現在のロードバイク界において欠かせない存在になっているのが、「エアロロード」です。
空力性能を重視し、いかに速く走れるかで勝負しているモデルです。
その中でもパイオニア的な存在がスペシャライズドの「ヴェンジ」であり、プロレースにおいてこれまで数々の勝利を収めています。
現在も高い評価を受けており、2017年もツール・ド・フランスで複数のステージ優勝を飾っています。
今回はそんなヴェンジについてお話します。
スペシャライズド「ヴェンジ」がツール・ド・フランスで大活躍!
2017年のツール・ド・フランスにおいて、個人の区間勝利としては最多の5ステージを制したドイツのマルセル・キッテル選手が使用していたのが【S-Works Venge(ヴェンジ) ViAS DISC】でした。
グランツール史上初のディスクブレーキ搭載車のステージ優勝でも話題になりましたが、ヴェンジの評価がさらに上昇したとも聞いています。
そして、ヴェンジの2018年のラインナップは、キッテル選手が使用したモデルとほぼ同等の「S-Works Venge ViAS DISC Di2」です。
そして、ミドルグレードに「Venge ViAS Expert Disc」・「Venge Elite」と続きます。
2011年にヴェンジがデビューした当初はまだエアロロードという言葉が一般的ではありませんでしたので、スペシャライズドは牽引役と言われています。
当初のものを第一世代と呼ぶのであれば、2016年末にモデルチェンジされた「ViAS」搭載の上位モデルが第二世代に当たります。
しかし、第一世代の生き残りである「Venge Elite」も、今もなお高い評価を受け続けています。
スペシャライズド「Venge Elite」の評価
スペシャライズドは複数のプロチームに機材を提供するメーカーだけあり、レース仕様のバイクが多くなっています。
その中でも空力性能に特化したヴェンジは、究極のレースマシーンである事は確かです。
エアロロードはスピードに特化している分、パワーロスがないように剛性が高く硬いのが特徴です。
しかし、第一世代の生き残りである「Venge Elite」の試乗インプレの評価では、意外なほどにエアロ特有の硬さを感じるものが少ない印象です。
また、乗り心地に付いても「良い」という評価まではさすがに少ないものの、「悪い」という評価も少ないです。
さすがに、キッテル選手が乗っているハイエンドモデルとはグレードが違いますし、もっとエアロ効果を重視する作りですから、これがヴェンジ全体の評価というわけではありません。
しかし、Eliteも基本コンセプトやジオメトリは、上位モデルを継承しています。
そのため、レースで勝てるポテンシャルがありながら、扱いやすさや乗り心地が犠牲になるのを最小限にとどめ、ホビーライダーにも適合するように仕上げているのです。
ヴェンジよりもさらにレース色が強いと評価される「ターマック」
2017年のツール・ド・フランスにおいてキッテル選手は、山岳ステージでは「ターマック」を使用していました。
ターマックはスペシャライズドの中では最もレース仕様なロードバイクで、しかも最軽量を謳うライバル「トレック」の「エモンダ」に匹敵する軽量ぶりです。
しかも、ヴェンジよりも硬くパワーロスがないという評価なので、山岳ステージに向くのは確かです。
世界選手権の個人ロードを3連覇中、2016年にはワールドツアーの総合チャンピオンに輝いた、ペテル・サガン選手の2017年シーズンの愛機の一台もターマックでした。
このように、トップ選手が乗るターマックは、下位グレードに至るまでレース目的で製造されています。
それに比べると、前項でお話した「Venge Elite」は扱いやすいという評価が示すように、エアロでありながらオールラウンドな性能があると言えます。
さすがに、プロレベルで山登りに適しているとまでは言えませんが、重量は上位モデルよりも軽いくらいですから、ホビーライダーであれば山もこなせます。
スペシャライズド「Venge・Elite」のスペック
それでは、スペシャライズドの「Venge・Elite」2018年モデルのスペックを確認してみましょう。
価格は313,200円、重量は未公表ですが、ショップの実測値で56サイズ8㎏台前半と報告されています。
フレーム素材は「FACT 10r」で、ヴェンジの上位グレードよりも僅かにダウンしているだけです。
グレードダウンしているとは言え、これが剛性とのバランスにより、乗り心地を向上させている要因になっています。
この価格帯のエアロロードとしては、シマノ・105のフルコンポは標準的ですが、性能を引き出すのに何の問題もありません。
特筆すべきはホイールとタイヤで、ここをグレードダウンしないのが「レース屋」と評価を受けるスペシャライズドらしいところです。
回転力に定評のある「DTスイス」の軽量リムホイールに、S-Worksのレーシングタイヤは走りの軽さが十分に感じられる組み合わせと言えます。
そして、サドルは単品でも大変に人気の高い、「Power(パワー)」シリーズです。
深い前傾姿勢でも身体に優しく、長距離を走ることができるという評価のあるサドルですので、オールラウンドに対応できるEliteには最適です。
ヴェンジの中では「ViAS Expert DISC」と「Elite」が現実味のある選択
2017年シーズンでキッテル選手が使用した「S-Works」モデルのヴェンジは、全てが最高級の評価であるため、価格(100万円以上)も含めて市場では例外的な一台となります。
そのため、実際にホビーライダーが検討できるのは、ここまでご紹介してきた「Elite」か、その一つ上のグレードである「ViAS Expert DISC」になります。
ViAS Expert DISCはS-Worksモデルの廉価版という位置付けなので、コンセプトは完全プロ仕様と言ってよいでしょう。
したがって、一般的なエアロロード同様に空力性能に特化しており、剛性が高くパワーロスの少ない、抜群の加速力が売りのモデルです。
完成車で50万円以上しますので、もちろんそれなりの高級パーツの集まりでもありますが、何よりも一番のセールスポイントはフレームです。
S-Worksモデルと全く同じフレームですので、キッテルやサガンがツールを戦ったフレームいうことになるわけです。
自転車競技以外では、トッププロが使用している機体を一般人が購入できることは極めて少ないですからね。
これはスペシャライズドに限ったことではありませんが、それが実現できるのがロードバイクの大きなメリットでもあります。
スペシャライズドはアルミフレームのエアロロードも評価が高い
ここまでスペシャライズドのエアロロード、ヴェンジの話をしてきました。
上位モデルはエアロロードのパイオニア的存在である意地を感じさせる、凄まじいまでの空力性能へのこだわりです。
ヴェンジの中では最下級モデルの「Elite」にしても、「乗りやすさ」という相反する概念を取り入れた工夫には頭が下がります。
ただし、さすがにカーボンのエアロロードは価格面においては、ハードルが高いと言わざるを得ません。
そんな中、スペシャライズドにはもう一つエアロ形状のロードバイクがあります。
しかも、20万円以下で手に入りますので、グッと親近感がわいてきます。
【Allez(アレー) DSW Sprint Comp】
アルミフレームのアレーは、スペシャライズドの創業当初からラインナップされていた、最も歴史のあるモデルです。
アルミですから、空力性能を高めると当然のごとく剛性が高くなり、硬くなります。
しかし、独自のアルミ成形技術である「DSW(ダルージオ・スマート・ウェルド)」が上手く剛性をコントロールしており、硬すぎないアルミエアロロードを実現しています。
また、このクラスでは採用が中々難しい、Venge Eliteと同じホイールが採用されていますので、コスパが高く評価されています。
ロードバイク最初の一台としても手の届く価格だと思いますので、十分に検討する価値があると言えます。
まずは「Elite」から検討して頂きたい
今回はスペシャライズドのエアロロード「ヴェンジ」の話をしました。
プロのレースで結果を出し続けているモデルだけあり、上位グレードには近寄りがたい雰囲気さえあります。
しかし、「Elite」には扱いやすさがあり、乗り心地も加味されているので、幅広い用途に対応する万能さが高い評価を受けています。
ホビークラスならレースでも十分に戦えますので、レース志向の強い方にも満足していただけるはずです。