シマノなどの電動変速システムが浸透してきましたが、今も大半のバイクはワイヤーシフターによる変速機が主流です。
ギアワイヤー(シフトワイヤー)の劣化はシフトミスや破断を誘発し、時にはシフター自体も傷め、交換を余儀なくされることもあります。
ギアワイヤーの交換をマスターすることで構造を理解し、日常のメンテナンスでも異常に気づくことができるので、ぜひこの機会にトライしてみてください。
シマノのギアワイヤーの交換時期
シマノや他社のギアワイヤーは、明確な交換時期というものがありません。
破断すると交換をしなくてはなりませんが、そうなることは稀で、だいたいの場合は目視での感覚やシフトチェンジの手応えで交換時期を判断しなくてはなりません。
ギアワイヤーは、基本的に「インナーワイヤー」と呼ばれるワイヤーと、「アウターケーシング」と呼ばれるガイドパイプがあります。
シマノは、これらをまとめたワイヤーセットとしても販売しています。
このギアワイヤーの交換の目安としては、インナーワイヤーのささくれ、型がつくことによるシフトチェンジの不具合などが挙げられます。
また、アウターケーシングに関しては、表面や端末の破損、管内のグリス切れによるシフトチェンジの不具合などを感じたら交換時期と考えていいでしょう。
インナーとアウターは別でも販売され、片方だけの交換も可能です。
セットで交換してしまうのが確実ですが、車体や使い方によって傷み具合の偏りもあるので、どちらの交換が必要か、または両方の交換が必要かを判断してください。
シマノのギアワイヤーの種類
シマノからは、ギアワイヤーとしてシフトケーブルセット・インナーワイヤー・アウターケーシングの3カテゴリーと、その他ギアワイヤー小物が単品として販売されています。
シフトケーブルセットには、インナーワイヤー・アウターケーシングの他に、キャップ類が付属されています。
さらにアウターケーシングはロードバイクに最適なサイズにカットしてあり、セットでギアワイヤー周りすべてを交換することができます。
また、インナーワイヤーにはいくつかグレードがあり、最上位にはポリマーコーティングが施されています。
次いでオプティスリックという薄く耐久性に優れたコーティングのされたものと、コーティングのないステンレスケーブルがあります。
コーティングケーブルは、ステンレスケーブルに比べると、耐久性に優れています。
しかし、永久的なものではありませんので、メンテナンスは同等に必要です。
そして、アウターケーシングは単品で用意する場合、1mで販売されているのでフレームに合わせたカットが必要になります。
アウターケーシングの中には、あらかじめシリコン系グリスが封入されており、ワイヤーとの摩擦を軽減する他、各種カラーも用意されているのでフレームに合わせたコーディネートも可能です。
セットにはキャップ類が付属されていますが、消耗や破損、紛失の多いパーツなので単品でも用意しておくといいでしょう。
他に、ワイヤーの露出部分を保護する「テフロンライナー」、フレームとワイヤーの干渉を防ぐ「Oリング」、各種アジャスターなども単品販売されています。
ギアワイヤー交換に必要な工具
シマノのギアワイヤー交換には、普段のメンテナンス工具の他に専用の工具が必要になります。
しかし、用意しておけば使い続けることができ、ギアワイヤーの他にブレーキワイヤー交換にも使用できるので、自分でメンテナンスをしていきたい方はぜひ揃えておいてください。
<ギアワイヤー交換に最低限必要な工具>
・ワイヤーカッター
・六角レンチ
・ドライバー
・ラジオペンチ
・ワイヤーグリス
・千枚通しなど
ワイヤーカッターは名前の通り、ギアワイヤーを切断する他にアウターケーブルの切断にも使用します。
六角レンチはワイヤーの取り外しと調整に、ドライバー・ラジオペンチは素手では指先を痛めてしまう可能性のある個所で使用してください。
そして、ワイヤーグリスはシマノや他社からもワイヤー専用グリスが販売されており、インナーにつけることでアウターとの摩擦を減らし、スムーズなシフトチェンジを促すためのものです。
千枚通しは、ワイヤーカッターで切断し潰れてしまったアウターケーブルの形状を元に戻すために使用しますが、先端の尖った形状のものがあれば代用することができます。
古くなったギアワイヤーの外し方
シマノのギアワイヤー交換には、インナーワイヤーのみの交換、アウターケーシングと合わせての交換がありますが、ここではアウターケーシングと合わせての交換としてお伝えします。
まず、ワイヤーのテンションをとるためにギアをインナー・トップに入れてください。
次にインナーキャップを取り外しますが、インナーキャップはワイヤーに被せ潰して固定されているので、ラジオペンチで広げて抜き取ります。
そして、六角レンチで前後ディレーラーのワイヤーを留めているボルトを緩めます。
この状態でシフトレバーのワイヤー挿入口を露出させ、ワイヤーを押し上げると挿入口からワイヤーの先端部分が出てきます。
インナー・アウターの劣化や、取り回しで型がついてしまったときはスムーズに出てこない場合がありますが、そういった場合はワイヤーの露出している部分で切断してしまっても大丈夫です。
切断する場合は、切断時にワイヤーが跳ねないようにワイヤーにかかっているテンションを確認してください。
インナーワイヤーを抜くか各所で切断し、アウターケーシングをフレームから取り外します。
新しいギアワイヤーの取り付け
シマノのギアワイヤーセットを購入した場合は、ほぼ適正なサイズにカットしてありますので、長さを見てフレームに取り付けます。
カットが必要な場合は、アウターケーシングをワイヤーカッターで切断しますが、切断面を潰してしまうので千枚通しでワイヤーの通る穴の形状を復旧させてください。
フレームに取り付けるときは、アウターケーシングの末端にアウターキャップを取り付けます。
アウターキャップを取り付けるときは、必ず奥まで差し込まれているか確認してください。
アウターケーシングの取り付けができたら、インナーワイヤーを通す前にワイヤー表面にワイヤーグリスを塗り込みます。
指先に適量を取り、ワイヤーの網目に詰めるように塗り込んでいきます。
インナーワイヤーの表面処理ができたら、シフター側からワイヤーを通しますが、このときは適正なワイヤールートを通っているか注意しながら行うようにしましょう。
Oリングやテフロンライナーを取り付ける場合は、ワイヤーを通しながら行ってください。
また、ワイヤーは曲がりがきついと抵抗が増えますので、アウターケーシングに無理な変形がないかをチェックします。
最後にディレーラーに通し、ラジオペンチなどで端末を引きテンションをかけながらボルトを締めて、ワイヤー交換は完了です。
ギアワイヤー交換後の仕上げ・シマノシフターの調整
ディレーラーのボルトを締め、ワイヤーが固定できたら端末の処理を行います。
フレームや、他のパーツに干渉しないよう適度な長さでワイヤー端末をカットしてください。
ワイヤー端末は、そのままではほつれてしまうのでキャップを被せ、潰して固定します。
ギアワイヤー交換後のディレーラー調整は、シマノの場合はギアをインナー・トップに入れてディレーラーの左右の位置を調整します。
インナー・トップでチェーンの適正位置を出したら、ペダルを回しながらギアを一段ずつ変え、チェーンリング・スプロケットとチェーンの干渉時に異音などがないか確認してください。
そして、全てのギアに確実にチェーンが入るか、シフトチェンジは1速ずつ行われるかをチェックし、必要であれば微調整を行ってください。
変速の調整は、使用しているうちにずれてしまうことがあるため行います。
メンテナンス時には1速ごとの確認をして、インナーワイヤー表面にワイヤーグリスを塗り込むことで、最初のコンディションを維持することができます。
走りの要となるディレーラーとギアワイヤー
今回ご紹介したギアワイヤーの交換方法は、シマノシフター・ディレーラーとアウターケーシングを使用するフレームを想定させていただきました。
メンテナンスとしては、少し高度なものかもしれませんが、ギアワイヤー交換をすることでシフターとディレーラーを理解することができ、その後のメンテナンスやパーツ交換、万が一のトラブルにも対応することができます。
シフターをはじめ、車体を理解することで、より楽しくストレスのないライディングをすることができるでしょう。