自転車のブレーキには「遊び」と呼ばれる、ブレーキレバーを引いても制動力が発生しない領域があります。
このブレーキの遊びがあるのと、ないのとではどのような違いがあるか、ご存知でしょうか。
今回の記事では、その「遊び」について、なぜ「遊び」が必要なのか、そしてその「遊び」の調整方法についてお話しします。
まずは自転車のブレーキの構造について知ろう!
本題にはいる前に、自転車のブレーキの仕組みについてお話しします。
一般的なママチャリには、「キャリパーブレーキ」と呼ばれるものが取り付けられています。
また、キャリパーブレーキは、ママチャリのみではなく、ロードバイクにも採用されています。
ロードバイクでは前後ブレーキに、シティサイクル(ママチャリ)では前ブレーキに取り付けられています。
キャリパーブレーキの制動の仕組みは、タイヤの台座部分であるリムにブレーキシュー(ゴム)を押し付け、その摩擦力により止まります。
このブレーキシューをリムに押し付けるのは、ブレーキ本体のアームと呼ばれる部分で、アームはリムを挟み込むように配置されています。
そして、左右のアームの間隔が狭まることで、ブレーキシューをリムに押し付けるわけです。
この左右アームの間隔を狭めるために用いられているのが、ブレーキワイヤーです。
これは、ブレーキ本体とハンドルのブレーキレバーを繋いでおり、ブレーキレバーを引くとワイヤーが引っ張られ、それによりブレーキのアームが動作します。
それでは、自転車のブレーキについて理解が深まったところで、ブレーキの「遊び」について、次章からお話しします。
自転車のブレーキの「遊び」って何?
そもそも、自転車のブレーキの「遊び」とは何かについてお話しします。
ブレーキの「遊び」とは、ブレーキレバーを引いてから制動力が発揮されるまでに、レバーを動かした量を言います。
その「遊び」があるおかげで、ブレーキのコントロールがしやすくなり、手の疲労も軽減されます。
では、制動のプロセスのどこに「遊び」があるのでしょうか。
効果が発生するまでタイムラグがある、つまり「遊び」があるのは、ブレーキシューがリムに押し付けられるタイミングです。
ブレーキがかかっていない状態では、ブレーキシューとリムの間には、当然すき間がありますが、そのすき間が「遊び」の正体です。
つまり、ブレーキの「遊び」は、ブレーキシューとリムのすき間によって生じており、そのすき間の大きさが、「遊び」の量を左右します。
このことは、ブレーキの「遊び」を調整する際によく覚えておく必要があります。
次章では、もしブレーキに「遊び」が無かったら、なぜ危険なのかについてお話しします。
自転車のブレーキの「遊び」はどうして必要なの?
自転車のブレーキの「遊び」は、ブレーキシューとリムのすき間だと前章でお話ししました。
すき間がゼロの状態は論外として、一見すると、ブレーキシューとリムのすき間はなるべく小さい方が好ましいように思えます。
なぜなら、すき間が小さければ、より素早くブレーキシューをリムに押し付けられるからです。
また、すき間が広すぎれば、ブレーキレバーを引いてもブレーキシューがリムに当たらないために止まれません。
では、なぜブレーキに「遊び」が必要なのでしょうか。
そこで、ブレーキの「遊び」が非常に小さい状態で自転車に乗ると想定します。
すると、ブレーキレバーの動作量が非常に少なく、ブレーキレバーを指先で操作しなければなりません。
その状態では、繊細な力加減が難しく、少しの動作で車輪をロックさせてしまうという問題が生じます。
車輪がロックされた状態は、氷のリンクの上で滑っている状態と変わらず、非常に危険です。
さらに、自転車の前輪をロックさせてしまうと、自転車の操舵が困難になり、その状態に陥るとプロ選手でも転倒します。
このことから、自転車の適度な「遊び」の必要性がおわかりいただけると思います。
では、その「遊び」の調整方法について次章でお話しします。
自転車のブレーキの「遊び」はアジャスタボルトで調整する!
この章では、自転車のブレーキの「遊び」の調整方法についてお話ししますが、今回はシティサイクル(ママチャリ)に広く採用されている、「キャリパーブレーキ」をメインに解説し、その後「ドラムブレーキ」について触れます。
キャリパーブレーキには、ブレーキシューとリムのすき間を調整する機能が付いています。
それは、ブレーキレバーからブレーキ本体に向かって伸びているケーブルの末端にある「アジャスタボルト」のことです。
このボルトを上から見た際に、反時計回りに回すと、ブレーキワイヤーが引っ張られ、ブレーキシューとリムのすき間を狭められます。
時計回りの場合はその逆で、すき間が広がります。
それを使い、ブレーキシューとリムのすき間が左右とも約2mmほどになるようにすれば調整は完了です。
シティサイクルの後輪に採用されているドラムブレーキの場合も、調整方法は基本的に同じです。
ただし、シティサイクルの場合は、アウターケーブル受けがブレーキ本体から独立して、フレームにバンド式で固定されています。
また、制動方法も異なり、ブレーキ内のドラムに、同じくブレーキ内のゴムのバンドが押し付けられ制動力が発揮されます。
ドラムブレーキの場合、ブレーキレバーの動作量によって「遊び」を判断します。
ドラムブレーキの場合は、ブレーキレバーがそれ以上動かなくなるまで握り込み、その時のハンドルバーとブレーキレバーの間隔が3~4cmほどになるように調整します。
ブレーキの「遊び」の調整は基本的にアジャスタボルトを回すだけですが、次の章では、アジャスタボルトだけでは調整が間に合わなかった場合についてお話しします。
ブレーキワイヤーを固定しなおして「遊び」を調整する方法
アジャスタボルトを回す方法で「遊び」を調整する際に、アジャスタボルトを回しただけでは調整がきかない場合があります。
それを解決するには、ブレーキワイヤーをブレーキ本体に固定しなおす必要があります。
始めに、ブレーキ本体のアジャスタボルトを最後まで締め込み、アジャスタボルトを初期位置に戻します。
ブレーキワイヤーは、六角ボルトまたは六角ナットで固定されていますので、それを緩めます。
固定ボルトを緩めたら、ブレーキシューとリムのすき間が適切になるように、ブレーキの左右アームを片手でつまむようにしてすき間を保持し、その状態でブレーキワイヤーを下向きに引っぱり、ワイヤーのたるみを取ります。
そして、片手で左右アームは保持したまま、ブレーキワイヤーの固定ボルトを締め、ブレーキワイヤーを固定します。
最後に、アジャスタボルトでブレーキシューとリムのすき間を微調整して作業完了です。
なお、アジャスタボルトのみで調整がきかない場合は、ブレーキシューの磨耗が考えられます。
もし、ブレーキシューの溝が無くなっていた、もしくは、ブレーキシューに偏磨耗が見られる場合は、ブレーキシューの交換をしましょう。
作業方法の説明が終わったところで、次の章では、自転車のブレーキ調整をする際の注意点についてお話しします。
これだけは気をつけよう!自転車のブレーキ調整の注意点
この章では、ブレーキの遊び調整の際に注意すべきことをお話しします。
まず取り上げるのは、ブレーキのワイヤーを固定しなおす際に、固定ボルトの締め付け不足が原因でブレーキをかけようとブレーキレバーを握ったとたんに、ブレーキワイヤーが外れるといったケースです。
そうならないために、走り出す前にブレーキレバーを何度か強めに握り、ブレーキ本体とブレーキワイヤーがしっかり固定されているかチェックしましょう。
次に、ブレーキシューが磨耗しているケースです。
先に述べたように、ブレーキシューの溝が無いものや、著しい偏磨耗が見られるものは交換しなければなりません。
そのまま使い続けると、ブレーキの効きが悪いだけでなく、リムを破損する危険性があります。
そして、最後にブレーキワイヤーが正しくセットされていないケースです。
ブレーキワイヤー末端の金属部分がブレーキレバーにしっかりセットされているか、ブレーキケーブルがアジャスタボルトの正しい位置にセットされているか必ずチェックしましょう。
自転車のブレーキは、身の安全を守るための重要なパーツですので、これらのチェックを確実に行い、ブレーキの状態を常に把握するようにしましょう。
ブレーキはこまめにメンテナンスしよう
ブレーキの「遊び」は、安全に自転車に乗るために、必要不可欠です。
しかし、ブレーキの「遊び」は、ブレーキシューの磨耗によっても大きくなります。
そのため、最後の章でも述べたように、ブレーキの状態を常に把握し、こまめに「遊び」の大きさを調整してください。