近年ロードバイクは用途が多様化しユーザー層も広がっているので、脚力に合わせたギアを選択しやすくなっています。
シマノの上位グレードコンポ「アルテグラ」にも、重いギアから軽いギアまで多彩に揃っています。
今回は、そんなアルテグラのギアをご紹介します。
ロードバイクのギアとは?
自転車は、クランクを回すことで前後のギアの歯車に掛かっているチェーンが動き、その力が後輪に伝わって回転するという仕組みです。
その前後のギアに掛かっているチェーンを掛け替えると車輪に伝わる力が変化しますので、スピードに強弱がつきます。
ギアにチェーンを掛け替える動作のことを「変速(ギアチェンジ)」といい、ロードバイクは前後に複数のギアを持ちます。
前側のフロントギアはクランクに取り付けられている「チェーンリング」、後ろ側のリアギアは後輪に取り付けられている「カセットスプロケット」になります。
ロードバイクはフロントが2~3速、リアが8速から11速が一般的で、リアはイタリアのカンパニョーロが12速のコンポを出しており、今後シマノが追随するかどうかが注目されています。
アルテグラはフロント2速(チェーンリングが2枚)、リア11速(スプロケットが11枚)のコンポになります。
フロント、リアともにバリエーションが多く、幅広いユーザーに対応しますが、2017年のモデルチェンジで特に軽めのギアが充実しました。
シマノ・アルテグラのフロントギア
前項でも触れましたが、ギアは動力を伝える役目であり、動力の強弱は歯車の歯数の組み合わせで決まります。
シマノ・アルテグラのようにフロント2速の場合、フロントギアであるチェーンリングは、外側に歯数の多い大きな歯車(アウター)、内側に歯数の少ない小さな歯車がきます。
チェーンリングは歯数の多いアウターの方が、車輪により強い力を伝えることができますので、同じ回転数を維持できればスピードが上がります。
その分クランクを回すのに力がいり、ペダルを漕ぐ脚が重くなりますので、「重いギア」と呼ばれます。
インナーはその逆で、歯数が少ない分伝達される力が弱くなり、ペダルを漕ぐ感覚が軽くなりますので、「軽いギア」になります。
チェーンリングはアウター、インナーの歯数の組み合わせによって名称があり、(アウター×インナー)50×34Tは「コンパクトクランク」、52×36Tは「セミコンパクトクランク」、53×39Tは「ノーマルクランク」と呼ばれています。
以前は重め重視のノーマルクランクが主流でしたが、軽いギアへの要望が増えコンパクトクランクが登場し、現在は完成車にコンパクトも目立ちます。
その中間的な存在がセミコンパクトであり、バランスを重視したいユーザーに好評だと聞いています。
なお、アルテグラには上記3つの歯数構成に加え、46×36Tという超コンパクトタイプも用意されてます。
シマノ・アルテグラのリアギア
続いてロードバイクのリアギアであるスプロケットですが、フロントギアとは真逆になり、歯数の少ない小さな方が重いギアで、歯数の多い大きな歯車が軽いギアになります。
シマノでは最少歯数が11~14T、最大が25~34Tという歯数構成になっており、アルテグラには以下の構成のカセットスプロケット(スプロケットの集まり)が用意されています。
《11-25T・11-28T・11-30T・11-32T・12-25T・14-28T・11-34T》
例えば11-28Tは、[11・12・13・14・15・17・19・21・23・25・28]という歯数の構成になり、シマノでは全てのカセットスプロケットの構成が、カタログに掲載されています。
フロントもそうですが、なぜここまで細かく歯数を記載しているかと言いますと、前後ギアの歯数の組み合わせによって車輪の回転数が決まるからです。
これを「ギア比」といい、求める式は「フロントギアの歯数÷リアギアの歯数」となります。
例えば、フロントをコンパクトクランクのアウター50Tに入れ、リアを15Tに入れたとしますと、ギア比は『50÷15=3.33』となります。
これは、クランクを1回転させた時に車輪が3.33回転するという意味です。
そのため、フロントをキープしたままリアを16、17と軽くしていけばギア比が徐々に下がりますので、スピードが落ちますし、反対に14、13と重くすればスピードは上がります。
その細かいギア比を出すために、ギアは前後ともに歯数が詳細に公表されています。
シマノ・アルテグラにおけるフロントギアの選び方
それではここから、実際に「シマノ・アルテグラのギアをどう選んでいくか」を考えていきます。
まずフロントからですが、アルテグラは2速のみですから、重い方に振るか軽い方に振るかの二択になります。
自転車でペダルを漕ぐのに最も大きな力が掛かるのは、止まっている状態から動き出す時や、重力に逆らって進むことになる坂の上りです。
ただでさえ大きな力が掛かるシーンで、さらに重いギアを回すのは厳しいので、軽いギアが有利になります。
そのため、競技でも趣味でも登坂となるヒルクライム、また、信号待ちなどでストップ&ゴーの多い街乗りでは、軽いギアが持てるコンパクトクランクが適しています。
一方、舗装された平坦な道を、ある程度のスピ―ドを維持しながら走る場合は、ペダルに体重を乗せて惰性で重めのクランクを回した方が効率がよいので、身体への負担も少なくなります。
そのため、「単純にスピードが出る」という理由もありますが、平坦路メインの乗り方であればノーマルクランクの方が向いています。
シマノ・アルテグラにおけるリアギアの選び方
続いてリアギアの選び方ですが、シマノ・アルテグラには最軽ギアが25Tから34Tまでありますので、「どこまで軽いギアを持つか」で判断をします。
例えば、フロントをコンパクトクランクのインナー34Tに入れたとするとギア比は25Tで「1.36」、34Tで「1」になります。
フロント同様ヒルクライム競技や坂を頻繁に上るということであれば、軽いギアに越したことはありませんので、より小さなギア比になる34Tの方が適していることになります。
しかし、34Tという軽いギアを装備すると、他のギアにしわ寄せがきますので、乗り方によっては苦労してしまうことにもなりかねません。
以下は11-25Tと11-34Tの歯数構成になります。
11-25T・[11・12・13・14・15・16・17・19・21・23・25]
11-34T・[11・13・15・17・19・21・23・25・27・30・34]
11-25Tの方は、11~17Tまでが1Tおき、軽い方も17~25Tまで2Tおきなので、1段ギアチェンジした場合のスピード差が小さく、細かいコントロールが可能です。
しかし、その分軽い方のギアは少ないことになり、全体的にギア比が高めになります。
一方、11-34Tはほぼ歯数間が2Tおきで、軽い方は3T、4Tおきになっています。
25Tの上にまだ3段軽いギアがあるというのは非常に心強いですが、全体的にスピードの変化が大きいので、ギアチェンジの際にクランクの回転数を維持するのが難しくなり、やや効率の悪い走りになってしまいます。
したがって、11速という限られた範囲の中でギアのバリエーションを増やすとなると、効率や快適性を少し犠牲にすることになることを考慮してください。
ギアに合わせたディレイラーを選ぶ
ロードバイクのギアは単独で運用できるものではなく、「ディレイラー」あってこそ変速機構が成り立つものです。
ディレイラーには可動できる範囲である「キャパシティ」があり、キャパシティはギアの歯数の差で決まります。
まずフロントはアウターとインナーの歯数差になりますが、シマノ・アルテグラのフロントディレイラ―のキャパシティは「16」になります。
そのため、50×34Tや53×39Tなど、最初からクランクセットに採用されている歯数構成であれば問題はありません。
しかし、チェーンリングはインナー・アウター共に交換が可能です。
つまり上記の組み合わせ以外でも運用できますので、その際は、歯数の差が16を超えないような組み合わせにしてください。
次にリアディレイラーですが、ギアの最大歯数によって対応するディレイラーが違いますので注意が必要です。
アルテグラのリアディレイラーは、最大歯数が25~30Tまでのスプロケットに対応できるのがSS(ショートケージ)、28T~34Tまで対応するのがGS(ロングケージ)になります。
また、リアディレイラーには、[フロントギアの最大歯数差+リアギアの最大歯数]で算出される「トータルキャパシティ」も設定されています。
アルテグラのトータルキャパシティは、SSが35T、GSが39Tとなっています。
フロントの最大歯数差は16(50×34T・52×36T)ですので、トータルが35Tを超えない、11-25T、11-28T、11-30T、12-25T、14-28Tのスプロケットであれば、SSのディレイラーで対応できます。
一方、11-32T、11-34Tはトータルが35Tを超えますので、GSということになります。
仮にフロントがノーマルクランクの53×39T(歯数差14)だとすると、11-32T(歯数差21)との組み合わせはトータルキャパシティではSSの範囲内ですが、SSが32Tに対応していませんので、GSを使うことになります。
こういった判断もできるので、リアディレイラーは最大歯数とトータルキャパシティ両面で確認するのが賢明です。
アルテグラなら様々な用途に対応できる!
今回はシマノのアルテグラを参考に、ギアの選び方についてお話ししました。
フロント、リアともにギア構成のバリエーションが多く、用途や乗り方に合わせた選択がしやすいと感じます。
また、組み合わせを考える際は、ディレイラーの仕様と合わせて確認することを覚えておいてください。