自転車のパーツの中で、動力の源とも言えるのが「チェーン」です。
人間の力を車輪に伝えるため、常に負荷がかかり過酷な状況で働き続けています。
一般的に、チェーンの寿命は5000kmとされていますが、日頃のメンテナンスによってその寿命は延びたりも縮んだりもします。
ここではシマノチェーンを例に、正しくチェーンの寿命を延ばすメンテナンスを皆さまにお伝えし、常に愛車のコンディションを良好に保つお手伝いができればと思います。
シマノチェーンのメンテナンス時期・クリーニング時期
シマノチェーンは、変速数・グレードが幅広く用意され、ショップでも常に複数のグレードを扱っています。
そのため、国内では最も使いやすいチェーンです。
ここではそのシマノチェーンを基準に、メンテナンス時期とクリーニング時期を考えてみましょう。
シマノではなくても、チェーンのメンテナンスで一番に思い付くのは注油です。
チェーンへの注油時期には諸説ありますが、走行距離では200~300kmごとと一般的に言われています。
また、雨天での走行でオイルが落ちてしまうこともあるため、月に1回や2回などとも言われますが、どの基準を選んでもオイルさえ切らさなければ正しい基準です。
このように、距離・期間で注油をしてもいいのですが、必ずしもオイル切れを起こさない保障はないので、走行前に軽くチェーンを指先で撫でてみてください。
指に薄くオイルが付く程度なら適正ですが、チェーンが乾いていたり指に多量のオイルが付いてしまうと、正しくチェーンオイルが付いていないので適正な処置を行ってください。
また、チェーンの汚れがひどくなると、注油だけでは滑らかな動きにならず、下手をするとギアが1~2段変わるほど動きが悪くなります。
チェーンクリーニングの時期は、日常のメンテナンスと目視で確認し、汚れや動きを見てください。
そして、必要だと感じたらクリーニングを行いましょう。
シマノチェーンの日頃のメンテナンス
シマノチェーンは手に入れやすく、交換も難しくありません。
メンテナンスを適正に行えば、チェーン交換の頻度も延ばすことができます。
自転車に乗る頻度は人によってそれぞれで、毎日の通勤通学、週一のロングライド、月に一度のサイクリングなど楽しみ方は様々です。
毎日自転車に乗っている方であれば、週に1度は目視で確認してください。
また、注油は走行距離にもよりますが、1~2週に1度の定期的な注油と、触れてみてオイル切れを起こしていると感じたときに行ってください。
オイル切れを起こすと、シマノチェーンの場合内部のコマが滑らかに動かなくなり、金属同士が擦れ摩耗が激しくなります。
ペダルの抵抗が増えるだけでなく、擦れたときに出てしまう鉄粉でチェーンが汚れ、その汚れがヤスリのようにチェーンを削り寿命を縮めます。
注油の他に気を付けて見てほしいのは、チェーンの汚れと動き、伸び具合です。
汚れは目視で確認し、必要ならウエスなどで拭き取ってください。
動きはペダルを回し、適正なチェーンラインを滑らかに動いているかを確認してくだい。
チェーン伸びは、シマノ以外でもチェーンチェッカーなどで定期的に測るのがよいですが、ない場合はクランクにかかったチェーンを指でつまんでも測れます。
そのときに、クランクが見えるほど上がったらチェーン交換の時期です。
日頃からメンテナンスをしていれば異常を早めに発見でき、チェーンや車体の寿命を延ばせます。
すると、よいコンディションを保つことに繋がるでしょう。
シマノチェーンのクリーニング
チェーンのクリーニングは、メンテナンス時に定期的に行う他、気付いたときに行ってください。
汚れが多く出るので、洗車のときに合わせて行ってもよいでしょう。
シマノチェーンでは、接続リンクを使っていない場合、車体にセットしたままで行います。
リンクを使用してないチェーンを車体から外してクリーニングをしたいときは、チェーンカッターで外すしかありません。
その場合、新たなチェーンピンが必要になりますが、頻繁なピン交換は緩む恐れもあるので、外してクリーニングを定期的に行う場合は、接続リンクのほうが便利です。
現在シマノ純正の接続リンクはなく、KMCミッシングリンクが手に入りやすく選択しやすいでしょう。
KMCはシマノも一部、製造委託をしており、信頼の置けるメーカーですが、ミッシングリンクは推奨の使用方法もあり、クリーニングのための付け外しは自己責任となってしまいます。
ミッシングリンクは数回の付け外しなら耐えうるものですが、頻繁に何回も付け外しを行うと、接続部分に緩みが起こってしまいます。
また、テンションの緩みや、ペダルの逆回転で外れてしまいます。
確実なのは、取り外したときにリンクも交換することで、チェーンピンを使用しての交換よりも簡単に行えるメリットはあります。
複数回の使用は自己責任となりますが、注意点としては連続した付け外しは行わずに、緩みが出ていると感じたら、危険なのですぐに交換してください。
チェーンのいろいろなクリーニング方法
シマノチェーンの基本的なクリーニングは、メンテナンスのときなどに車体にセットしたままチェーンにディグリーザーをかけ、オイルと汚れを落としてからオイルを注油していきます。
その際に、チェーンの下からウエスをあて、オイルや汚れが飛び散らないようにしましょう。
そのままだと、チェーンステイやホイールにオイルが飛び散るだけではなく、リムに付着してしまうとブレーキにも影響するので大変危険です。
ディグリーザーをかけ、ギアの目立つ汚れも落としたら1コマずつオイルをさしてください。
また、専用の洗浄器具を使用するクリーニングもあります。
複数のメーカーからシマノチェーンに使用できるチェーンクリーナーが出ていますが、箱型で中に回転ブラシがセットされ、洗浄液を入れてチェーンを中に通すものです。
チェーンを通し、本体を手で固定してペダルを回転させると、洗浄液とブラシでチェーンが洗われ、ディグリーザーよりも手軽に短時間でクリーニングできます。
メリットは多いですが、洗浄液が必要なことと洗浄でオイルが落ちやすく、注油を確実に行わないとオイル切れを起こすことがあるという点に注意しましょう。
メンテナンスに合わせてチェーンチェック
チェーンはメンテナンス頻度の高いパーツになります。
早い段階で不具合が発見できれば、チェーンの寿命だけでなくトラブルも未然に防ぐことに繋がります。
チェーン伸びはチェーンチェッカーで測ると、感覚でなくチェーンの劣化を測ることができますので、ライディングに出ることが多い方はひとつ用意しておくといいと思います。
ディレーラーを適正に調整することも、チェーン寿命を延ばします。
調整をせず正しく変速されないと、ギアが噛み合わなくなります。
また、余計な接触が起こり負担をかけることにもなるので、調整やシフトワイヤーの交換、変速に違和感があれば、早めに変速系のメンテナンスを行ってください。
そして、チェーンの干渉を見るときには、必ず全てのギアにかけてください。
大多数がシマノチェーンとシマノディレーラーの組み合わせと思われますが、シマノも他社のコンポーネントも、大半は樹脂のプーリーがセットされています。
プーリーはチェーンに比べて摩耗が早く、削れた樹脂が汚れとして溜まりやすい部分なので、チェックする際はプーリーも確認し、汚れは取り除くか拭き取ってください。
いくつかを挙げましたが、確認だけなら時間もかからずメンテナンスの手を止めることはないと思います。
少しのチェックでチェーンの寿命を格段に延ばし、チェーントラブルによるアクシデントを防げるので、ぜひチェックをしてみてください。
使う場面で変わるチェーンオイル
オイルが切れたときにどのオイルを用意するのか、いろいろなメーカーから数種類のオイルが出されているので悩むこともあるでしょう。
いろいろと使ってみてこだわりのメーカー、オイルを見付けるというのもメンテナンスの楽しみのひとつですが、ここでは比較的に手に入りやすいフィニッシュラインから発売されているオイルの特徴をご紹介します。
自転車用のオイル製品を主に販売しているフィニッシュラインからは、チェーンオイルも多くの種類が出ています。
赤いラベルの「ドライバイクルブ」と、緑のラベルの「ウェットバイクルブ」が代表的ですが、特徴はシマノの2種類と一緒です。
他にゴールドのラベルの「セラミックウェットルブ」というセラミックが配合されたオイルがあり、ドライタイプの潤滑性とウェットタイプの耐久性を併せ持つのが特徴です。
そして、通勤など毎日の使用に使いやすいのが、シルバーのラベルの「ワックスバイクルブ」という製品で、性能はドライタイプに近く、注油すると表面にワックス層を作るのが特徴です。
他にも数種ありますが、どの製品もボトルとエアゾールがあるので、メンテンナンスのニーズによって選ぶとよいでしょう。
他にも数多くのメーカーがありますが、大半はドライタイプとウェットタイプでラインナップされています。
もし迷ったら、ドライライプとウェットタイプを用意し、用途を判断して使い分けるとよいでしょう。
なぜチェーンメンテナンスは大事なのか
チェーンだけに限ったことではありませんが、チェーンの劣化というものは「今日はおかしい」と突発的に起こるのではなく、ゆっくりと少しづつ劣化していきます。
ライディング中のチェーントラブルは少なくないですが、チェーンのメンテナンスを通していろいろな箇所を見ていれば、もうチェーンのトラブルは怖くありません。
これからもチェーンのメンテナンスを定期的に行い、ストレスのない安全なライディングを楽しんでください。