ロードバイクを駆動と制動の機構に関わるパーツの総称を、「コンポーネント」といいます。
この概念を自転車業界に持ち込んだのが、日本が世界に誇るパーツメーカー「シマノ」であり、現在も世界三大メーカーの一つとしてトップシェアを誇ります。
今回はそんなシマノのロードバイク用コンポーネントの、グレード間の差についてのお話になります。
シマノはコンポーネントのパイオニア!
ロードバイクを趣味としている方であれば、「シマノ」の名を一度は聞いたことがあろうかと思います。
そのシマノを世界的な自転車パーツメーカーに押し上げたと言っても過言ではないのが、ロードバイク用のコンポーネントです。
冒頭でも触れましたが、ロードバイクにおけるコンポーネントとは、コントロールレバーや変速機、ギアやチェーンなど駆動に関わるパーツとブレーキの総称です。
以前はこのパーツ群を複数のメーカーが製造、販売を行っており、フレームメーカーはこれを個別に仕入れて完成車に組み付けていました。
コンポーネントには連動性があり、正常に動かせるかどうかの互換性がとても重要なので、メーカーは一つ一つのパーツの互換性を自ら実験しながら導入していました。
この手間暇の大変さは容易に想像できますが、そこに目を付けたのがシマノであり、互換性を保証した形で複数のパーツをまとめて製造し、セット販売を行いました。
これがフレームメーカーのみならず、一般ユーザーにも受け入れられ大ヒットとなり、シマノが今の地位を築くきっかけになりました。
また、シマノはコンポーネントにグレードを設け、プロから初心者まで幅広い層が使用できる環境も作り上げ、世界のトップシェアへと登りつめたのです。
シマノコンポーネントのグレード差が最も顕著なのは価格!
シマノのロードバイク用コンポーネントには、以下のグレードがあります。
◆DURA-ACE(デュラエース):(セット一式)約22万円
◆ULTEGRA(アルテグラ):11万円
◆105(イチマルゴ):7万円
◆Tiagra(ティアグラ):5.5万円
◆SORA(ソラ):5万円
◆Claris(クラリス):4万円
価格がグレードを一番端的に表していますので目安となりますが、その他にもグレード間の差を決定付けるものがありますので、今回はそれに準じてお話ししていきます。
まずは価格ですが、上記のようにハイエンドグレードのデュラエースだけが飛び抜けて高額になっているのが分かります。
これは後ほどお話ししていく中でその理由が分かると思いますが、トータル60万円以上の完成車から導入されるというイメージですから、とにかく価格面では一線を画すコンポーネントということになります。
アルテグラはその一線を画すデュラエースを世間に広めるという役目がありますので、限りなく近い性能を有しながら、様々な工夫で半値以下に抑えられています。
105はハイレベルでまとめながら価格を抑えたコスパ重視モデルで、最初のグレードアップで目指したいグレードです。
そして、ティアグラ以下のグレードは価格が示す通りエントリーグレードで、まず最初にロードバイクに親しむために必要十分な性能というイメージです。
シマノコンポーネントのグレード差はフロント変速が分かりやすい!
続いてお伝えするシマノのロードバイク用コンポーネントのグレード間の違いは、性能面です。
価格は目に見えて分かりますが、性能は乗って走らせてみてのことなので、個人の感覚にもよりますが、ハッキリ分かるのはフロント変速とブレーキの効き具合です。
まずフロント変速ですが、特にインナーからアウターにギアを上げる際にはチェーンを持ち上げますから、人が地面に置いてある荷物を持ち上げる際の「どっこいしょ」のような感じになります。
それをデュラエースとアルテグラは音もなくスゥーと行いますが、105は力が入り持ち上げている感じが伝わってきますし、「カチャ」くらいの音もします。
そして、下位グレードになりますと正にどっこいしょのイメージで、かなり変速に力が入っていることが分かり、音も「ガチャ」と濁ってきます。
ただし、音がしたり、力がいるからといって変速できない訳ではないですし、まして壊れやすいということはなく、あくまでも快適に行えるかどうかの差です。
どんな状況でも安心できるブレーキの制動力は上位グレードの方が上
前項に引き続きシマノコンポーネントの性能の差ですが、次はブレーキです。
上位グレードにはディスクブレーキモデルもありますが、今回は全グレードに共通するキャリパーブレーキのお話になります。
キャリパーブレーキは完全に止まることが少ないロードレース用のブレーキとして開発されていることから、スポーツバイクのブレーキとしては制動力が弱めです。
それだけに制動力を強める仕様にしている上位グレードと、それほどのことをしていない下位グレードとでは差がハッキリしてしまうということになります。
これも感覚的な話になりますが、デュラエースとアルテグラは狙ったところでピタッと止まり、下り坂などでフルブレーキでもしようものなら、制動力が強すぎてロックする危険性もあるほどです。
105はそこまでの強さはありませんが、濡れた路面や泥道などでも問題のない安心できるレベルです。
それに対して下位グレードは、乾いた状態の舗装された路面なら不安はありませんが、坂や路面状態が悪い場所では不安に感じるレベルかもしれません。
それを裏付けることとして、ロードバイク乗りの間では「キャリパーブレーキは105以上」というのがもはや定説にもなっています。
シマノコンポーネントはリアの変速段数でも差別化を図っている
次にシマノのコンポーネントのグレード間の差は、リアの変速段数です。
先ほどお伝えしたグレードの中で、デュラエース、アルテグラ、105の上位3グレードはリア11速、以下ティアグラが10速、ソラが9速、クラリスが8速になります。
これは歴史の中で自然と付いた差で、ソラなどはリア9速になってから2018年で11年目になりますので、あえて昇段させずにグレード間の差として差別化しているということです。
そして、この差がどの部分で大きいかといえば、使えるギア比の数ということになります。
ロードバイクのフロントギアは2速が基本ですので、リア8速(2×8=16段)と11速(2×11=22段)では最大6段のギア比の差があります。
8速でも11速でも最高スピードはそれほど変わりませんが、多くギアがあれば1段のギアチェンジでのスピードの変化が少なくなります。
そうなるとクランクの回転数を維持しやすくなり走りが効率的になりますので、疲れがたまりにくくなり、走行距離を伸ばすことができます。
また、一気に重く軽くなったりしませんので、変速のスムーズさも違ってきます。
最初からコンポーネントのグレードにこだわるのはどうか?
ここまで、シマノコンポーネントのグレード間の差についてお伝えしてきましたが、完成車にはグレードがセットになって導入されていることが多いです。
デュラエースが60万円以上の機種に導入されるというお話をしましたが、最初からコンポーネントありきで完成車を選ぶのはあまりおすすめではありません。
コンポーネント重視も一つの考え方なのでもちろん否定はしませんが、コンポーネントはあとからいくらでも交換がききますので、自分の用途や乗り方が固まってからそれに合うグレードを選んでいく方が賢明です。
ここまでお話ししてきたように、グレードが下位だからといって、変速できないわけでもないですし、止まれないわけでもありません。
グレードが上がるに連れて向上するのは快適性や効率のよさであり、できること=機能面にはそれほどの差がありません。
ましてシマノであれば、メンテナンスさえ怠らなければ、どのグレードのコンポーネントでも必要十分な働きはしてくれますので、最初から上位グレードありきと考える必要はないかと思います。
自分の用途や乗り方が見えてから選択しても遅くはない!
今回はシマノのロードバイク用コンポーネントについて、グレード間の差についてお話ししました。
コンポーネントはスピードに関わる要素が少ないので、最初は効果を実感しにくいものです。
そのため、まずは安全面に支障のない必要十分な性能であれば、そこまでグレードにこだわらなくてもよいかと思います。
そして、慣れてきて自分の走り方や将来の展望が見えたところで、次のステップを考えていきましょう。