シマノホイールはヒルクライム向き?ヒルクライム向きとは?

登坂競技であるヒルクライムは集団走行になりづらく、集団内での接触や小競り合い、また駆け引きなども少ないので、レースの入門編と位置付けられることもあります。

競技に参加するに当たって重要になるのは、車体と共にホイールです。

そこで今回は日本でも愛用者が多い「シマノ」のホイールを例に、ヒルクライム向きの機材を考えてみます。

ヒルクライムとは?

それではまず、ヒルクライムについてのお話からさせて頂きます。

ヒルクライムは山の上りに設けられたコースを走るロードレースで、日本でも多くの競技が行われています。

距離が平地のロードレースに比べ短く、有名どころでは「Mt.富士(富士山)ヒルクライム」の24㎞、「ツール・ド・美ヶ原」の21.6㎞となっています。

冒頭でも触れましたが、坂を登るという特性上、脚力の違いに応じて大きな差が付きやすいので、集団走行にならずマイペースで走ることができます。

また、重力に逆らって上ることから、何よりも軽量であることが有利に働きます。

そのため、「クライマー」と呼ばれる小柄な選手が活躍しますし、車体やパーツも軽量化を図る必要があります。

身体の軽量化に関しては個人で頑張っていただくとして、車体やパーツはそれなりのものを揃えたいものです。

特に走行性能に直接関わるホイールは、真っ先に手を付けたいところであるので、今回シマノのホイールを例に挙げ、ヒルクライム向きのホイールとはどんなものかを検証していきます。

ヒルクライムに適したホイールとは?

「ヒルクライム向きのホイールと言えば?」という質問の答えによく見られるのは、「何より軽量であること」となります。

もちろんこれは正解なのですが、それだけですと不十分と言わざるを得ません。

ホイールは車体を支える部分のため、人間が乗っている間は絶えず加重がされている状態です。

そのため、ホイールは多かれ少なかれたわむものであり、そのたわみが大きいとペダルを漕いだ力が分散され、思うように前に進んでくれなくなります。

ホイールがたわむとは「変形する」と言い換えてもよいわけですが、物質が変形しにくい度合いのことを「剛性」といいます。

ロードバイクには剛性が付き物であり、事あるごとにこの言葉に出くわすはずですが、特にホイールは上記のような理由から剛性が大きなカギを握っています。

ヒルクライムは重力に逆らう分、どうしてもペダルに力を込めるような漕ぎ方になりますし、勾配がきつい場所では立ち漕ぎ(ダンシング)なども多用します。

そうなると、やはりホイールは変形しやすくなるので、なるべく変形しにくい=剛性の高いホイールが求められます。

次項からは、そういった軽量かつ剛性の高いホイールがシマノにあるのかどうかを検証してみます。

シマノのホイールがヒルクライム向きになりつつある?

ここでは、シマノのホイール全体についてお話ししますが、シマノのホイールは「普通」であることが最大の特徴です。

超軽量であるとか、ずば抜けて剛性が高いとか、格安であるなど秀でた特徴はなく、全てが高い次元でまとまっているというイメージです。

普通と言うとイメージが悪い方に取られるかもしれませんが、実は簡単ではなく、どこかが秀でればどこかは少し劣るのが物事の常ですから、普通という表現はシマノの技術の高さを物語る証でもあるわけです。

全体的な特徴としてはリム(タイヤをはめる外周部分)が柔らかく、スポークが少なめだったりしますので、剛性が低めのものが多いとされてきました。

そのため、重量に関しては上記のように特に軽くもなく、なおかつ剛性が低いため、メーカー全体ではヒルクライム向きと評価されることは少なかったです。

しかし、近年はリムの剛性を高める傾向にあるようで、ペダルに力を込めてもたわまず、踏み応えがあるというインプレ評価を見掛けます。

シマノも進化をしているということであり、ヒルクライムにおすすめできるホイールも出てきているということでしょう。

ヒルクライム向きと評価されるシマノホイール①デュラエースグレード

シマノはロードバイク用のコンポでは他の追随を許さないメーカーであり、プロ、アマを問わず広く普及しています。

そのコンポは定期的にリニューアルをしますが、その際にホイールもモデルチェンジされることがあります。

近年はその際に前項でお話ししたような、剛性面にテコ入れが行われているようです。

例えば、コンポの最上位グレードである「デュラエース」ですが、2016年に品番9000からR9100系にモデルチェンジを行った際に、ホイールも9100という品番にチェンジされています。

のちほど詳しくご紹介しますが、「WH-R9100-C24-CL」というクリンチャーホイールは前作からリムが50gほど重くなっています。

現在のトレンドである太いタイヤを履くためにリム幅を広げる、「ワイドリム化」を図ったのであればその分の重量増と考えられますが、このホイールはワイドリム化をしていません。

そのため、真の理由は未公表ですが、リムの強度を増すための重量増であり、それによって剛性が高まったと推測できます。

実際にこのホイールをヒルクライム向きとして、積極的に推奨している販売店や専門家もいらっしゃいます。

ヒルクライム向きと評価されるシマノホイール②アルテグラグレード

前項ではシマノの最高峰コンポ、デュラエースグレードのホイールの剛性面に変化があった可能性についてお話ししました。

ここではもう1本、剛性が大幅に強化されたと見られるホイールについてご紹介します。

2017年にデュラエースに次ぐセカンドグレードコンポ「アルテグラ」がリニューアルしましたが、その際にホイールも後継モデルとしてリリースされました。

その中の「WH-RS700-C30」というホイールは、従来のモデルよりもリムの高さが高くなり、スポークの本数が増え、その組み方もペダルを踏んだ力を伝達しやすいしやすい仕様に変わりました。

リムは高くなるとそれだけ加重を受け止める耐久力が増しますので、たわみが少なくなります。

また、スポークの本数ですが、リア(後)に1本増やすことでその分の強度が増しますが、それ以上に大きいのは本数が奇数になり(20→21本)、「オプトバル」組みができるようになったことです。

オプトバルとは、応力が強く掛かるギアの歯車がある側(ドライブ側)のスポーク本数を、反対側に比べ2:1の比率になるように配置する組み方のことです。

これによってロードバイクが走行している際のホイールのたわみも抑えることができるので、ヒルクライム向きの剛性が確保されたと見られています。

シマノホイールのスペック

それでは最後に、前項までにお伝えしたシマノホイールの詳細をご紹介します。

【WH-R9100-C24-CL Dura Ace】

参考価格:¥156,669(税込)

重量:1389g(前・585g 後・804g)

リムハイト:前・21mm 後・23㎜

リムの下地はアルミですが、その上からカーボンでラミネートされた、ハイブリッドホイールです。

シマノのクリンチャーホイールの中では最も軽量で、先ほどもお伝えしましたがリムの剛性が前作よりも高まっていますので、一番ヒルクライム向きと言ってよいでしょう。

【WH-RS700-C30】

参考価格:¥90,163

重量:1568g(前後別不明)

リムハイト:前・24mm 後・28mm

こちらもアルミリム+カーボンラミネートのハイブリッドホイールになります。

カーボンの積層を見直すことで、前モデルより軽量化を図り、前項でお話ししたようにスポークがオプトバル組みになったことで、シマノでも有数の剛性を持つホイールになったと言われています。

剛性が高まってきたことでヒルクライム向きに!

今回はシマノ製ホイールをご紹介しながら、ヒルクライム向きのホイールを考えてみました。

軽量であることは重要な要素ですが、ホイールはたわむと進みが悪くなりますので、ある程度の剛性が確保されていないといけません。

その意味では剛性を上げる傾向が見えるシマノホイールは、ヒルクライムでも注目できることになりそうです。