ロードレース・ミラノ~サンレモ!2017年レースも熱かった!

ロードレースが生み出すドラマは、自転車好きには、たまらないものがあります。

また、ロードバイク経験がない方でも、選手のことを知ってから見ると、レースに釘付けになりますよね。

弱虫ペダルのヒットで、ロードレースの魅力は証明されたのではないでしょうか。

今回、108回目を迎えたミラノ~サンレモの2017年のレポートをお届けしますので、少しでも楽しさが伝わり、ロードレースのファンが増えてくれたら嬉しいです。

ミラノ~サンレモってどんなレース!?

自転車のロードレースの種類は、数日間にわたって開催される「ステージレース」と、1日で終わる「ワンデーレース」の二つがあります。

ワンデーレースはたった1日で勝敗が決まるので、とても緊張感があり、高い戦術が求められる、見ごたえのあるレースです。

「石畳」や「激坂」などの難しいコースが、選手たちの前に立ちはだかります。

そして、ワンデーレースの中でも古い歴史を持ち、格式高いレースは「クラシック」と呼ばれています。
さらに「クラシック」レースの中で長い歴史がある5つのレースが「モニュメント」と言います。

”ミラノ~サンレモ”は、この「モニュメント」の一つとして、ポイントの高いレースになっています。

ちなみに、他の「モニュメント」と呼ばれるレースは、「ツール・デ・フランドル」、「イル・ロンバルディア」、「リエージュ~バストーニュ~リエージュ」、「パリ~ルーベ」です。

レースの場所は、文字通り、「~」で結ばれたコースを走るので、”ミラノ~サンレモ”はミラノからサンレモを走ります。

イタリア北部のミラノから南下し、地中海沿岸に沿ってフランス国境の近くのサンレモへゴールするのです。

約300kmというサイクルロードレース界で最長のレース距離と、比較的平坦なコースのラストに待ち構える2つの丘「チプレッサ」と「ポッジオ」が大きな特徴のレースと言えるでしょう。

歴史と伝統があるこのレースで勝利し名誉を得るために、2017年も世界中のトップライダーが集結しました。

2017年のミラノ~サンレモのレポート①

では、3月18日に開催された、2017年のミラノ~サンレモのレポートをお届けします。

2017年ミラノ~サンレモでも、選手たちは手に汗握る戦いを見せつけてくれました。

中盤にかけてのアタック合戦で、逃げと後続集団に分かれましたが、差はそこまで広がらず、緊張感のあるレースになりました。

膠着状態が続いたのは、後続集団を引っ張るバーレーン・メリダの走りによるものが大きかったと言えるでしょう。

彼の攻めの走りにより、逃げと後続集団とのタイム差がどんどん縮まる中で、最初にアタックをかけたのが、集団を走っていたティム・ウェレンスです。

今年乗りに乗っているアルデンヌ向きのアタッカー、ウェレンスは、集団スプリントになると勝負できないと考えたのか、得意とする長距離エスケープを試みました。

しかしこれは、チーム・サンウェブのシモン・ゲシェケによってあっけなく吸収されてしまいます。

さらにその後、後続集団のペースは一気に上がり、2009年に優勝したマーク・カヴェンディッシュはここで脱落してしまいます。

波乱の展開は続き、平坦区間に入ったプロトンでは、トニー・ギャロパンがアタックを仕掛けました。

それにピタリと付いたのが、クイックステップのフィリップ・ジルベール、そしてサガンが率いるボーラの隊列でした。

2017年のミラノ~サンレモのレポート②

2017年のミラノ~サンレモでも、選手たちは見ごたえのある駆け引きを見せてくれました。

さあ、いよいよ最後の「ポッジョ・ディ・サンレモ」の登りの戦いです。

集団の前方を占領していたのは、エーススプリンターのエリア・ヴィヴィアーニ擁するチーム・スカイでした。
その前をデュムランがハイ・ペースで走っていきます。

そうして、ポッジョ山頂まで残りわずか、最大勾配・8%の厳しい区間で、レースの山場が訪れました。

ついに、ペーター・サガンがアタックをかけたのです。

フェルナンド・ガヴィリアが予期していた世界チャンピオン・サガンの攻撃に、ガヴィリアのチームメートであるジュリアン・アラフィリップと、チーム・スカイのミハウ・クファトコフスキーが食いついていきました。

この3人の先頭を主に率いていったのはサガンでした。

しかし、やがて残り1kmで後続の集団と20秒以上のタイム差が開き、もう後続の集団が追いついてくる可能性が消滅したとき、アラフィリップとクファトコフスキーは勝利を見据え、何度か先頭交代を行いました。

そして、最後のスプリントです。

まだ若く経験値が少ないアラフィリップは、この戦いに加わることはできませんでした。

サガンがまずは3人の先頭に出て、彼の持ち味である勝負強さを感じさせる加速によって、残る2人との距離が開きます。

しかし、レースはここでは終わりませんでした。

クファトコフスキーが猛追し、デッドヒートが繰り広げられます。

どちらが勝利してもおかしくない大接戦を勝ち抜いたのは、クファトコフスキーでした。

全力を使い果たした二人は、倒れこむようにゴールし、彼らを褒めたたえる歓声があがりました。

ミラノ~サンレモのリザルド・まとめ

☆2017年ミラノ~サンレモ・リザルド

1位:ミカル・クウィアトコウスキー
2位:ペテル・サガン
3位:ジュリアン・アラフィリップ
4位:アレクサンドル・クリストフ
5位:フェルナンド・ガビリア
6位:アルノー・デマール
7位:ジョン・デゲンコルブ
8位:ナセル・ブアニ
9位:エリア・ヴィヴィアーニ
10位:カレイブ・ユアン

上位10人、全員が20代のフレッシュな選手でした。

ロードレースでは、30歳前後にキャリアのピークを感じる選手が多いものですが、今回はクウィアトコウスキーをはじめとして、若手ライダーが活躍した大会になりました。

しかし、その舞台裏には、かつての主役たちのアシストがありました。

例えば3位と5位の選手が所属するフランスのチーム・クイックステップフロアーズは、トム・ボーネンやフィリップ・ジルベールが、年若い2人を助けました。

ミカル・クウィアトコウスキーの粘り勝ちにより、優勝はできませんでしたが、チームオーダーをベテラン選手がよどみなく機能させたのです。

こうしたベテランの支えによって、今後もどんどん若いスター選手が現れることを予感させるロードレースになりました。

2017年ミラノ~サンレモ優勝選手!クウィアトコウスキー

2017年ミラノ~サンレモで優勝を飾ったミカル・クウィアトコウスキーは、ツールドフランスでもその実力を見せつけ、高い評価を受けています。

これからどんどん人気が出てくる選手だと思いますので、少し詳しくご紹介していきます。

☆ミカル・クウィアトコウスキー

チーム:チーム・スカイ
生年月日:1990年6月2日
身長:176cm
体重:68kg
国籍:ポーランド
戦績:
・2017年ミラノ~サンレモ優勝
・2015年アムステル・ゴールドレース優勝
・2014年世界選ロードチャンピオン
・2014と2017年にストラーデ・ビアンケ優勝
・2014年国内タイムトライアル優勝
・2013年国内ロードレース優勝

チーム・スカイに合流した1年目は、春先に石畳クラシックを制したものの、病気や怪我に苦しめられ思うように走れない日々が続いたと言われています。

この時期は、ステージレースで途中棄権することも多く、成績を上げられない中、彼は諦めずに黙々と練習を続けました。

その後、そのトレーニングが実を結び、2017年は開幕から絶好調となります。

ミラノ~サンレモの他にも、ストラーデ・ビアンケで優勝、アムステルゴールドレースでも2位、リエージュ~バストーニュ~リエージュでも3位に入っています。

また、ポーランド選手権では個人タイムトライアルで優勝を飾りました。

彼の魅力は、粘り強さやポジショニングの上手さだけではありません。
アシストに回ったときにも、決して手を抜かず、何人分もの仕事をしてくれるのです。

2017年のツールドフランスでも集団コントロールをするクウィアトコウスキーの走りには目を見張るものがありました。

第8ステージと第9ステージで逃げと後続集団のタイム差が開かなかったのは、彼の働きが大きかったと言えるでしょう。

2017年ツールドフランスでも活躍!クウィアトコウスキーの人柄

また、彼の人柄も、魅力の一つです。

2017年のミラノ~サンレモでも、ゴール後、サガンと少し折り重なるような形で倒れこんだ後、彼が差し出した手を力強く握り返したシーンがありました。

振る舞いのスマートさ、落ち着いた穏やかな表情と、負けず嫌いな気の強い一面を合わせ持つ、底知れない選手です。

また、注目したいのが、彼の強い精神力から来る優しさです。
それが良く分かるシーンは、同じ2017年ツールドフランスの第9ステージで見ることができました。

怪我をしたラファル・マイカを発見し助けたのです。

マイカは、ラ・ビッシュ峠のダウンヒルで落車し、リタイアが危ぶまれるほどの大きな怪我を負いながらも執念の走りで完走を目指していました。

クウィアトコウスキーは、マイカと同じポーランド出身です。

年齢も、1990年生まれと1989年生まれで近く、同じチームとしてレースに出場したこともありました。

そのような関係性もあってか、クウィアトコウスキーはためらいなく、苦しんでいるマイカの先に行きペースをつくりました。

その後もクウィアトコウスキーはマイカのそばを離れず、自己犠牲的な牽引で助けていきましたが、マイカはスピードを上げられないまま、タイムアウトの危機も迫っていきました。

それでもクウィアトコウスキーは自分で決めたことを貫き、フルームたちがフィニッシュしてから36分21秒遅れ、2人仲良くフィニッシュしたのです。

疲労がたまった身体で、自分とペースが合わない選手を牽き続けるのは大変なことです。

クウィアトコウスキーの人柄、仲間へのリスペクトを感じる場面でした。

ロードレースは決して個人戦ではなく、限界ぎりぎりの中でどれだけ自分の信念を貫けるかが試されるレースです。

その崇高な精神と伝統を受け継ぎ、新たな時代をつくっていけるクウィアトコウスキーのような選手が、これからも表舞台で活躍し続けてくれることを祈ります。

2017年ミラノ~サンレモで再発見したロードレースの面白さ

2017年ミラノ~サンレモは、逃げと後続集団との差が終盤ぎりぎりまで広がらず、見ごたえのあるレースでした。

優勝したクウィアトコウスキーは、病気や怪我に苦しんできましたが、不屈の精神力で復活し、今年は華々しい活躍を見せています。

選手の実力だけでなく、その精神力や人柄をも垣間見られるのが、ロードレースの面白さですね。

見に行ったことがない方はぜひ、実際のレースを見て、空気を感じてみてください。