ピナレロ・ドグマF10はプロ専用か?インプレ評価を検証

ピナレロの現在のフラッグシップモデルと言えば「ドグマF10」です。

インプレ情報には「スーパー」「モンスター」などの派手な文言で紹介されることもある、最新鋭のロードバイクです。

今回はそんなドグマF10をご紹介します。

ピナレロ・ドグマとレースの歴史

ピナレロは創業者の「ジョバンニ・ピナレロ」がプロのロードレーサーだったこともあり、レードレースと共に発展を遂げてきたと言っても過言ではありません。

創業当初からプロチームにフレームを提供し、三大ツールの制覇や、オリンピックの金メダリストに貢献してきました。

ドグマは2002年、世界初の量産型マグネシウム合金製のロードバイクとして登場しました。

2003年には「アレサンドロ・ペタッキ」がジロ・デ・イタリアで6勝、ツール・ド・フランスで4勝、ブエルタ・ア・エスパーニャで5勝のステージ優勝を飾り、ドグマの名を一気に世界に知らしめます。

その後もピナレロは、各メーカーのフラッグシップモデルがカーボンフレームになる中でドグマ=マグネシウムにこだわり、ドグマのカーボン化は2009年までずれ込んでいます。

このこだわりをピナレロらしさとするインプレ評価も多く、後述しますが今でも随所にそのこだわりが垣間見えます。

それはともかく、そんな時期の遅れなどはもろともせず、カーボンフレームでも大レースで次から次へと勝利を収めていきます。

ドグマがカーボン化されてから最新のF10に至るまで計4回のモデルチェンジを行いましたが、その間のツール・ド・フランスで個人総合優勝6回という偉業を達成しています。

走りの軽さや瞬発スピードというインプレ評価はどこからくるものか?

それではここから、ピナレロ・ドグマF10について詳しくお話ししていきますが、まずは現在のF10を知っていただくということで、スペックからご紹介します。

ドグマは前作の「F8」が空力性能に特化し、エアロロードとしてリリースされているので、F10も形状はF8を継承したものになりました。

そして、ロードバイク以上に空力性能にシビアになる必要がある、室内競技用バイクやタイムトライアルバイクの技術が投入されています。

先端に整流のためのフィンを装備したフロントフォークの「フォークフラップ」や、ダウンチューブのボトルケージ装着部分をえぐり、ボトルをチューブ外にはみ出させないようにする「コンケーブデザイン」がその代表例です。

最上位モデルのエアロロードでありながら、インプレ評価で走り出しの軽さや瞬発スピードが強調されているのは、これらの技術によるところが大きいでしょう。

実際にピナレロは、前作F8から12.6%の空気抵抗低減を達成したと発表しており、ツール・ド・フランス連覇などの活躍で、その効果は十分に証明されています。

ピナレロ・ドグマF10がしなやかになったというインプレ評価の源は?

前項に引き続きドグマF10のスペックについてお伝えしますが、近年ドグマが少ししなやかで適度な硬さになっているというインプレ評価があります。

試乗インプレの中には、「プロ選手がこの剛性感で満足なのか?」という疑問を投げかける声すらあり、何かが変わったのは間違いないところです。

ピナレロはカーボン繊維では世界的権威の日本メーカー「東レ」から、フレーム素材となるカーボンの供給を受けています。

そして、ドグマにはその東レが「20年に一度の革新的素材」としている、「T1100G」というカーボン繊維が使用されています。

これは東レが、中型旅客機のボーイング・787に使用していた「T800S」の後継素材として、次世代の航空機に採用する予定だったものを先行してピナレロに提供したものです。

先代のフラッグシップモデル「ドグマF8」から採用され、ロードバイク界ではドグマのみが占有している素材です。

そして、この素材は従来の弾性率重視のものから、強度重視に変わりましたが、これがしなやかさを生み出す要因になったのです。

ピナレロ・ドグマF10使用のカーボン繊維「T1100G」がもたらすものとは

前項から引き続き、ドグマF10のフレームに使用されているカーボン繊維のお話になりますが、これまでピナレロが採用してきた素材は50T、60T、65Tというピナレロしか扱わないような高弾性のものでした。

高弾性になるとカーボンは硬くなりますので、力の伝導率が高まり反応のよいパリッとしたフレームになります。

しかし、カーボンは弾性率が高まると強度が落ちるという特性があるため、レース中の落車や輸送中の衝撃で車体が割れてしまうこともあります。

それでは世界中を転戦するサーキットには耐えられませんし、アマチュアレベルでは乗るたびにそんな危険性がつきまとうのでは、扱いにくくて仕方がありません。

しかし、相反する関係であるがゆえ、強度重視で単に弾性率を下げれば柔らかくプロレベルでは使いものにならなくなってしまいます。

そのため、難しい課題であったわけですが、そこを補完したのが「T1100G」であり、強度は東レの中でトップに位置するものながら、弾性率も十分に高弾性と言えるレベルを確保しています。

それにより、必要なところにはT1100Gを使い強度を確保、その他の部分は使う素材の量を減らすことも可能になるので、軽量化も図れるということになります。

しかも、F10はF8からの進化の過程で、カーボンプリプレグ(加工されたカーボンシート)の配置を見直し、さらに6.3%(ピナレロの公表値)の軽量化に成功したと言われています。

そして、F10はプロの使用に耐え得る高弾性はキープしているのですが、T1100Gは弾性率自体が従来の素材よりも低いので、しなやかで柔らかめというインプレ評価になったものと推測されます。

ドグマF10が身近に感じるようになったというインプレ評価あり

前項まで確認してきましたピナレロ・ドグマF10のスペックをまとめますと、トラックレーサーやTT(タイムトライアル)バイク譲りの空力性能を加味し、より一層爆発的な加速力と、高速巡航性を高めています。

また、強度の高い素材を使用し耐久性を高め、プロレベルでも必要十分な弾性率をキープした上で、適度なしなやかさも持たせるもの作りをしています。

そのため、インプレ情報では、プロ仕様であるドグマがF10になって少し身近に感じるようになったという意見も少なくありません。

ピナレロは昔からバイクの衝撃吸収性にこだわっていますので、レースモデルであっても走破性と快適性のバランスは取れている方でした。

F10はそのバランスがさらに強化された印象があり、それがユーザーの裾野を広げている大きな要因になっているのでしょう。

ピナレロ・ドグマF10のラインナップ

それでは最後に、ピナレロ・ドグマF10の最新2019モデルのラインナップをご紹介します。

F10には三大ツールの勝利を記念した限定モデルや、台数限定の完成車もあります。

しかし、基本はノーマルの「DOGMA F10」とそのディスクブレーキモデル「DOGMA F10 DISK」、そしてノーマルからさらに軽量化を図った「DOGMA F10 Xlight」のフレームセットになります。

インプレ情報には、Xlightに関することはあまり取り上げられていませんが、完全受注生産であり、しかもプロにもチーム全員に供給されないような特別なモデルなので、ユーザーさんが少ないのかと思います。

また、Xlightには装備込でライダーの体重が最大85㎏に制限されていますので、扱いが難しいこともあります。

それでは一覧にまとめます。

【DOGMA F10】

フレーム重量:820g(53サイズ)

参考価格(税込):¥734,400(スタンダードカラー)/¥820,800(オーダーシステムMY WAYカラー)

【DOGMA F10 DISK】

フレーム重量:未公表(実測値情報840g)

ホイール固定:142mmスルーアクスル

参考価格:¥756,000(スタンダード)/¥842,400(MY WAY)

【DOGMA F10 Xlight】

フレーム重量:760g

参考価格:¥972,000(スタンダードカラーのみ)

最高峰のレーシングバイクを身近に感じられようになった!

今回は、ピナレロのドグマF10についてお話ししました。

最先端の素材と技術が結集した世界最高峰のレーシングバイクですが、素材が変わったことによって、アマチュアライダーに少し寄り添ってきた感があります。

扱いやすいとまでは言いませんが、試してみる価値はあるかと思います。