皆さんは「ヒルクライム」という自転車競技をご存知でしょうか?
ロードバイクを使用し、山地などの上り坂に設けられたコースでタイムを競う競技で、レースの入門編としても人気があります。
また、広い意味で坂を登ること全般を指すこともありますので、日常的に行っている方もいらっしゃるかと思います。
そして、平坦で爆発的なスピードを出すイメージのあるピナレロは、ヒルクライムに向くのかも検証してみます。
競技の「ヒルクライム」とは
ヒルクライムは冒頭でも触れましたが、いわゆる自転車を使った山登りです。
平地や下り坂に比べればスピードをそれほど必要としませんので、競技だとしてもそれほど恐怖心なく入っていけます。
また、脚力の強さによってタイム差が付いてしまうので、集団走行になりづらく自分のペースを守って走ることができます。
平地のロードレースは集団走行になりやすく、集団の中での駆け引きなどもあり、他車との接触で落車したりすることもありますので、初心者の方には少しハードルが高いかもしれません。
その点ヒルクライムは、勝利を目指すには大変シビアなトレーニングや戦術が必要ですが、レースを楽しむという観点から見れば、マイペースで走れるので初心者向けとされます。
日本でもとても盛んな競技で、富士山や乗鞍岳、比叡山などでも毎年大会が行われています。
その中にはピナレロのロードバイクで参加している方も多数いらっしゃいますので、のちほど機種をご紹介します。
ヒルクライムは何より軽量であること
ヒルクライムは坂を登ることですから、重力に逆らうということになります。
そのため、何を置いても軽量なことが有利であり、競技の世界でも「クライマー」と呼ばれる細身で小柄な選手が活躍をします。
また、機材であるロードバイクも当然ながら軽量なものが有利であり、プロはもちろんアマチュアのレースでも上位入賞を果たす人はカーボンフレーム車が多くなります。
その点でピナレロは、ラインナップの9割以上がカーボン車ですので、第一段階はクリアというところでしょうか。
また、物理的な重量に加え、走りの軽さも重要になってくるので、それを左右するホイールも非常に重要な要素です。
ヒルクライムはペダルひと漕ぎに大きな圧力が掛かりますので、重いものを回すよりも軽いものを回した方が有利になるのは明らかです。
ホイールの回転に関わるのは外周部分のリムの重量なので、なるべくリムを軽くしたい、となるとやはりホイールもカーボンが好ましいことになります。
ただし、カーボンリムのホイールは最低でも10万円台(前後セット)で、平均が20万円後半から30万円という価格帯になります。
これをカーボンフレームと合わせた場合、恐ろしい金額になってしまいますので、最初はアルミリムのホイールということになるかと思います。
ヒルクライムに必要な剛性の高さをピナレロは備えている
前項で、ヒルクライムはひと漕ぎに大きな圧力が掛かると言いましたが、漕いだ力が確実に動力にならないと、疲れてしまうだけで一向にタイムは上がりません。
そのため、ヒルクライムにはパワーロスが少ない、剛性の高いフレームが適しています。
剛性は物が変形する度合いのことで、剛性が高いというのは変形しにくいという意味です。
自転車はペダルを漕いだ力が車輪に伝わって動力になるわけですが、この時にフレームの剛性が低く変形の度合いが大きいと、力が分散されてしまうので、踏んだ力がストレートに動力になりません。
一方で変形の度合いの大きいものは、地面からの振動や衝撃も分散させ、人の身体に伝えにくくするので、乗り心地が良くなります。
しかし、ヒルクライムは短距離レースであり(富士山で全長24㎞、乗鞍岳で19㎞)、乗り心地が少しくらい犠牲になってもパワーをロスしないことを優先したいので、剛性が高めのフレームが適しています。
その点でピナレロはプロも使用するようなレースモデルが多いので、剛性が高めのフレームが揃っています。
ピナレロはヒルクライム向きという評価は少ない?
さて、ここでピナレロについて、特記しておかなければならない事を記載しておきます。
ヒルクライムには何より軽量であることが重要とお伝えしましたが、ピナレロはそれほど軽量化に力を注いでいるブランドではありません。
他に比べ極端に2㎏、3㎏も重いわけではありませんが、世界最軽量を謳っているようなブランドではありません。
そのため、ネットや雑誌の記事では、ピナレロのロードバイクをあえてヒルクライム向きとするのは少ない傾向があります。
また、ヒルクライムはレースの入門編ともお伝えしましたが、ピナレロはどちらかというとプロレース志向が強く、初心者やキャリアの浅い方が扱いやすいモデルが少ないこともあります。
価格面もカーボンフレーム車の最低価格で約26万円というところですから、入門編と言うには価格のハードルも高いのではないでしょうか。
ピナレロが重量にこだわらないわけとは?
前項では、ピナレロの重量にこだわらないもの作りが、ヒルクライム向きとされないこともあるとお伝えしました。
しかし、ピナレロはフレームを軽量にしてスピードを求めるという発想よりは、ペダルを漕いだ力をいかに効率よく動力に変えて爆発させるかという点に力を注いでいます。
ボルト1個、ワイヤー1本まで空力性能にこだわり、徹底して空気抵抗の低減を目指したもの作りをしています。
いわゆる、重量にこだわらず、推進力を高めてスピードを確保するということを重視しています。
ですから、確かにピナレロのバイクよりも軽量なものは数多くありますが、前に進む力が強いピナレロもそれらにまったく引けをとらないということになります。
実際にピナレロは山岳地帯を走ることも多いヨーロッパのロードレースで、無類の強さを発揮しているため、軽量だけが全てではないと言ってよいでしょう。
ピナレロでヒルクライムに向くバイク
それでは筆者が考える、ピナレロのヒルクライムに適している機種を何台かご紹介します。
【DOGMA(ドグマ)F10】
2018年のジロ・デ・イタリアの山岳賞を獲得した、クリス・フルーム選手を始めとする「チーム・スカイ」のメインバイクであり、山でも抜群の強さを発揮しています。
フレームセットだけで、70万円から100万円に迫るグレードのものまでありますので、おすすめというのは恐れ多いですが、ピナレロがヒルクライムにも強い証明にはなります。
【PRINCE(プリンス)】
プリンスもいくつかモデルがありますが、筆者はあえてノーマルグレードのプリンスをおすすめします。
ドグマF10の技術を踏襲していますので、空力に優れ十分な剛性も確保されており、ヒルクライム向きの素養は十分にあります。
加えてノーマルグレードは適度に重厚感があり安定していますし、扱いやすさも加味されているので、キャリアの浅い方にもおすすめできます。
【RAZHA(ラザ)】
上位モデルに比べると、かなり手頃な価格(税込約26万円)で手に入るカーボンロードになります。
エアロ形状に特化せず、フレーム全体でタメを作りながらスゥーと伸ばすイメージで、ヒルクライムでは傾斜が緩い部分で力を温存し、激坂はダンシング(立ち漕ぎ)で一気に行くような乗り方が向くバイクです。
ピナレロはヒルクライムでも力を発揮する
今回はヒルクライムにおけるピナレロのバイクの適性を考えてみました。
軽量を売りにしていないという部分だけを切り取れば一見不利に映りますが、推進力でそれをカバーして、トップクラスのプロレースで山岳賞を取るほどの登り性能があるということです。
そのため、速さも山を登る力強さを兼ね備えているということで、ヒルクライムに挑戦したい方は視野に入れたいブランドになりますね。