シマノのクランクのクランクキャップは取り外しに専用工具が必要です。
しかし、あまり重要視されない安価な工具であるため、いざクランクを外そうと思い立ったときに、その専用工具が手元にないといったケースも多いかと思われます。
そこで、この記事ではクランクキャップを回す専用工具の代わりとなるもの探し、実際にクランクキャップを回せるのかを検証します。
シマノのクランクに付属する「クランクキャップ」ってそもそも何?
この記事では、シマノのクランクに付属する「クランクキャップ」を、専用工具なしで回す方法を検証しその結果をまとめました。
この章では、そもそも「クランクキャップ」とは何かについてお話しします。
シマノのクランクの場合、左クランクの根元に黒いキャップが取り付けられており、そのキャップは「クランクキャップ」と呼ばれています。
このクランクキャップは、パイプ状のクランクシャフトの端を名前の通り、蓋の役割をしています。
しかし、ただの蓋としての役割しかないわけではありません。
クランクキャップは、クランクセットをフレームに取り付ける際に、左クランクを定位置まで押し込み、クランクのガタを取るという役割を担っています。
そのことは、クランクをステムに、クランクキャップをトップキャップに見立てれば分かりやすいかと思われます。
ヘッドパーツの調整時には、ステムを固定する前にトップキャップを締め込み、上部から押し付ける力によってヘッドパーツのガタを取り、その後ステムを固定します。
つまり、クランクの固定時においても、クランクキャップは先述のトップキャップと同様の働きを果たしているといえます。
シマノのクランクキャップを回す専用工具の果たす役目は?
シマノのクランクキャップを回す専用工具の代用品を検証する前に、通常の方法によるクランクの取り付け方についてこの章で簡単に触れておきます。
それは、代用品を検討する前に、本来のクランクキャップを取り外す専用工具の役割を理解する必要があるためです。
シマノのクランクは、右クランク(チェーンホイールを取り付けるクランク)にクランクシャフトが取り付けられています。
まずは、そのクランクシャフトをBBに挿入し、右クランクをフレームにセットします。
続いて反対側に移り、左クランクを取り付けます。
クランクシャフトの左端と左クランクのクランプ部には刻みがあり、それが噛み合うことで強い固定力を発揮します。
その刻みの一部の間隔が広くなっている部分があり、幅広の部分をクランクシャフトと左クランクで合わせた状態で左クランクをセットします。
それにより、右クランクに対して左クランクを正しい角度でセットできます。
左クランクをクランクシャフトにセットしたら、クランクキャップを左クランクにセットします。
そして、クランクキャップを専用工具「TL-FC16」を使って時計回りに回し、クランクのガタがなくなるまで締め込みます。
そして、最後に左クランクのクランプ部のボルトを12から14N・mで締め、左クランクを完全に固定します。
シマノのクランクキャップを回す専用工具の代用品となりうる3つのものとは?
今回の検証は、シマノの左クランクをクランクシャフトに軽くセットした状態から、代用品でクランクキャップを回し、左クランクを完全にセットするまでを評価します。
また、代用品の選定基準は、ロードバイクを趣味とする方の家庭に普通にあるものとしています。
さっそくですが、今回検証した結果、シマノのクランクキャップを回す専用工具の代わりとなったものを箇条書きで記します。
・アーレンキー
・はさみ
・リアディレイラープーリー
以上3つのものは、シマノのクランクキャップを確実に回すことが可能でした。
これら「アーレンキー」「はさみ」「リアディレイラープーリー」に関しては、次章から詳しく解説します。
その他、クランクキャップを回せたものとして、割り箸が挙げられます。
しかし、割り箸でクランクキャップを回すには3膳必要であったり、クランクキャップを回すと割り箸がへこむため、回し難くなるなど問題が多くありました。
逆に、クランクキャップを回せなかったものとしては硬貨が挙げられます。
それはクランクキャップに対して硬貨が大きすぎたためです。
確実かつ安全な専用工具の代用品は「アーレンキー」!
シマノのクランクキャップを回す専用工具の代わりとして、一番有効であったものが「アーレンキー」です。
アーレンキーといってもさまざまなサイズがあるため、今回はロードバイクのメンテナンスにおいて一般的なサイズである4mmから6mmを使用し、検証をおこないました。
アーレンキー1本では当然クランクキャップは回りません。
クランクキャップを回すには、アーレンキーを5本束ねる必要がありました。
アーレンキーを束ねてクランクキャップを回す場合には、全てのアーレンキーをクランクキャップの奥まで確実に押し込むことが必要でした。
アーレンキーを通常使用する側でクランクキャップを回そうとした場合、アーレンキーの柄の部分がそろわないためアーレンキーの頭がまとまらず、結局クランクキャップを回すことは不可能でした。
そのため、クランクキャップをアーレンキーで回すには、通常使用する反対側を用いる必要がありました。
5本のアーレンキーには、6mmを1本・4mmを3本・5mmを1本使用しました。
また、他のパターンのアーレンキーの組み合わせとして、5mmを2本・4mmを3本の場合についてもクランクキャップを回せました。
さらに、こちら(5mmを2本・4mmを3本)のアーレンキーの組み合わせの方が回しやすさでは優れていました。
入手しやすさでは一番の「はさみ」!しかし作業性に疑問が残る結果に
「はさみ」も、シマノのクランクキャップを回す専用工具の代わりとなりました。
今回の検証には、刃にカバーなどが付いていない、一般的な事務用のはさみで100円均一で購入したものを使用しました。
そのはさみの大きさは、全長155mm・刃渡り75mm・刃の側面の外から外の寸法は、刃を閉じた状態で3.6mmでした。
はさみを用いてクランクキャップを回した際、開いたはさみの刃先は外から外の寸法で13.7mmでした。
クランクキャップを回すには、はさみの刃先が開いた状態を維持する必要があります。
なおかつ、刃先がクランクキャップの内側に押し付けられていなければならず、それには両手を使ってはさみの柄を保持せざるを得ませんでした。
そのため、作業性を評価するのであれば、「アーレンキー」「リアディレイラープーリー」に対してはさみは劣ります。
作業性の改善には、はさみの柄の部分に木片などを噛ませるとよいでしょう。
また、刃物であるため、作業にはそれ相応の危険が伴うこともマイナス要因です。
指などを刃にはさまないように、作業には細心の注意が必要です。
「リアディレイラープーリー」でクランクキャップは回る!しかし頻繁な使用は避けるべき
シマノのクランクキャップを回す専用工具の代わりとして、「リアディレイラープーリー」も使用可能でした。
リアディレイラープーリーの歯2つがクランクキャップ内側の刻みにうまく引っかかったため、クランクキャップを回すことが可能でした。
検証で使用したリアディレイラープーリーは、シマノの10段変速用コンポーネントのリアディレイラープーリーです。
リアディレイラープーリーの歯数は11tで、歯の厚みは1.9mmです。
今回検証したものでは、リアディレイラープーリーが一番作業性に優れると感じられました。
リアディレイラープーリーを使用すれば、スピードセンサーの電池蓋を硬貨で開けるようにクランクキャップを回せるため、簡単に作業が可能でした。
しかし、クランクキャップを回した後、クランクキャップに若干ダメージが発生していました。
また、リアディレイラープーリーの歯も角が少し丸まっていました。
このことを考えると、クランクキャップを回すためにリアディレイラープーリーを頻繁に使用するのは避けるべきでしょう。
結論「アーレンキー」が専用工具の代用品となりうる
再び検証結果を簡単にまとめます。
今回の検証では、専用工具の代替品として一番実用的なのは「アーレンキー」でした。
また、作業性では「リアディレイラープーリー」が優れており、ものの手に入りやすさにおいては「はさみ」が一番である、といった結論に達しました。
しかし、専用工具の価格は数百円程度であるため持っていても損はしません。
頻繁にクランクキャップを取り外す方は、専用工具の購入をおすすめします。