ロードバイクのフレーム素材は大きく分けると、カーボンか金属系のどちらかになります。
レースの世界ではカーボンがほぼ独占状態ですが、金属系は特にアルミが、一般モデルのエントリーグレードを中心に根強い人気があります。
ピナレロも以前はアルミにこだわっていましたが、現状ではどうなのでしょうか?
それについて確認をしていきましょう。
ロードバイクにおけるフレーム素材の変遷
ロードバイクはロードレースと共に時代を渡り歩いてきていますので、レースで使用されるものが変わるにつれてバイクも変化をしていきます。
ロードバイクのフレーム素材で最初に主流となったのは「スチール」です。
鉄をベースに様々なメタルが加えられた合金が主で、クロモリやマンモリが有名です。
ピナレロでは初代DOGMA(ドグマ)がマグネシウム合金でした。
しかし、ライダーのレベルが上がったことで、車体に軽さと剛性の高さが求められるようになり、金属でも軽量なアルミが主流となっていきます。
スチールに比べて硬い素材なので、プロに強靭な脚力に負けない反応を見せるアルミは、瞬く間にレースの世界の主役になります。
後述しますが、ピナレロでは一時代を築いた「カーボンバック」というフレームが、代表的なアルミ車として歴史に名を残しています。
歴史は進み、今は金属では無く繊維のカーボンが主流となりましたが、全く違う乗り味ということもあり、好んでアルミ車に乗り続けている方もいます。
ピナレロのアルミフレーム車とカーボン車の価格の比較
レースの世界でのトレンドがそのまま市場にも反映されるロードバイクにおいて、アルミが今でも根強く残っているのは、価格の問題が一番大きいでしょう。
ラインナップを見ると一目瞭然ですが、主要メーカーの完成車で、カーボンの最も高価なものは軒並み100万円を超えています。
一方、アルミはどんなに高額でも20万円を超えるのはごくわずか、大方は10万円台で収まります。
ちなみに、ピナレロの2019モデルでは、アルミフレーム車は1機種のみで約14万円になります。
カーボンは最低価格が約26万円、最高価格になるとハンドルやサドル、車輪が付属していないフレームセットのみで、100万円を超えるものになります。
ロードバイクでは「初心者(エントリー)モデル」などという言葉がよく使われますが、低価格のものを指すことが多く、素材はアルミになります。
初心者の方が最初からカーボン車に乗ってももちろん良いですし、用途や目的によってはむしろカーボンをおすすめする場合もあります。
しかし、最初はペダルやライト、ヘルメット、グローブなどの装備品にも費用が掛かりますから、ピナレロのカーボン車は最低でも30万円は見ておく必要があります。
最初の一台から30万円に迫ろうかというものを簡単に選択するのは中々難しいので、アルミを選択するケースが多くなるのは否めません。
大胆に扱えるのもアルミロードの大きなメリット
前項では、価格の安さがアルミフレームの人気の一端であるとお伝えしました。
また、アルミは頑丈でトラブルに強いというメリットもあります。
カーボンは繊維層を敷き詰めて固めたものなので、繊維の層が崩れるとそこから一気に破断してしまう可能性があります。
具体的には傷に弱く、亀裂などが入ると破断しやすくなります。
また、修理やメンテナンスの際にボルトを締め直すこともありますが、規定以上にトルクを掛けてしまうと、圧迫されて周りの繊維が破断することもあります。
このようにカーボンは繊細なので、扱いに気を使うところがあります。
一方、アルミは倒して地面に叩きつけてしまったり、障害物にヒットしたとしても、傷や塗装の剥がれはあるにせよ、そこから破断することはほぼありません。
しかも、傷なら軽く削ってパテで埋めるなどの処理で十分ですし、凹んでも板金で直せますから、大事に至らないということも大きなメリットです。
初心者の方はロードバイクの扱いに慣れていない分、転倒などのリスクも高いので、アルミの方が安心して取り扱えます。
ましてピナレロのカーボン車は高額ですから、価格と併せても扱いやすさという点ではアルミに軍配が上がります。
ピナレロはレースによって地位を築いてきた!
ロードバイクを取り扱う多くのメーカ―、ブランドは、世界中の何かしらのロードレースにスポンサーやサプライヤー(機材提供者)として参加をしています。
その最高峰が、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどを主催している、「UCIワールドツアー」です。
ワールドツアーに参戦するチームに機材を提供するのが、ロードバイクを製造する大きな目的というメーカ―も多く、ピナレロなどはその代表格です。
ただ参戦するだけでなく、ピナレロのバイクは近30年ほどの世界中のレースを勝ちに勝ち、今でも勝ち続けてその地位を守り続けています。
そのため、一般市場に並ぶバイクもほとんどがレースモデルなので、先ほども触れましたが、2019モデルはプロがレースで使用することのないアルミ車は、僅か1機種になってしまったわけです。
ピナレロのアルミロードで一世を風靡した「カーボンバック」
ピナレロは、これも先ほど触れましたが、カーボンバックという世界初の技術でアルミフレームに旋風を巻き起こした時代もありました。
アルミフレームが全盛だった時代に、シートステイだけをカーボン製にするというアルミフレーム車を開発しました。
カーボンフレームがまだ浸透していない時代なので、そのしなやかでソフトな乗り心地は多くの人が未経験だったこともあり、爆発的なヒットとなりました。
他メーカーも続々とこの技術をコピーしましたし、元祖であるピナレロでは納車まで1年待ちだったという記録も残っています。
フルカーボンフレームが当たり前となり、多くのアルミフレーム車がカーボン製のフロントフォークを採用する今は、カーボンバックも意義が薄れ、需要も少なくなりました。
ピナレロも2018年モデルまではシートステイにカーボンを使用した機種がありましたが、2019モデルにはありません。
それでもピナレロがアルミフレームで一世を風靡したのは事実であり、ラインナップは減りましたが、アルミ車へのこだわりもあるはずなのです。
2019モデルのピナレロのアルミロード
それでは最後になりましたが、ピナレロの2019モデルで唯一となるアルミフレーム車をご紹介します。
【PRIMA(プリマ)】
参考価格:¥138,240
ピナレロでは10万円台のロードバイクはこのプリマだけですから、やはりまずは価格が魅力ということになるでしょうか。
フレームは、耐久性と適度な硬さとしなりのバランスが評価されている「6061」系のアルミ素材を、チューブ内に厚みの違う部分を3か所設ける「トリプルバテッド」という技術で成形しています。
これにより過度に剛性を高くせずに、軽量化にも努めています。
また、ピナレロらしいレーシーなジオメトリなので、前傾姿勢が深めになり、ペダルひと漕ぎで「ガツン」と進むような反応の鋭さが特徴です。
反面、ピナレロの象徴でもあるクネクネとした流線形の「ONDA(オンダ)」のカーボン製フロントフォークや、適度に曲げ加工されたシートステイにより、衝撃吸収性も高められています。
ピナレロでは初心者モデルと位置付けられていますが、このように上位モデルにも採用されている技術が受け継がれていますので、価格を考えればコスパの高い一台と言えるでしょう。
ピナレロはアルミを見捨てたわけではない!
今回はピナレロのアルミロードの歴史や現状、そしてアルミとカーボンの比較などについてお伝えしました。
手頃な価格というのが大きなメリットですが、扱いやすさやカーボンには無いシャキッとした乗り味はアルミならではです。
ピナレロもラインナップこそ少ないですが、上位モデルの技術が導入されたコスパの高いものですから、十分一考に値するものです。