世界中のスポーツバイクの多くの完成車には、日本が世界に誇る自転車パーツメーカー「シマノ」製のコンポが採用されています。
ところが、スペシャライズドは、クランクがシマノ製でない場合が多いようです。
コストダウンのためということなら珍しくないですが、スペシャライズドは独自のボトムブラケットの規格「OSBB」が関係しているようです。
そこで今回はOSBBとシマノクランクの関係について検証してみます。
BBの変遷の歴史
ボトムブラケット(BB)はクランクをフレームに支持するためのパーツで、昔から様々な規格が乱立してきました。
クランク周りは動力の要でパワーロスを避けたいので、剛性を高くするために試行錯誤が繰り返されています。
現在はクランクのシャフト(回転軸)はクランクに付属しているものが大半ですが、以前はBBに付属していました。
クランクシャフトは直径24㎜のものが主流でしたが、剛性の弱さを指摘したアメリカの「キャノンデール」が30㎜径にしたのが規格乱立の始まりと言われています。
また、従来のBBはフレーム側の穴にねじ切りがしてあり、そこにねじ込むという取り付け方法でした。
しかし、キャノンデールはねじ切りではなく、穴に直接ベアリング(軸受け)を圧入する方式にしました。
これによってねじ切りをするコストが省けるメリットがあるフレームメーカーが賛同して、直接圧入方式が一大ブームとなりました。
しかし、世界一の自転車パーツメーカー「シマノ」はこれに賛同せず、従来の24㎜シャフト、ねじ切り方式路線を貫いたため、いくつかのメーカーはシマノ仕様に戻すこともしています。
それが余計にBBの乱立に拍車をかけ、今では一体いくつの規格があるのか分からないような状態です。
スペシャライズドのOSBBもそんな乱立する規格の一つであり、キャノンデールと同じ規格なので、そのままではシマノクランクが使用できません。
スペシャライズドでシマノクランクの採用率が低いのはコストの問題?
クランクセットはコンポの中でも価格が高いので、コストダウンの対象にされることがあります。
そのため、ブレーキやディレイラーがシマノ製であっても、クランクだけが別のメーカー製ということがあります。
特にコストを掛けられないエントリーグレードであれば、珍しいことではありません。
スペシャライズドにも少なからず下位グレードの完成車にはその兆候が見られますが、統一されているわけではなく、シマノクランクを採用した10万円以下の完成車もあります。
シマノクランクを使用しているということは、独自の規格であるボトムブラケット「OSBB」は使用していないわけです。
ということは、スペシャライズドがOSBBにこだわりを見せているのは、コストダウンの目的意識は低いはずです。
OSBBについてはスペシャライズドが多くを語っていないのであくまでも推測ですが、オリジナルのクランクも開発されていますので、それに合わせて剛性や相性を考えてのことでしょう。
スペシャライズドのOSBBとは
冒頭でも触れましたが、スペシャライズドのOSBBはフレームの穴に直接圧入するタイプで、シャフト径30㎜のタイプです。
これは、BBの新規格の先駆者である「キャノンデール」が開発した「BB30」と同じ系統です。
そのため、そのままではシマノクランクが使用できません。
BB30は圧入するという方式の影響で、「異音」の問題が付いて回りました。
これもBBの規格乱立に拍車を掛けた大きな原因ですし、BB30をあきらめシマノ製に戻す動きが活発化した要因でもあります。
スペシャライズドのOSBBも圧入方式ですから、以前は異音の問題があったと聞いています。
しかし、現在のモデルは圧入されているカップを樹脂製から金属製に変えたことで、異音が解消されていると言います。
また、次項で詳しくお話しますが、スペシャライズドはクランクとBBに関しては統一感がありません。
良く解釈すれば臨機応変で、ユーザーには選択肢が豊富ということになりますが、悪く言えばこだわりがないとなります。
スペシャライズドの完成車におけるBBとクランクの組み合わせ
前項でお話ししましたが、スペシャライズドの完成車には、実に多くのBBとクランクの組み合わせが存在します。
筆者が調べた上では、以下のような組み合わせがあります。
◎OSBBとオリジナルクランク
◎シマノ製BBとシマノクランク
◎BB30とBB30規格のクランク
◎BB30規格のフレームに、シマノクランク用のコンバージョン(変換)BBを付けて、シマノクランクを採用
もちろん個々にその組み合わせになっている理由はあるのでしょうが、これだけ多くの組み合わせがあるメーカーは他に知りません。
まして、変換アダプターまで付けてシマノのクランクを採用していることに関しては、完全にメーカー側の都合としか思えません。
しかし、組み合わせが多いことで、我々エンドユーザーに与えるデメリットはあまりないと考えられます。
OSBBとスペシャライズドのオリジナルクランクは、プロ仕様モデルの「S-Works」に多く見られます。
プロが使用しているからエンドユーザーも満足できるという単純なものではないですが、特に不具合も感じられません。
また、BB30の規格でよく採用されている「praxisworks(プラクシスワークス)」というメーカーのクランクも、非常に評判の良いものです。
したがって、組み合わせに統一感はありませんが、個々に見ればしっかりとレベルが維持されていることが分かります。
スペシャライズドのOSBB用フレームでシマノクランクを使用するには?
前項ではスペシャライズドのBBとクランクの組み合わせについて、多くの組み合わせはありますが、個々に見ればレベルが高く問題は少ないというお話をしました。
しかし、コンポはメーカーを統一させた方が良いという意見が多く、ディレイラーとの相性などから考えて、筆者も統一論者のひとりです。
となるとクランクを他のパーツに合わせ、シマノ製にした方が良いということになります。
前項でご紹介した組み合わせの中に「コンバージョンBB」がありましたが、OSBB用もあります。
そのため、フレームの規格がシマノクランクに合わない仕様であっても、使用することは可能です。
ただし、コンバージョンBBの装着やクランクの交換には、複数の専用工具が必要になりますし、かなり手間の掛かる面倒な作業です。
しかも、専用工具も結構高価なので、お店に交換を任せてしまった方が安く済む場合もありそうです。
スペシャライズドのOSBBからシマノクランクに交換するための工具と費用
前項でお話したスペシャライズドのOSBBと専用クランクを、シマノクランクに交換するための専用工具は、以下のものになリます。
「既存のクランクを外す工具」「BBを外す工具」「コンバージョンBBを取り付ける工具」「BBを締め付ける工具」「シマノクランクを取り付ける工具」。
これだけ多くの工具を必要とし、ざっと見積もっても工具代だけで2万円はします。
コンバージョンBBは8~9千円しますし、シマノクランクはグレードによって違いますが、おすすめしたいのは105以上ですので、最低でも2万円というところです。
それに工具代で2万円も掛かってしまうのは、非効率と言わざるを得ません。
工具をあらかじめいくつか持っている方は別ですが、これならば部品持込みで自転車屋さんに作業してもらった方が安く上がるはずです。(工賃は平均1万円前後)
一台のロードバイクでクランクを交換することは、ホビーライダーであればそう頻繁にあることではないでしょう。
そうであれば専用工具ももったいないと思いますので、お店に任せるのが賢明と思います。
OSBBに問題はないがコンポの統一は図りたい
今回はスペシャライズド独自のボトムブラケット規格であるOSBBと、シマノクランクとの関係についてお話しました。
特にOSBBに問題点は認められませんが、コンポの統一という点からはシマノクランクの採用を考えたいところです。
交換に当たって必要な専用工具が割と高価ですので、交換作業はお店に任せるのが賢明かと思います。