ロードバイクに乗り慣れて来ると、「自分に合ったポジション」探しが始まります。
その際に、決まって話題に挙がるのはクランクのサイズです。
クランクのサイズについては、「身長の10分の1」や「長いサイズが有利」といったさまざまな説や憶測があり、何を参考にすればよいか迷ってしまいます。
そこでこの記事ではシマノのクランクを例に、クランクのサイズの選び方について解説します。
クランクのサイズは「自分がもっとも使いやすいサイズ」を選ぶ!
ロードバイクを購入された方は、ほとんどの場合ショップを通じて購入したことかと思います。
その際、ロードバイク選びにはフレームやステムのサイズのほかにクランクのサイズも重要であると説明を受けた方もいるでしょう。
シマノのクランクの例を挙げると、クランクのサイズは165mm、170mm、175mmの3種類を基本に、167.5mm、172.5mmなどがラインナップされています。
サイズが複数ラインナップされていれば当然、「自分はどのサイズのクランクを使うべきか」といった疑問が生じます。
実は、この疑問にはすでに回答が用意されています。
それは、「自分がもっとも使いやすいサイズ」を使うといった答えです。
答えになっていないといった反論も当然ですが、それもそのはずです。
結局、いまだに「適正クランクサイズ判定関数」などは発明されていないからです。
つまり、上級者でもクランクのサイズは試行錯誤を繰り返しています。
しかし、これでは困ってしまいます。
そこで、この記事ではロードバイクのクランクのサイズについての「説」をいくつかご紹介します。
それを参考に、または失敗例として適正サイズのクランクを見つけ出しましょう。
適正なクランクのサイズは「身長の10分の1」?
最初に、クランクのサイズは「身長の10分の1」といった古くからある説をご紹介します。
この説は、クランクのサイズは単純に身長を10分の1したサイズであるとしています。
例としてシマノのクランクの場合、身長170cmの方であれば、170mmのクランクを使えばよいということです。
この説によれば単純明快で分かりやすい答えが得られます。
しかし、その説得力に欠ける面があります。
そもそも、身長の「10分の1」に根拠があるわけではありません。
また、クランクのサイズに上半身の長さは関与していないにも関わらず、この説では身長を基準としています。
さらに、人は身長に対して脚が長い人もいれば短い人もいます。
この説では、その個人差を無視しています。
これでは、無理があると思われるのも当然です。
しかし、妥当といえる点もあります。
それは、身長の高さと比例して長いサイズのクランクになる点です。
なぜなら人体は身長の高さに比例して、身長のうち脚の長さの占める割合が増えるためです。
これは、理にかなっているといえます。
シマノのクランクのラインナップでは175mmが最高なのか?
クランクのサイズにおいて、クランクが長ければその分パワーが出るといった説があります。
例えば、シマノのクランクのラインナップでは、172.5mmや175mmが長いサイズに当てはまります。
この説では、これらの長いサイズに近いクランクを使えば「てこの原理」によってパワーが出るとしています。
逆に、165mmなどの短いクランクは長いクランクに比べて、「てこの原理」から不利であると考えています。
つまり、この説は実現できるかぎり長いクランクを使うといった立場をとっています。
しかし、少し調べてもらえばわかるように、多くのライダーはこの説に否定的です。
その否定意見を簡単にまとめると、クランク1周あたりのトータルパワーの差です。
クランクのサイズが長めの場合、ペダルにもっとも力がかけやすい位置では、大きなパワーが出ます。
しかし、ペダルに力がかけにくい位置にある場合、クランクが長い分さらに力がかけにくくなります。
その結果、ピークパワーで勝っていてもそれ以外ではマイナスとなり、トータルではパワーが劣ります。
シマノのクランクのラインナップでは160mmが正解?
クランクの長さは、長いサイズでは結局マイナスになるとされています。
では、短いサイズのクランクを使用すべきでしょうか。
シマノのクランクのラインナップでは、160mm、165mm、167.5mmが短いクランクに当たります。
短いクランクの利点は先の章の例以外にも、いくつか存在します。
クランクが短ければ回しやすさは向上するため、高いケイデンスを維持しやすくなります。
また、脚に無理な力がかからないため脚のトラブルが軽減されます。
さらに、短いクランクを使用するとサドル高を上げることになります。
その結果、ハンドルとサドルの落差が大きくなり深い前傾姿勢の実現が可能です。
これだけのメリットが揃っているなら、クランクは短ければそれで万事解決となりそうです。
しかし、現実はそうではありません。
現にシマノのクランクのラインナップには、170mm以上の長いサイズも用意されています。
それは、短いサイズのクランクが、かえって回りすぎてしまうためであると思われます。
例えば、幼児用の自転車に成人が乗車するとします。
すると、クランクが短く脚が回りすぎてしまうことが容易に想像できます。
このため、短すぎるクランクも問題となります。
クランクのサイズはライド志向によっても変わる!
先ほど、短めのクランクによって深い前傾姿勢が実現できると述べました。
このことから分かるように、クランクのサイズはポジションに大きく関わってきます。
短いサイズのクランクの場合は先に説明したように、深い前傾姿勢が可能となります。
では、長いサイズのクランクの場合はどうでしょうか。
その場合、クランクの長さに伴ってサドル高が低くなります。
すると、ハンドルとサドルの落差が減少しアップライトな姿勢が実現できます。
つまりロングライドなどにおいて楽な姿勢を求めるならば、クランクのサイズを長めにすることも有効ということです。
逆にレース志向のポジションを求めるなら、クランクのサイズを短くすることも有効になってくるといえます。
このことは、自分に適正なクランクを選ぶためのヒントになります。
なぜなら、「ロングライド志向ならクランクを長く」、「レース志向ならクランクを短く」、といった判断が可能になるためです。
この判断は、例えばシマノのクランクの165mmか167.5mmかで迷っている場合に有効な判断材料になります。
しかし、ある程度クランクのサイズが定まっている場合のみにしか通用しません。
つまり、全くの初めての状態からクランクのサイズを決めるには、「身長の10分の1」や自身の感覚に頼るほかないのが現状です。
クランクのサイズに迷ったらシマノのバイクフィッテングを利用しよう!
結局、クランクのサイズは自分の感覚のみを頼りに、「自分のもっとも使いやすいサイズ」を見つけるしかないのでしょうか。
しかし、これはあくまで自分ひとりでクランクのサイズを探る場合です。
現実的でなおかつ推奨できる方法は、有料のフィッティングシステムの利用です。
フィッティングシステムとは、所定のショップで専用の測定機器を用いて、その乗り方に最適なポジションを計算するシステムです。
具体的には、シマノのバイクフィッティングがそれに当たります。
フィッテングでは、身体の採寸から機械的に最適値を出すだけではありません。
測定機器はエアロバイクのような構造となっています。
そこから想像できるように、実際にペダルを漕いで各種数値の効率のよいポジションを見つけます。
その際、パワーやペダリングのベクトルも測定が可能です。
つまり、バイクフィッティングを利用すれば非常に客観的なデータが得られます。
これにより、自分の感覚のみではなく客観的なデータも用ることが可能となり、短期間に「自分のもっとも使いやすいサイズ」のクランクを見つけ出せるでしょう。
クランクのサイズ選びには感覚とデータの両面からアプローチをしよう!
クランクの理想のサイズについては、「適正クランクサイズ判定関数」などは存在しないため、極端にいえば自分の感覚のみが頼りです。
しかし、フィッティングシステムの利用によって得られる客観的なデーダを合わせて判断材料とすることで、より短期間に適切なクランクのサイズを見つけ出せます。
クランクのサイズに無頓着であった方も、ぜひクランクのサイズの再考をおすすめします。