ロードバイクの完成車のグレードはピンきりであり、特に付属パーツのレベル差は車体よりも激しいと言えます。
そうなりますとアップグレードを考えたくなるものですが、コンポなどはその代表格です。
そこで今回は、完成車に付属していることが非常に多いシマノのコンポについて、アップグレードを考えながら検証していきます。
シマノのロードバイク用コンポの概要
今回はシマノのロードバイク用コンポのアップグレードについてお伝えしますが、まずはシマノコンポの全体像をお話しします。
コンポはギアやレバーなど自転車を動かす機構である「ドライブトレイン」と、ブレーキの総称です。
シマノのコンポにはグレードがあり、セット販売もしていますし、カスタムや修繕用に単品でも購入が可能です。
完成車には単一グレードのコンポが一式で導入されるのが基本ですが、コストの関係で他グレードや別メーカーの物が混じることもあります。
そして、グレードの違いですが、シマノの場合はグレードが上がっていくにしたがい、リアの変速段数が多くなり、重量が軽くなり、価格が上がっていきます。
グレードの違いが特に顕著に表れるのは価格で、最高グレードと最低グレードではセットで約20万円の開きがあります。
シマノコンポのアップグレードで望める効果
シマノコンポのアップグレードをする目的は個人的に様々な理由もあるかと思いますが、アップグレードの効果が高いのは以下のようなことになります。
●リアの変速段数が増える
●変速がスムーズかつ正確に行われるようになる
●ブレーキの制動力が上がる
●パワーロスが減り、効率が上がる
●バイク全体が軽量になる
●見た目に高級感が出る
今回はこの事項に沿って話を進めますが、最初のカスタムではロードバイクの本分でもあるスピードの改善が推奨されることが多くなります。
しかし、軽量になることや、パワーロスが減ることで間接的にはスピードアップに繋がりますが、コンポは直接的にスピード面に影響を与えるものではありません。
スピードアップに効果があるのはパーツでいけば車輪(ホイール+タイヤ)であり、ひいては自転車のエンジンである自分の脚力を鍛えることです。
そのため、スピードアップを望むのであれば、まずは車輪やトレーニング方法に注目をしてください。
シマノコンポのアップグレード①リアの変速段数アップ
それではここから、シマノのロード用コンポのアップグレードについて、前項で挙げました項目に沿って考えていきます。
まずはリアの変速段数を増やすことからですが、シマノにはリア8速、9速、10速、11速のコンポが存在します。
したがって、変速段数を増やすということは、11速以外のコンポを使用している場合ということになります。
シマノは変速段数が違うパーツに関しては互換性を保証しておらず、アップグレードを行うには関連するパーツ(ブレーキ以外)を全て交換することになります。
変速段数は、8速なら10速以上へ、9速なら11速にと、2段づつ上げるのが推奨されます。
それは、その方がアップグレードの効果を体感しやすいからであり、満足度も高いからです。
ちなみに、筆者も経験がありますし、多くの体験談からも紹介されていることですが、変速段数が違うパーツの組み合わせでも作動させられることは正直あります。
しかし、それは偶然ですし、互換性というのはメーカー側が決めることで、動いたから互換性があるとはなりません。
そのため、厳しい事を言うようですが、互換性が保証されていないパーツの組み合わせで何かトラブルがあったとしても、全て自己責任ということになります。
シマノコンポのアップグレード②フロント変速の改善
次にシマノコンポのアップグレードを考えるのは、変速のスムーズさと正確さです。
これは主にギア数の少ないフロント変速の話になりますが、ロードバイクのフロントは基本的に2速なので、2枚の歯車で運用されています。
フロントはギアの歯数間の差が大きいので、変速時にチェーンが大きく動きます。
その際にスムーズさを欠くと、「ガッチャン」という音が鳴る感じの変速になり、最悪の場合はチェーンが落ちてしまうこともあります。
このフロント変速に関わるパーツはシフトレバー(STIレバー)、フロントディレイラー、クランクセット、そしてチェーンになります。
特に変速のスムーズさに関わってくるのはクランクセットで、チェーンリング(ギアの歯車)の剛性の高さや精度が必要です。
そこで推奨されるのは105以上のグレードであり、おすすめはトップグレードのデュラエースかセカンドのアルテグラになります。
また、クランクはアームの剛性が低いとペダルを漕ぐ際にたわむので、その分で大きくパワーロスをします。
パワーロスは加速力が鈍るほか、無駄に力を使うことになるので、脚に疲労が溜まる結果にもなり、快適な走行ができません。
そのため、変速同様ここでも推奨されるのは105以上のグレードであり、アームの構造が下位グレードとは異なりますので、変速同様違いは明らかです。
シマノコンポのアップグレード③ブレーキの改善
続いてのシマノコンポのアップグレードは「ブレーキ」です。
ブレーキは自転車を止める唯一の手段であり、命に関わりますので絶対におろそかにしてはいけない部分です。
シマノのブレーキでは105以上とそれ以外のグレードに制動力の差が大きく、「最低でも105」と言うのがもはや定説になっています。
ロードバイクのキャリパーブレーキは、ワイヤーを引いて本体のアームを動かし、アームの先に付属しているブレーキシューが、ホイールのリムを挟み付けて回転を止める(緩める)仕組みです。
そして、ブレーキの制動力が決まるのはアームの剛性とブレーキシューの精巧さであり、これを高レベルで満たしているのがシマノでは105以上のグレードということになります。
ロードバイクの完成車では、ブレーキだけがシマノ製ではないことも珍しくありませんので、ぜひアップグレードして頂きたい部分です。
また、ブレーキは他パーツとの連動性が無く、変速段数に関係なくほぼ全てに互換性が保証されていますので、単独で交換することができます。
なお、ディスクブレーキに関しては、フレームとホイールが対応している必要があるので、キャリパーブレーキモデルの完成車からのアップグレードはできません。
シマノコンポのアップグレード④見た目や重量はどうか?
ここまでは、シマノコンポのアップグレードに際し、主に性能面のお話をしてきましたが、最後は重量や見た目に関してのことになります。
シマノのコンポはグレードが上がるに連れて、全体的に作りが精巧になっていきますので、見た目の高級感が違ってきます。
特にコンポの顔とも言えるクランクは、最近下位グレードもだいぶ高級感を意識した作りになりましたが、デュラエースの質感や、黒光りしているような存在感には及びません。
また、上位グレードは部分的にカーボンなどを使用していますので、やはりそういった部分でも見た目が違ってきます。
一方重量ですが、グレードごとにセットで300g、400gと変わって来ます。
しかし、プロレーサーならまだしも、アマチュアクラスで、しかもレースをしないということであれば、コンポの重量は走りにさほど影響を与えるとは言えません。
そのため、アップグレードが軽量化目的であるならば、車輪を筆頭にハンドルやサドルの交換を考えた方がよいでしょう。
連動性を無視したアップグレードは不可能!
今回は、シマノのロードバイク用コンポのアップグレードについて考えてきました。
コンポのアップグレードは性能面や安全性、そして見た目などの改善を目的とするものです。
互換性の問題から、コンポのアップグレードにはまとめて多くのパーツを交換する必要がありますので、自分の用途に合わせてじっくりと検討してみてください。