自転車のブレーキは動きを止める唯一の手段なので、乗り手の命を預かっている、と言っても過言ではありません。
そのため、いざという時に効かなかなければシャレになりませんので、日々のメンテナンスや消耗品の交換が不可欠です。
長い期間放置しているようであれば、今すぐにでもできる掃除だけでも、効きがよくなるかもしれません。
そこで今回はブレーキの掃除について、ポイントや注意点をお話していきます。
自転車のブレーキ掃除に「油分」は厳禁!
今回は主にスポーツバイクのお話になりますが、ママチャリでも参考になる部分がありますので、確認してください。
まず、ブレーキの掃除は車輪を外して行った方が、遥かに効果的です。
ハブブレーキであれば車輪に制動の機構が付随していますし、リムブレーキにしても、リムの清掃やブレーキシューは、車輪を外した方が効率的です。
ママチャリは素人が車輪を外すのは困難なので、一気にやるなら消耗品の交換も含めて、自転車屋さんにオーバーホールを依頼してください。
ブレーキ掃除の注意点は、まず油分を含んだ洗剤は、絶対に使わないことです。
リムブレーキはブレーキシューとリム間の摩擦によって制動が掛かりますので、油分が付着すると滑って摩擦が起こらずに、ブレーキが効かなくなります。
MTBのディスクブレーキにしても原理は同じで、特に樹脂製のパットは油が染みこんでしまうと、ほぼ使いものになりません。
あとは、むやみやたらに洗剤や水をかけるのは好ましくありません。
自転車は至る所に潤滑油(グリス)が使用されているので、あまり激しく水や洗剤がかかると流れてしまいます。
グリスは密閉された箇所に使用されており、簡単に指し直すこともできませんので、くれぐれも注意してください。
リムブレーキで掃除すべき箇所は?
それではここから、自転車のブレーキの掃除方法についてお話します。
まず、ロードバイクのキャリパーブレーキや、クロスバイクのVブレーキなどに代表される「リムブレーキ」です。
ホイールの外周でタイヤがはまる部分を「リム」といいますが、そこにゴム製の「ブレーキシュー」を左右から挟みつけるようにして回転を止める仕組みです。
そのため、掃除は本体はもちろんですが、むしろシューやリムを重点的に行います。
ブレーキシューは金属の台座の上にゴムが被せてある構造ですが、台座とゴムが一体化しているものと、ゴムだけ取り外しが可能なものがあります。
いずれも六角レンチがあれば外せますが、一体型のものは複数のリング状パーツが付属しているので、組み付ける時に順番を間違えないように、外した順番通りに置いておきましょう。
なお、ブレーキシューは掃除の前にすり減り具合を確認し、表面の溝が1㎜以下になっていたら、交換も考えてください。
自転車のブレーキシューの掃除方法
前項に引き続き、自転車のブレーキシューの掃除方法を続けます。
ブレーキシューはまず金属片や小石などの異物が挟まっていないかを確認して、刺さっているようなら取り除いてください。
また、長期間使用していると表面が摩耗してツルツルになっていたり、熱で溶けたものが再度固まって、硬くなっている部分があります。
その状態だとブレーキの効き具合が悪くなりますので、ヤスリで全体を軽くこすってください。
ヤスリがない場合は地面に軽くこすりつけるとよいですが、あまりガリガリやるとまた小石が挟まったり、無意味に削ってしまうだけなので、ほどほどにします。
そのあと、洗剤で表面を掃除します。
洗剤は「バイクウォッシュ」ような自転車用がベストですが、特にこだわる必要もなく、台所用洗剤でも大丈夫です。
ブレーキシューは、溝に細かいゴムの削れカスやホコリが溜まり目詰まりしているので、歯ブラシなどを使うときれいに落とせます。
ブレーキシューを動かす「アーム」も細かい隙間にホコリが溜まっているので、歯ブラシで掻き出すように掃除しましょう。
自転車のリムの掃除方法
自転車のリムブレーキの掃除ですが、次はリムです。
リムは地面に限りなく近い場所で仕事をしていますので、当然ながら泥汚れなどが付着しやすい場所です。
また、ブレーキシューが押し付けられるので、ゴムの削れカスが表面に付着します。
リムが汚れているとブレーキの効き具合に影響しますし、見た目にもカッコ悪いので、掃除は欠かせません。
普通の泥汚れくらいなら中性洗剤でも十分ですが、日々の掃除には、筆者も使用していますが家庭用として有名な「激落ちくん」のスポンジがおすすめです。
洗剤がいらないので、間違って油分の入ったものを使用してしまう危険性もないので安心です。
ただし、こびり付いたシューのカスや頑固な汚れは「激落ちくん」でも難しくなってきますので、その場合はりムを「研磨」します。
(包丁を研ぐのと同じ要領で、砥石を使って研磨します。)
お子さんが使う砂消しゴムなども有効な手段ではありますが、ここは工業用の砥石がおすすめです。
自転車用の工具などでも有名な、「ホーザン」が出している「K-141」という品番の砥石が、リムの研磨には最適です。
研磨がしやすいホルダー込みで2000円前後で、通販サイトで購入できます。
ただし、これはアルミやスチールなど金属製のリムの話であり、カーボン製のリムは絶対に研磨してはいけません。
自転車用ディスクブレーキの掃除方法
自転車のブレーキ掃除の話をしていますが、次はMTBなどに使用されているディスクブレーキです。
制動原理はリムブレーキと変わりませんが、パーツが異なるので説明をしておきます。
ディスクブレーキはホイールのハブに「ローター」といわれるディスクが取り付けられており、車輪の回転と共にローターも回転する仕組みです。
そのローターを樹脂や金属製の「パッド」で挟み付けて、回転を止めます。
また、パッドを動かす本体は「キャリパー」で、これも掃除をするターゲットになります。
ディスクブレーキはパッドが削れて細かい粉末上になり、キャリパーやローターに付着します。
「ブレーキダスト」などと呼ばれますが、これが中々頑固なので専用の自転車クリーナーを使った方が賢明です。
特にキャリパーは細かい部分に汚れが入り込みやすく、油圧式の場合はオイルに汚れが混じるとピストンが動作不良を起こす可能性もありますので、小まめな掃除が必要です。
また、ローターはとても薄いので、掃除中に曲げたりしてしまわないように注意してください。
自転車のブレーキには「注油」も不可欠
自転車のブレーキ掃除についてお話してきましたが、掃除と同様にメンテナンスとして重要なのは注油です。
動きをスムーズにしなくてはならないレバー、ワイヤー、キャリパーのアームが稼働する部分などに注油をします。
注油といえばチェーンが代表的であり、差している方も多いかと思いますので、同じオイルで構いません。
ただし、しつこいようですが、ブレーキシューやリムに付着させてはいけないので、吹き付けるスプレータイプではなく、一滴づつ注入できるタイプがよいでしょう。
例えば、キャリパーはアーム可動部分に一滴たらしてから、レバーを何回か握ってアームを動かして浸透させます。
そこで染み出た余計な油は、たれないように気を付けて、ウエスで拭き取ります。
また、ワイヤーは金属製のインナーケーブルに注油しますので、本体やレバーの接合部分のアウターを少しずらして、インナーに油を差します。
いずれにしても、ブレーキへの注油は少量、と心掛けておいてください。
自転車のブレーキ掃除は簡単メンテナンス
今回は自転車のブレーキの掃除についてお話しました。
ブレーキはいざという時に掛からないでは済まされませんので、メンテナンスありきなことは言うまでもありません。
中でも掃除は、特殊な工具や技術は必要としませんので、今すぐにでも行える一番身近なメンテナンスです。
掃除で制動力がよみがえる可能性も高いので、ぜひこれを機に行ってみてください。