自転車のメンテナンスの中でも、非常に重要であるのが、ブレーキです。
ブレーキは、酷使される部品であるために、メンテナンスの頻度が高い部品です。
ブレーキのメンテナンスの基本は、ブレーキワイヤーの調整によって行いますが、その作業は決して難しくはありません。
いくつかのポイントに気をつければ、誰でも問題なく作業ができます。
今回の記事では、ブレーキワイヤー調整の方法や、気をつける点について、ご説明します。
自転車のブレーキの調整をちゃんとやってますか?
自転車を安全に乗るうえで、ブレーキワイヤー調整はとても重要です。
自転車のブレーキワイヤー調整は、六角レンチがあればすぐに作業が可能なため、初心者の方でも簡単にメンテナンスができます。
しかし、ブレーキは命に関わる重要なパーツです。
メンテナンスの作業自体は簡単でも、おざなりに作業すれば重大な事故の原因になります。
たとえば、もし自転車で走行中に、ブレーキワイヤーの固定ボルトの締めつけの不備が原因で、ブレーキが効かなくなってしまったら大変危険です。
それに、ブレーキがいきなり効かなくなった場合は、心理的にパニック状態に陥り、正常な判断が下せなくなります。
そのため、冷静に考えればわかるような、例えば足を着いて止めるといった対処ができない可能性があります。
そして、ブレーキの整備不良が原因で歩行者に怪我をさせてしまったら、取返しのつかない事態になります。
このように、ブレーキのメンテナンスのミスが原因で引き起こされる事故は、重大な結果を招いてしまいます。
ブレーキワイヤー調整が鍵!ブレーキをメンテナンスしよう!
ブレーキワイヤー調整の具体的な手順をご説明します。
作業の前に、ブレーキキャリパーのアジャスタボルトを、完全に戻した状態にしてください。
それから、ブレーキワイヤーの固定ボルトを緩めます。
この時に、ブレーキワイヤーのボルトは完全に緩めるのではなく、ボルトを半回転させればブレーキワイヤーが軽く固定できる、程度に締めるようにしてください。
そして、ここでブレーキシューとリム面の間隔を決めます。
ブレーキの両側のアームを下側から包み込むようにして持ち、リム面とブレーキシューの間隔が2mmより少し広い程度になるように調整してください。
少し広めに合わせる理由は、後述するトーインを設定するためです。
間隔が決まったら、片手でそれを保持しつつ、もう片方の手でボルトを締めます。
ボルトを締め、ブレーキワイヤーを固定する際には、
・ブレーキワイヤーが適当に張られていること
・アウターケーブルがケーブル受けにきちんと収まっていること
・ブレーキキャリパーのブレーキ解放レバーが正しい位置にあること
これらを確認してください。
続いて、ブレーキシューにトーインをつけます。
ブレーキシューの固定ボルトを軽く緩め、ブレーキシューの先を自転車の進行方向に対して1mmほど内側に向け、その状態で固定します。
なお、トーインの効果については、後の章にてご解説します。
最後に、アジャストボルトを回して、ブレーキシューとリム面の間隔を微調整します。
作業が完了したら、ブレーキに問題が無いかチェックします。
ブレーキレバーを握り締めた時、各部に異常が無いことや、ブレーキレバーとハンドルの間が2cmほどになっていれば調整は完了です。
自転車のブレーキワイヤー調整は適度な力で張るようにしよう
ブレーキワイヤー調整を行うにあたって、不具合が起きないように気をつけるべきことがあります。
それは、ブレーキワイヤーを引っ張り過ぎた状態で固定しないことです。
ブレーキワイヤーを張り過ぎると、ブレーキレバーがなめらかに動かなくなり、ブレーキの操作に必要以上に力が必要になります。
すると、自転車で走っていて、何度もブレーキをかけ続ける内に腕の疲労により握力が弱くなり、だんだんブレーキ操作が難しくなります。
また、ブレーキワイヤーに余分な力がかかるために、ブレーキワイヤーの寿命も短くなってしまいます。
そうならないためには、ブレーキワイヤーを適度な力で張るように調整する必要があります。
そのブレーキワイヤーの張りの力加減ですが、ブレーキワイヤーを下向きに、グッと一回引っ張るだけで十分です。
無理に引っ張りながら、ブレーキワイヤーを固定する必要はありません。
ブレーキレバーを握って手を放した時に、ブレーキレバーがパッと元の位置に戻れば、ブレーキワイヤーが適度に張られている証拠です。
自転車のブレーキワイヤーの長さは大丈夫?少し余らせるようにしよう
新品のブレーキワイヤーに交換する際に、ブレーキワイヤーを必要な長さに切って使用しますが、ブレーキワイヤーの長さは必ず、固定ボルトから5cmほど残して切断しましょう。
なぜならば、ブレーキワイヤーの長さに余りが無い場合、ブレーキのメンテナンス性が悪くなるからです。
具体的な例として、ブレーキワイヤーをいったん取り外し、再び取りつける場合を想定します。
ブレーキワイヤーに余りが無い場合、ブレーキワイヤーの末端をボルトで固定することになり、ブレーキワイヤーの張りの調整が非常に難しくなります。
また、ブレーキワイヤーの末端がバラけていると、固定する力が正しく発揮できません。
それだけでなく、ブレーキワイヤーをアウターケーブルの中を通す際に、ブレーキワイヤーが引っかかって中を通らなくなります。
通常、ブレーキワイヤーの末端がバラけた場合は、その部分を切断することにより、末端を整えます。
しかし、ブレーキワイヤーに余りが無ければ切断することができないので、ブレーキワイヤーを新調するしかありません。
これらのことから、ブレーキワイヤーを余らせておく必要がわかります。
さらに、ブレーキワイヤー調整として余らせておいた場合には、自転車で走行中に固定ボルトが緩んでしまっても、完全にブレーキの操作を失わずに済みます。
なぜなら、ブレーキワイヤーが固定ボルトと擦れる間に固定力が回復するか、その摩擦によってブレーキを動かせるからです。
コントロール性が良くなるようにブレーキワイヤー調整をしよう
ブレーキワイヤー調整の手順でも書いたように、ブレーキワイヤーを固定する際には、リム面とブレーキシューの間隔が2mmほどになるように調整しましょう。
一見すると、ブレーキシューとリム面の間隔が狭い方が素早くブレーキが効き、ブレーキシューを押しつける力も強いために、それがよさそうに思えます。
しかし、リム面とブレーキシューの間隔が狭いと、ブレーキレバーを少し操作しただけでも簡単に車輪がロックしてしまい、非常に扱いにくいブレーキになってしまいます。
車輪がロックしている状態では、タイヤがグリップしないためにブレーキが効いておらず、制動距離が長くなり危険です。
さらに自転車は、前輪で車体をコントロールしているので、前輪がロックしてグリップを失うと車体のコントロールを失います。
また、リム面とブレーキシューの間隔が狭いと、ブレーキレバーの操作量が少ないために、指先だけでブレーキをコントロールしなければなりません。
つまり、扱いにくいブレーキを操作の加減の難しい指先でコントロールすることになり、これは非常に危険であるとわかります。
上記の理由から、ブレーキワイヤーの調整時には、「リム面とブレーキシューには適当な間隔が取れているか」を必ず見るようにしましょう。
自転車のブレーキシューとブレーキワイヤーの小技
この章では、自転車のブレーキワイヤー調整時に行う、トーインの調整とその効果について、そしてブレーキをより快適に使用するための小技についてご説明します。
まずは、トーインの調整とその効果について話を進めます。
ブレーキワイヤー調整の手順でも書いたように、トーインとは、進行方向に対してブレーキシューの先端を内側に向けた状態で固定することです。
トーインを設定すると、ブレーキの音鳴りが改善しやすく、また、ブレーキの操作感が向上して、よりスムーズなスピードのコントロールが可能になります。
トーインの調整の手順ですが、ブレーキシューの固定ボルトを緩め、ブレーキシューの先端を1mmほど内側に向けた状態にしてその状態で固定すれば完了です。
ただし、トーインの調整は、1mm以下に収まるようにしてください。
なぜならば、トーインの角度をつけ過ぎると、ブレーキシューに片摩耗が生じてしまうからです。
トーインの設定により、ブレーキの操作感が向上するように、ブレーキを少しの調整だけで効果が体感できる技は他にもあります。
ブレーキワイヤーをアウターケーブルに通す前に、ブレーキワイヤーにグリスを薄く塗布します。
すると、それだけでもブレーキレバーの動きが滑らかになります。
また、アウターケーブル内に、潤滑油をスプレーしておくと、さらなる効果が期待できます。
もうひとつの技として、アウターケーブルの長さの見直しが挙げられます。
新品で買った自転車の場合は、ある程度のポジションの変更にも対応できるように、アウターケーブルが長めになっています。
ポジションが定まってきたならば、それに合わせてアウターケーブル取り回しや、長さを調整しましょう。
そうすると、見た目がスッキリするだけでなく、ブレーキの引きが軽くなるなどの性能面でプラスの効果があります。
これらの変更は手軽に行えるだけでなく、体感できる効果が大きいので、ブレーキの操作感を改善したい方はぜひお試しください。
快適な走りのためにブレーキのメンテナンスをしよう
繰り返しになりますが、自転車のブレーキのメンテナンスはさほど難しくありません。
しかし、しっかりメンテナンスをしておかないと重大な事故に繋がります。
そして、ブレーキのメンテナンスは、必要な時が必ず来ます。
その時に、自分で正しくメンテナンスができれば、快適で安全に自転車に乗れるようになります。
最後に、他の自転車パーツにも言えますが、自転車のブレーキの様子を日ごろから気にかけるようにしましょう。