イギリスの自転車パーツブランドの「ファブリック」は、シンプルなデザインを基調としながらも革新的な物作りで、近年急成長を遂げています。
中でも主力はサドルですが、運動性能の高さと、人間工学に基づく快適性の両立で評価が高くなっています。
今回はそんなファブリックのサドルをご紹介します。
ファブリックのサドルには穴あきモデルが一つもない!
現在ロードバイクのサドルは「人間工学」という考え方から、穴あきや溝が彫ってあるものが主流になっています。
例を挙げると、これまでかたくなに穴あきサドルを作らないことが話題になっていた、世界的ブランドの「フィジーク」ですら、ここにきて穴あきサドルを発表しました。
特に男性に見られるサイクリストとEDの関係については、ハッキリとした因果関係は証明されていませんが、多くの論文が発表されているほど問題視されています。
そのこともあり、股間への圧迫を軽減し、動脈閉鎖などを起こさせずスムーズに血流を確保するという、人間工学に基づく穴あきサドルが増えています。
ところが、ファブリックは人間工学を強く意識しているにも関わらず、穴あき形状のサドルはありません。
理由については後述しますが、穴あきサドルは座面の面積が狭くなる分、他の箇所に圧力が掛かり、股間以外が痛くなるという評価をする人もいます。
また、レーシングパンツやズボンが引っ掛かるので、擦れて痛いという経験をしている方もいます。
そのため、穴あきサドルは避けたいと思っている方には、まずファブリックをおすすめしたいところです。
ファブリックのサドルは股間の圧迫軽減の評価が高い
穴あきサドルは前項でお伝えしたように、好みが分かれるサドルでもあります。
また、全体的な傾向としては、くり抜きますので、座面だけではなくベースまで貫通させる必要があります。
そうなるとベースの強度が若干落ちますので、座面を硬くするか分厚くして強度を出す必要があります。
技術が向上しているので全てとは言いませんが、穴あきサドルに座面が硬いものが目立つのはそういった事情もあります。
穴が開いていないサドルは股間の圧迫が懸念されますが、その点をファブリックは溝や独自の素材でカバーしています。
これはファブリックのサドルのコンセプトでもありますが、お尻に触れた際の感触とフィット感が抜群で、ユーザーさんからのインプレ評価も、股間の痛みに対するものは非常に少ないです。
座面に穴が開いていないからこそ、シンプルで洗練されたフォルムが実現できるという評価もあり、正に技術力に裏打ちされたデザインのよさであることが分かります。
ファブリックの中核サドル「Scoop(スクープ)」の評価
ファブリックのサドルを語る上で、まず最初に取り上げなくてはならないのは、中核を担う【Scoop(スクープ)】です。
スクープはとにかく「シンプル」をモットーとするサドルです。
カバー、ベース、レールの3つのパーツの組みわせのみで構成されており、無駄な材料は一切省いてあります。
形状も3種類ありますが、複雑で幾何学的な形ではなく、乗車位置や姿勢に合わせた形状がシンプルに表現されています。
座面が水平な「FLAT(フラット)」、大きくカーブを描き丸みを帯びている「RADIUS(ラディウス)」、そしてその中間に当たる「SHALLOW(シャロー)」があります。
また、カバーの素材がツルツルとした新触感なのですが、乗ってみると滑って乗車位置がずれるようなことはないという評価がされています。
しかし、基本はツルツルしているので、食いつくような攻撃的なグリップではなく、お尻を優しく支えてくれるようなフィット感です。
ここを評価しているユーザーさんも多く、深い前傾姿勢でもレーシングパンツが引っ掛からず快適ということです。
スクープのインプレ評価
筆者は以前にファブリックのスクープで、数十キロほど試乗した経験があります。
その時、スクープのサドルの中で、フラットのエントリーモデル「ELITE(エリート)」をチョイスしましたが、1万円を切る価格にはとても見えない高級感がありました。
走った感想ですが、とにかくお尻に優しいというのが強く印象に残っています。
パッドがそれなりの厚みがあるのですが絶妙な弾力感なので、細かい振動まで上手くいなしてくれるのが分かりました。
また、ベースにしなりがあるので、お尻の位置を変えてもサドルが追従してきてくれるフィット感が心地よかったですね。
筆者はそこまで前乗りポジションではないですが、スクープは中央部分がややくぼみ、そこから先端に向かって水平に戻っていくので、股間の圧迫も軽減できる形状と思えます。
スクープを評価する時に、「200㎞、300㎞ならレーシングパンツ要らず」という言葉をよく聞きますが、そこまではどうかも距離が伸ばせるサドルであることは確かですね。
股間の痛みで悩んでいるならこのサドル
ファブリックのスクープは形状だけで股間の痛み軽減に向き合っているサドルで、前項でもお伝えしたように、軽減してくれる形状ではあります。
しかし、さすがに穴あきサドル以上の軽減は望めず、そこに対しては辛い評価があるのも確かです。
そこで開発されたと言われているのが、【LINE(ライン)】というサドルです。
スクープをべースに中央に溝を設けたのがラインで、スクープとラインを同時に試した人のインプレでは、かなりの違いを感じている人もいました。
特に深い前傾姿勢を好む人からの評価が高く、しなりが身体にフィットするのを合わせれば、かなりの前傾まで股間がサドルに当たることはないとのことでした。
ベースはスクープなので別物になっている心配はありませんし、ラインは座面幅が2タイプから選べますので、より多くのライダーに適応します。
股間、特に外陰部への圧迫は、男女で位置が違います。
特に女性は骨盤が横に広いので座面幅が狭いと坐骨が外に飛び出てしまい、股間を直接圧迫しますので、外陰部への痛みが出やすくなります。
その点でラインには142㎜という広めのサイズがありますので、女性でも対応できる可能性が高くなります。
ファブリックで究極の快適性を体感できるサドル
ファブリックはスクープで世界的に高評価を受けるメーカーの仲間入りを果たしたわけですが、その地位を不動にしたのが【CELL(セル)】です。
セルはアップライドなポジションで骨盤を安定させて、どっかりとサドルに体重を掛けるタイプの乗り方向きです。
レース志向が薄いライダーや、クロスバイクにも向くタイプです。
セルは世界的に有名なスポーツシューズと同じ工場で作られており、世界初の「エアスプリング」という技術が投入されたサドルです。
エアスプリングは乗り物では主にバスやトラックに採用されている技術で、乗り心地を重視する観光バスでは標準装備になっています。
それほどのクッション性を備えるということですが、名前の由来でもあるピラミッド型の無数の「セル」が圧力を均等に分散するので、一点集中が避けられ痛みが出にくい構造になっています。
また、シンプルなファブリックのサドルにしては珍しく、とても発色のよいカラーを採用していますので、バイクにアクセントをつけたい方にもおすすめです。
ファブリックのサドルは「縁の下の力持ち」
今回はファブリックのサドルをご紹介させて頂きました。
非常に革新的な技術がありながら、シンプルなデザインというところが、「中身で勝負!」的な熱さを感じさせるブランドです。
シンプルですからどんなフレームにも合わせやすく、強く主張してこない脇役感が筆者は気に入っています。
また、全体的にリーズナブルな価格なので、試しやすいのもありがたいところです。