MTBのハンドルバーですが、完成車で購入した方は最初に付属していたものをそのまま使用しているケースも多いことでしょう。
もちろんそれが自分に合っていて、違和感なく使用できているのであればこの上ありませんが、MTBはハンドルの幅や形状を変えることで走りが劇的に変化することがあります。
そのため、可能性を広げるという意味でもハンドルのカスタムはおすすめですので、今回はハンドルバーの選び方のお話をします。
MTBのハンドルバーの長さは長めがおすすめ
MTBのハンドルバーの選び方ですが、いくつか重要な項目がありますが、まずはハンドルの幅(長さ)です。
MTBのハンドルバーは用途、目的によっておすすめの長さが変わってきますが、普段使いで街乗りに使用される機種は「普通自転車」としての規定である600mm以下になっています。
また、競技にスピードの要素が強いクロスカントリーモデルも、ハンドルの幅が狭い方が体に受ける空気抵抗が減りますので、短めのものが多くなります。
しかし、MTBは本来は未舗装路を走るものであり、車体を地面に押さえつけて安定を図る必要があります。
そのため、MTBのハンドルバーは下向きに力を込めやすいフラットな形状になっており、長い方が押さえ込みやすくなります。
少し極端な例になりますが、山下りとなるダウンヒル競技などでは700mm以上が当たり前ですし、800mmのものを使用する選手もいます。
もちろんそこまで長くなくとも、山に入ってのトレイルや下りを攻めるようなハードな乗り方をするのであれば、長いハンドルバーの方がおすすめです。
しかも、ハンドルバーは切ることで調整が利きますので、迷うようなら長いものしておくとよいかもしれません。
街乗りMTBのハンドルバーは長さ600mm前後がおすすめな理由
前項でお伝えしたMTBのハンドルバーの長さですが、具体的な数値を交えてもう少し掘り下げておきます。
道路交通法には「普通自転車」という定義があり、その中の1つの要素として幅600mm以内というものがあります。
それを超えると車道のみの通行となり、通行が許可をされている歩道が通行できなくなるのです。
なお、どの歩道においても自転車から降りて押し歩きをする場合は歩行者とみなされますので、その限りではありません。
このように定義されていることもあって、普段使いで街中を走ることを想定されている機種のハンドルバーは長さ600mm以内になっていることが多いわけです。
実際に狭いところを通り抜ける際や、自転車との間に駐輪する際はあまり長いと不便を感じるものではあるので、600mm前後を目安にするのは当然かもしれません。
また、競技においてもクロスカントリーなどで狭いスペースに突っ込んでいくようなシーンが多くなると、短いハンドルバーの方が有利になることもあります。
ただし、前項でも触れましたが競技によっては700mmを超えるようなハンドルバーが適していることもありますので、用途によっておすすめは変わってきます。
MTBのハンドルバーはライズしているものが多い!
MTBのハンドルバーは完全に水平なものよりも、中央と端の高さが違うものや、角度が付いているものがおすすめされる傾向が強くなっています。
まず高さですが「ライズ」とも呼ばれ、中央のフラットな部分から端に向かって15~30mmくらい上がっているものが多く、中には40mm以上のものもあります。
MTBは上体を起こして走るシーンが多いのですが、ハンドルバーが総じて長いため完全に水平なフラットバーですと腕は開き過ぎになりますし、肘がピーンと張ってしまい、常に腕立て伏せをしているような状態になります。
しかし、ここまでお話ししてきたように、MTBの場合はハンドルバーが長い方が適していることも多くあるため、長さを変えずに乗車姿勢を正すのがライズです。
ハンドルバーの端がライズしていれば、上体を起こしたままでも脇が締まり、肘も適度に曲がりますから楽なポジションが取れます。
また、ライズしていることにより極端に乗車姿勢を変えることなく、ハンドルの高さを変えやすいというのも大きなメリットになります。
ハンドルを上げれば後ろに重心がいくので、アップダウンの激しい場所を攻めやすくなりますし、下げれば今度は前重心になってペダリングがしやすくなりますから、舗装路やフラットな地形の場所を速く走れるようになります。
ハンドルバーのベンド角のおすすめは?
MTBのハンドルバーはライズと共に、「ベンド角」というハンドルの曲がり角度も重要な要素の1つです。
ベンド角にはハンドルバーを正面から見た時に端に向かって上がっていく角度である「アップスィープ」と、上から見た時に手前に曲がっている角度を表す「バックスィープ」があります。
共にハンドルの握りやすさやコントーロール性を考えて、メーカーが角度の組み合わせを試行錯誤しながら製造をしています。
アップスィープはあまり角度が付きすぎると腕が張りますので、おすすめとしては5~7°くらいの角度です。
対してバックスィープはグリップ(握る部分)がどれだけ手前に曲がっているかなので、角度が付いていると脇が締めやすくなり、坂の上りや高速での巡行が楽になります。
また、フラットに近いよりは手首がまっすぐになりやすく自然な握りになるため、長時間の走行でも手に痛みが出にくくなります。
バックスィープは角度に幅があるのでおすすめは難しいですが、筆者は12~15°くらいのものに握りやすさを感じます。
ハンドルバーの素材のおすすめは?
スポーツバイクの場合はフレームやホイールなどのパーツの素材が重要視されますが、MTBのハンドルバーも例外ではありません。
スポーツバイクのハンドルバーに多く使用されるのはアルミとカーボンですが、MTBのハンドルバーは長らくアルミが主流でした。
衝撃に弱く強度に問題があるとされるカーボンは、ハードな路面で落車の危険性も高いMTBのハンドルバーの素材には不向きとされてきました。
しかし、近年は技術の進化により、例えばカーボンの織り方向を単一にして強度や剛性を高めている「UDカーボン」の登場などにより、カーボンハンドルも増えてきています。
カーボンは本来しなやかで衝撃吸収性に長けていますので、地面からの強烈な振動が伝わってくるオフロード走行には適した素材なのです。
MTBはグリップでも衝撃を吸収しますので、カーボン製のハンドルバーにすることで劇的に振動や衝撃の伝わり方が変わるとまでは言えませんが、オフロード中心の走行であればカーボン製はおすすめにはなってきます。
MTBのハンドルバーは自分の用途、目的に合わせるのがおすすめ
MTBのハンドルバーの選び方を考えてきましたが、ここまでお伝えしてきた要素を自分の用途や目的に照らし合わせていくことになります。
普段使いがメインという場合は、普通自転車の定義である長さ600mm前後のものがおすすめです。
しかし、あまり短すぎるものはいざ山に入ってトレイルをする際に機能性を欠きますので、短いハンドルバーを望む場合も600mm前後を守り、ライズ量やアップスィープの角度で乗車姿勢をコントロールするのが賢明です。
また、バックスィープに注意を払い、手首がなるべくまっすぐになるようなものを選ぶと手に疲れが残りにくくなるので長距離をこなせるようになりますし、巡行が楽になるので、やはりこれも普段使いには有利でしょう。
そして、競技が視野に入っているような方であれば700mm以上のハンドルバーを選ぶことになるかと思います。
その際ですが、今はどんどん長い方にシフトしていますので、ここでもライズ量やベンド角に注意を払い、無理がありすぎる姿勢にならないようにしてください。
MTBはハンドルバーで走りが変わる!
MTBのハンドルバーは乗車姿勢や車体のコントロールに大きな影響を与えるため、カスタムの優先順位が高いパーツです。
今回初めて目にするような要素もあったかと思いますが、総合して自分に合うものを探すということなので、単一で考える必要はありません。
そして、多くの意見を聞いたり、新しい発見もあるはずですから、MTBの専門店に足を運ぶのはおすすめです。