-FC16クランクボルト取り外し工具
・マイナスドライバー
・ゴムかプラスチックのハンマー
・グリス
・ウエス
・パーツクリーナー
等を用意しましょう。
【取り外し方】
左クランクの締め付けボルト2本を5ミリ6角レンチで緩めます。
そして、左クランク基部についている脱落防止の爪を起こします。
ここで、クランクボルト取り外し工具を使い左回りに緩めて外します。
左クランクは引っ張ると抜けます。
クランクを緩めたら、チェーンをチェーンリングから外します。
右クランクか左クランクを抜いた軸のほうからゴムハンマーで軽くたたいて抜きます。
T30トルクスレンチレンチを使って左回りにボルトを緩め、チェーンリングを外します。
この際、チェーンリングの歯の保護のためと、怪我をしないために、ウエスでチェーンリングを覆って緩めましょう。
取り外したらそれぞれパーツクリーナー等で、きれいにします。
クランク及びチェーリングの交換!取付け方
取り外しが完了したら、新しいチェーンリングを取り付けていきます。
まずは、取付位置と裏表を間違わないようにしましょう。
その後、アウターからインナーと位置を合わせてから、ボルトを差し込み、T30トルクスレンチを使って4本のボルトが均等に締まるように、対角線方向に徐々に締めていきます。
締め付けトルクは12から14nmで、均等にしっかり締めてください。
次に、クランク軸にグリスを薄く塗り、右クランク側からBBに奥まで挿し込みます。
右クランクと対称になる位置に溝があるので、そこに左クランクを取り付けます。
ここで工具TL-FC16を使い、クランクボルトを取り付けます。
脱落防止の爪をしっかり入れてから、クランク取付ボルト2本を、交互に均等に締め付けます。
両方のクランクを持って、ゆすってガタを点検します。
チェーンリングを交換した場合、フロントディレイラーの高さを、調整しなければなりません。
また、チェーンの長さも変えなければなりません。
小さくした場合は切ればいいのですが、チェーンリングを大きくした場合は、長くする必要があるのでチェーンを新しくして調整してください。
クランクとチェーンリング交換のメリット
クランクの長さを交換して、その人の適正の長さにすると、股関節の曲げ角度に余裕が出ます。
そのため、交換する前と比べると、力がかけやすくスムーズに回せると思います。
チェーンリングの交換は、脚力に合ったものを使うことが前提ですが、大きいものほど脚力が必要なので、交換するときは一気に大きいものにしない方がいいです。
クランク・チェーンリングを交換するメリットは、個人の体格と脚力に合せることができることです。
ギア比等を計算して適切なものを選び、快適なライディングを目指してください。