自転車での雨天走行後には、ブレーキが非常に汚れます。
そのため、ブレーキ本体を取り外し、清掃を行う事になります。
清掃が終わり、ブレーキを取り付ける段階で、ブレーキワイヤーがしっかり固定されていなかったら、それが原因になり、大事故に発展します。
そうならないために、まずは、起こりうる失敗の事例を見ていきます。
そして、その失敗をしないために何をチェックするべきかをご説明します。
ブレーキワイヤーの固定ボルトは大丈夫?
ブレーキを取り付ける際に、ブレーキワイヤーをしっかりと固定する必要があります。
しかし、ブレーキワイヤーを間違えた方法で固定してしまうと、危険が伴ってしまうことがあります。
そのため、自転車のブレーキワイヤーを固定する時の失敗例をご紹介していきます。
まずは、最も起こりうる失敗である、ボルトの締め付け不足です。
ボルトの締め付け不足に気づかないまま、自転車に乗ってしまうと、赤信号で止まろうとブレーキレバーを握り込んだその時に、突然ブレーキが効かなくなってしまう事態になります。
なぜ、ブレーキレバーを握り締めた時に、ブレーキが効かなくなったのでしょうか。
それは、ブレーキワイヤーが、ブレーキレバーの動きに合わせて引っ張られた際に、引っ張られる力にブレーキワイヤーの固定力が負けて滑ってしまい、ブレーキキャリパーのアームを動かせなくなるからです。
これは、後述するブレーキのトラブル全般にも当てはまりますが、突然ブレーキのコントロールを失うと、人間は心理的に大パニックに陥り、正常な判断ができない可能性があり、大変に危険です。
自転車で走行する前には、ブレーキワイヤーの固定ボルトが確実に締め付けられているか、よく確認する必要があります。
特に、ブレーキワイヤー交換後には、ボルトの締め付けが終わった後でも、ほんの少しだけ増し締めするようにしましょう。
ブレーキワイヤーが余ってる?自転車メンテ時にそれが役立つ!
ボルトの締め付け不足の他にも、自転車のブレーキワイヤーを固定する際に起こる失敗はあります。
それは、ブレーキワイヤーを余らせずにぴったりに合わせて切ってしまうことです。
一見すると、その方がエンドキャップも要らず、無駄がなく、見た目もすっきりしていて失敗であるとは思えません。
しかし、ブレーキワイヤーに余りが無いと、いくつかの問題が生じます。
例として、ブレーキワイヤー末端がほつれた場合を考えます。
ブレーキワイヤーの末端がほつれていると、ブレーキのアウターケーブルの中に、ブレーキワイヤーが通らなくなります。
そういった場合、通常は、ほつれた末端の部分を切って再使用します。
しかし、ブレーキワイヤーに余りが無い場合は、ほつれた部分を切ってしまうと長さが足りなくなり、ブレーキワイヤーの再使用が不可能になります。
また、ブレーキワイヤーの固定ボルトが緩み、突然ブレーキワイヤーが滑ってしまう事態に陥ったとします。
その時に、ブレーキワイヤーに余りがあれば、滑っている間に固定力が回復できたり、完全に回復しないまでも、ブレーキが全く効かなくなる事態を避けられます。
以上から、ブレーキワイヤーは、少し余らせた状態で切る必要があります。
ブレーキワイヤー張りすぎ?自転車のスピードコントロールに影響!
ブレーキワイヤーに余りが必要なことはわかりましたね。
それでは、張りすぎた状態で固定するとどうでしょうか。
張りすぎも良くありません。
ブレーキの効きのコントロールが非常に難しくなり、その結果、自転車のスピードコントロールが困難になります。
なぜならば、ブレーキワイヤーを張りすぎると、リムとブレーキシューの間隔が狭まり、少しのブレーキレバーの動作で、予期しないタイミングでタイヤが完全にロックするようになるからです。
タイヤがロックするならば、ブレーキの効きが良い証拠なのではないかと、疑問に思うかもしれません。
その根拠に、ピストバイクなどでタイヤをロックしながら減速をするスキッドのような技もあり、タイヤがロックすることは、問題無さそうにも思えます。
しかし、それは前輪がしっかりとグリップしているからこそ、後輪がロックし、グリップを失った状態でも車体をコントロールできているのです。
自転車の前輪は、タイヤがグリップしているおかげで、車体を進行すべき方向に向けられます。
そのため、前輪のタイヤがグリップを失うと、自転車はコントロールを失い、確実に転倒します。
さらに、ブレーキワイヤーを張りすぎた際に問題になるのが、ブレーキレバーの操作です。
ワイヤーを張りすぎると、ブレーキレバーの動作量の問題から、ブレーキの効き始めを指の第二関節から先のみで、操作することになります。
指先のみで繊細なブレーキの操作が困難であるのは、想像に難くないでしょう。
これらから、ブレーキワイヤーの張りすぎは危険であると分かります。
自転車のブレーキワイヤー固定時は「タイコ」にご注意
今度は逆に、ブレーキワイヤーを固定する際に、ブレーキワイヤーが適当なテンションで張られておらず、ブレーキワイヤーのタイコが正しい位置にセットされない、といった失敗についてです。
ブレーキワイヤーのタイコとは、ブレーキ末端部に取り付けられた、金属のことです。
このタイコが、ブレーキレバーに引っかかっているため、ブレーキワイヤーを引っ張れます。
一方、タイコが、正しくブレーキレバーに引っかかっていないと、ブレーキレバーを操作しても、ブレーキワイヤーを引けず、ブレーキが作動しません。
なぜこのような、「タイコがブレーキレバーに正しくセットされない事態」が起こるのでしょうか。
それは、ブレーキワイヤーを固定する際に気付かない内に、ブレーキワイヤーを押し上げてしまうからです。
そして、ブレーキワイヤーが弛んだ状態になった結果、タイコがブレーキレバーに正しくセットされなくなります。
また、ブレーキのアウターケーブルが、ブレーキキャリパーのアウターケーブル受けに、正しくセットされていない時にも、同じようにブレーキワイヤーが弛んだ状態になります。
このようなトラブルは、一見すると正常にブレーキワイヤーが組み付けられたように見えるために、それに気づかずに自転車を走らせててしまうこともあり、大変危険です。
忘れがちなブレーキ開放レバーの位置とアジャスタボルトの位置チェック
ブレーキワイヤーの失敗には、他にもまだあります。
キャリパーブレーキのブレーキ開放レバーが本来の位置に無い状態でブレーキワイヤーを固定してしまう、ということです。
このようになると、固定をやり直す事態になってしまいます。
ブレーキキャリパーの開放レバーが開放の位置にある状態で、ブレーキワイヤーを固定してしまうと、ホイール脱着時に、ブレーキシューとホイールの間隔を広げられずに、不便になります。
また、ブレーキ開放レバーが中途半端な位置にある状態で、ブレーキワイヤーを固定してしまうと、ブレーキ開放レバーが本来の位置に戻った際に、突然ブレーキの操作感が変わってしまい、危険です。
そして、ブレーキ開放レバーの位置と共にありがちな失敗として、アジャスタボルトの位置が挙げられます。
キャリパーブレーキには、ブレーキのアウターケーブル受けの部分に、アジャスタボルトと呼ばれる部品があります。
このアジャスタボルトにより、ブレーキシューと、リム面の間隔の変更が可能です。
それにより、ブレーキの操作感を調整して、ブレーキを扱いやすいようにします。
通常アジャスタボルトは、ブレーキワイヤーを固定した際の微調整や、ブレーキシューが擦り減り、リム面との間隔が広まった際に、それを正す目的で使用します。
アジャスタボルトはデフォルトの位置では、ブレーキキャリパーが開いた状態になります。
そして、アジャスタボルトを回すと、徐々にブレーキキャリパーが閉じた状態になります。
それにより、リム面とブレーキシューの間隔を狭められます。
そのため、アジャスタボルトをデフォルトの状態に戻さないまま、ブレーキワイヤーを固定してしまうと、ブレーキシューが擦り減った際や、ブレーキの操作感を調整したい場合などに、調整の幅が狭くなってしまいます。
上記のことから、ブレーキワイヤーを固定する際には、ブレーキ開放レバーの位置と、アジャスタボルトの位置を確認する必要があります。
安全に自転車に乗るためのブレーキワイヤー固定時のチェックポイント
ここまで、自転車のブレーキワイヤーを固定する際に起こりうる失敗について書いてきました。
そして、この章では、これらの失敗を引き起こさないようにするため、ブレーキワイヤーを交換した際のチェック項目を挙げて、それらについてご説明します。
●チェック項目
・ブレーキレバーを強く握り締めた時問題が無いか
・ワイヤーの固定ボルトがしっかり締め付けられているか
・ブレーキレバーを操作した時にレバーが適切な範囲で動作するか
・ブレーキのアウターケーブルが正しくアウターケーブル受けにセットされているか
・アジャスタボルトの位置が適切か
・ブレーキ開放レバーの位置が適切か
・ブレーキワイヤーに適当な余りがあるか
上記が、ブレーキワイヤーを交換した際のチェックポイントです。
交換が終わったら、まず始めに、ブレーキレバーがロックするまで強く握り締めてみます。
これにより、ブレーキを操作した際に、ブレーキワイヤーが滑らないか確認します。
それと同時に、ブレーキワイヤーの固定ボルトもチェックします。
次に、ブレーキレバー操作時の動作範囲を適切にします。
この、ブレーキレバーの可動域の調整は、アジャスタボルトで行います。
ブレーキレバーを操作し、ハンドルからレバーまでの距離の半分より少し手前で、ブレーキが利き始めるように調整します。
そして、ブレーキレバーが完全にロック状態になったら、ハンドルとレバーまでの距離が、約2cmほどになるようにしてください。
レバーの可動範囲は、狭すぎても広すぎても危険ですので、適切になるように調整してください。
最後に、アジャスタボルトが極端に飛び出していないか、ブレーキ開放レバーが閉じた状態かを確認したら、チェックは完了です。
危険な目に合わないようにブレーキの異常を事前に察知すること
自転車のブレーキ調整は、さほど難しくありません。
しかし、ブレーキワイヤーの組み付けを、誤った状態のままで走行すると、重大な事故の原因になります。
初心者の方やメンテナンスに自信が無い方は、初めはスポーツ自転車ショップで、ブレーキワイヤー等のメンテナンスを頼みましょう。
ですが、ブレーキの調整やメンテナンスの知識は、安全に自転車を使用するうえで、必要不可欠です。
また、ブレーキがどういった状態が正常、または異常であるのかを、知ってください。
なぜならば、そういった知識により、ブレーキの異常を事前に察知できるからです。
実際の作業はプロに任せるとしても、自転車のブレーキのメンテナンスの知識はよく覚えておきましょう。