ロードバイクの場合、ブレーキレバーはハンドルの一部と言っても間違いないでしょう。
それ故に、ブレーキレバーの取り付け角度は、ロードバイクの操舵性や乗車姿勢の点で、非常に重要な意味を持っています。
そこで、この記事では、ロードバイクのブレーキレバーの基本的な取り付け角度と、その角度の意味についてお話しします。
ロードバイクのブレーキレバーの基本の角度
始めに、ロードバイクのブレーキレバーを、正面から見た時の横方向の角度についてお話しします。
ロードバイクのブレーキレバーの角度は、基本的に、下ハンドルに対して、真っ直ぐになるように設定します。
下ハンドルというのは、ドロップハンドルの下側の部分のことで、ドロップハンドルを横から見た時に、ひらがなの「つ」の下側の短い方の直線部分にあたる場所です。
下ハンドルは一部のハンドルを除いて、自転車の進行方向に対し平行に設計されています。
分かりやすく言えば、ハンドルのパイプが手前に向かって真っ直ぐに伸びています。
つまり、ロードバイクのブレーキレバーは、この下ハンドルの、真っ直ぐなハンドルパイプを、そのまま延長するイメージで取り付ければ、間違いないわけです。
ブレーキレバーの取り付け時には、ドロップハンドルを真上から見て、下ハンドルのパイプのセンターと、ブレーキレバーのブラケット部のセンターが一致するように、ブレーキレバーの角度を合わせてください。
基本からズラした角度にしてみる!ブレーキレバーを外向きに!
ロードバイクのブレーキレバーの基本の角度は、下ハンドルに対して真っ直ぐであると先の章でお話ししました。
ここで、その基本的な角度の設定から、ズラした場合について考えます。
まずは、ブレーキレバーを外向きにした場合です。
ブレーキレバーが外向きであると、下ハンドルのカーブ部を握った際に、ブレーキレバーが近くなります。
下ハンドルのカーブとは、先ほどの例えと同じく、ひらがなの「つ」で考えて「つ」のカーブの下半分の部分のことです。
このポジションは、高速走行時や、力を込めて思いっきりペダルを踏むスプリント時などに使用します。
つまり、ブレーキレバーを外向きにすると、下ハンドルを持つような高速走行時に、ブレーキの操作がしやすくなり合理的であると言えます。
その反面、ブレーキレバーのブラケットを持つ場合に、不都合が生じます。
それは、腕の角度が内向きになってしまうという点です。
腕が内向きになってしまうと、不自然な角度でロードバイクを操作することになり、疲れやすく乗り心地が悪くなります。
ブレーキレバーを外向きにする場合は、下ハンドルのセンターに対して、ブラケットのセンターのズレの値が、5度以内になるようにしましょう。
ブレーキレバーの角度でパワーが上がる?
今度の章では逆に、ブレーキレバーを内向きにした場合について考えます。
ブレーキレバーの角度を内向きにすると、ブラケットを握った時に力がかけやすくなります。
詳しくお話しすると、ハンドルを自分の身体に向かって、引き付ける力を発揮しやすくなります。
イメージとして、床に置いてある重いダンボール箱を持ち上げる時の、肘の位置について考えます。
ダンボール箱を持ち上げる時に、肘が真っ直ぐな状態で持ち上げる場合と、肘が外側に向かっている状態では、どちらがダンボール箱を持ち上げやすいでしょうか。
もちろん、後者の方が持ち上げやすくなります。
同じように、ロードバイクのブレーキレバーで考えた時、ブレーキレバーが下ハンドルに対して真っ直ぐな状態と、ブレーキレバーが下ハンドル対して内向きになっている場合では、内向きの方が力を発揮しやすいと分かります。
なぜなら、腕の向きはブレーキレバーのセンターに対して一致するため、ブレーキレバーが内向きの場合は、肘は外側に向かっているからです。
ダンボール箱の例から、肘が外側を向いている場合の方が力を発揮しやすいと言えるため、よってブレーキレバーを内向きにすると、力を発揮しやすいと分かります。
ただし、肘が外側に向かっている状態は、腕立て伏せで例えると肘が中途半端に曲がった一番辛い姿勢です。
ですので、ブレーキレバーをあまり極端に内向けにすることは避けましょう。
ロードバイクのブレーキレバーの角度合わせ縦軸編
続いてこの章では、ロードバイクのブレーキレバーの、垂直方向の角度つまりは上下方向の位置についてお話しします。
ロードバイクのブレーキレバーは、ブラケットがほぼ水平になるように取り付けるのが基本です。
ブレーキの上下の角度についても、極端な角度で取り付けることはせず、ほどよい角度になるように調整しましょう。
ほどよい角度にするための目安について、再びひらがなの「つ」でご説明します。
ブレーキレバーを下向きの角度にする際は、「つ」で言うところのカーブの頂点よりも上に、ブレーキレバーのブラケットの下側があるようにしましょう。
また、上向きにする際は、ブレーキレバーのブラケットの上部が、「つ」の上カーブの始点よりも手前側にならないように、つまり「つ」の上の直線部分に乗らないくらいになるようにしましょう。
なお、ブレーキレバーの角度は、ハンドルの取り付け角度やハンドルの形によって、大きく左右されます。
もしも、今使っているハンドルでブレーキレバーの角度が自分に合わないと場合は、ハンドルの交換を検討してもよいでしょう。
プロでも試行錯誤するロードバイクのポジション問題
ここまでの章にて、ロードバイクのブレーキレバーの基本的な角度の設定についてお話ししました。
ここでちょっとブレイクとして、最近話題になったあるプロ選手の、変則的なブレーキレバーの角度のセッティングについてお話しします。
それは、ヨーロッパの自転車レースにて活動しているプロ自転車チームの、ルームポット・ネデランセロテリに所属する、ヤンウィレム・ファンシップ選手のロードバイクです。
ファンシップ選手のロードバイクを正面からみると、ブレーキレバーの左右が完全に「ハ」の字型になっています。
それは、ファンシップ選手が、日東というメーカーのハンドル上部が狭く、下向きに広がった形をした、ランドナー用ハンドルを使用しているからです。
ファンシップ選手は、なぜこのようなパーツを選択したのでしょうか。
それは、ファンシップ選手がトラック競技出身であることが関わっています。
トラック競技では、競技中には下ハンドルしか使用しません。
そのため、トラック競技で鍛えられたファンシップ選手は、ロードレースに出場するにしても、下ハンドルを使用する走りをすることが得意であるはずです。
しかし、ロードバイクの下ハンドルは、瞬発的な加速時や空気抵抗を少なくするために使用する、疲れるポジションになっており、長時間の使用には向いていません。
ここで、ランドナー用のハンドルについて考えます。
ランドナー用のハンドルは、下ハンドルでもリラックスできるように設計されています。
つまり、ファンシップ選手は慣れている下ハンドルのポジションを、長時間使い続けられるように、ランドナー用のハンドルを使用していると分かります。
そして、ブレーキレバーが「ハ」の字型の角度に設定されている理由は、下ハンドルでもブレーキレバーを使いやすくするためです。
また、ブレーキレバーが「ハ」の字型であるため、ブレーキレバーのブラケットを持った際には、空気抵抗が少ないポジションが実現できるようになります。
プロ選手のこの事例から、ブレーキレバーの角度のセッティングに絶対的な正解はなく、自分の体に合わせることがベストであると言えます。
手っ取り早くブレーキレバーの角度を合わせるなら「フィッティング」!
ロードバイクのブレーキレバーの角度は、ロードバイクの乗車姿勢、いわゆる「ポジション」に大きく関わっています。
ですが、ポジションを出す作業は大変に難しく、ロードバイクに乗る人であれば、誰でもぶつかる難問でもあります。
ポジションは、個人差があるだけでなく、その日の体調や乗り方によっても変わって来ます。
そのため、前章で見たように、プロ選手でも試行錯誤を繰り返した結果、変則的なセッティングになったり、同じ選手でも、シーズンが違えばポジションがガラリと変わったりします。
結局のところ、ロードバイクのポジション合わせは、海図のない海を自分の感覚と船頭の直感のみに頼って進んで行くようなものなのです。
しかし、その大海は全くの暗闇ではなく、進むべき方角の導き手となる「北極星」が存在します。
それは、スポーツ自転車ショップで受ける「フィッティング」です。
この「フィッティング」は、自分の体の採寸や柔軟性、筋量などの様々な数値を元にして、自分の体に最適なポジションを出すものです。
基本的には有償であり、簡易的なものでは千円から、本格的なもので1万円ほどのものまであります。
特におすすめしたいのが、5千円ほどの価格で受けられるフィッティングです。
このクラスでは、採寸などの各数値を、フィッティング専用のソフトウェアで処理するため、極めて信頼性の高い結果が得られます。
また、フィッティングの結果が、数値として残るため、そこからポジションを変更しても、フィッティングを実施した店舗であれば、また元のポジションを再現することが可能です。
つまり、ロードバイクのブレーキレバー等のポジションを手っ取り早く最適化したいなら、フィッティングを受けることが一番確実です。
ブレーキレバーの角度から始まる終わりなきポジション合わせの旅
最後の章にあったように、フィッティングを受けることが、ブレーキレバーの角度を自分に合わせる最速の方法であると結論できます。
しかし、フィッティングで得られるポジションは、その時に最適であると「計算された」ものに過ぎません。
航海で例えるならば、北極星は進むべき方向を示すだけで、あとは自分の力で漕いで行かなければなりません。
それを苦痛と思わず、試行錯誤の旅を楽しんで行きましょう。