「うっかり転倒してハンドルの位置がずれてしまった!」
「アヘッドステムを締めていくとなぜかハンドルの位置がずれてしまう。」
こういったトラブルは誰でも経験しているのではないでしょうか?
ハンドルの位置ずれを正す方法は、実はとても簡単です。
メンテナンスの一つとしてハンドルの位置を常に適正なところに決められるよう、ハンドルの位置のずれを直す方法をご紹介します。
自転車のハンドルはどう付いているのか理解しよう!
自転車のハンドルは、いったいどのように車体(フロントフォーク)に固定されているのでしょうか?
自転車のハンドルは、大きく分けて2種類の方法で固定されています。
一つは「スレッドステム(ノーマルステム)」、もう一つは「アヘッドステム」です。
ママチャリハンドルは、ほとんどスレッドステムで固定されていて、アヘッドステムは、大体のスポーツ自転車に使用されています。
そして、固定方法が違うだけで、それほど大きなハンドルの固定力の差はありません。
そのうち、スレッドステムはそれ自体をコラムに挿し込んで、一番下にある「ウス(臼)」をボルトで引き上げてオフセットさせることで固定します。
重量はありますが、どこまで挿し込んで固定するかで高さ調節し、無段階でハンドルの高さが決められるので、微調整にはとても有効です。
反対にアヘッドステムは、コラムの外側にクランプ止めします。
後述しますが、ボルトの向きのせいでハンドルの向きが合わせづらい短所がありますが、ステムを単純・軽量に作ることができます。
いずれの方法であっても、ハンドルバーはコラムからステムと連結され、そこにボルト留めする形で付いているわけです。
そのため、特にステムが位置ずれを起し、正しい方(真っ直ぐ前)を向いていないと、違和感のあるハンドルになってしまいます。
ハンドルの位置ずれ?調整はアーレンキーで
スレッドステムの場合もアヘッドステムの場合も、ハンドルの着脱はアーレンキー(六角レンチ、六角棒)一本で行うことができます。
そのため、万が一の転倒・落車などでハンドルが位置ずれを起してしまっても、わりに簡単に復旧することができます。
方法はとても簡単です。
【アーレンキーを使ったハンドル位置の調整法】
・完全に止めるのではなく、遊びがある程度に仮止めする
一気にボルトを締め込んでしまうのではなく、一度、ハンドルを仮組みするつもりで、弱く固定します。
手のひらでハンドルバーを叩いてハンドルが少しずつ動くくらいの強さです。
・手のひらでハンドルを叩いたり、ハンドルバーを回したりして位置を調整する
一度ハンドルがずれたりしてボルトを緩めてしまった場合、なかなか「ここ!」という位置が出てこないこともありますが、気長に調整しましょう。
正しい向きにするためには、横から見ているだけでなく、実際にマシンにまたがって真っ直ぐ前を見ながら調整することが大切です。
・アーレンキーでステムとハンドルを再び確実に締める
パッと見た感じではハンドルは固定されていますが、この段階ではまだ固定されていません。
必ずアーレンキーですべてのボルトを締め込んで、ハンドルを固定させましょう。
基本的な作業はこれだけです。
サイズの合うアーレンキーが一本あればハンドルの位置ずれは直せるので、パンク修理キットなどと一緒に持っておいて損はありません。
ハンドルの位置ずれを直すコツ
ここからはハンドルの位置ずれを直す作業の上級編です。
特に、アヘッドステムで起きやすいのですが「仮止めでは真っ直ぐだったハンドルがボルトを締めたらずれてしまった」ということが起こります。
これは、ステムがコラムに巻き付く形でボルト止めされるために発生する現象で、大きな場合は2~3°もハンドルの向きが変わってしまうこともあります。
そこまでずれると、ハンドルバーのエンド部分ではセンチ単位のずれが生まれてしまい、最悪の場合「勝手に右に曲がるハンドル」などができ上ってしまいます。
せっかく調整したのに、乗れるようになったら狂ってしまっていたのでは、何のための調整か分かりませんよね?
そういう時は、ずれる分を見越して仮組みしておくと、締め上げたときにビタッと位置が決まります。
例えば、ステムを締め上げた結果2°右にずれてしまうのであれば、仮組みの段階でその分ハンドルを左に向けておきます。
その状態でボルトを締め上げると、やはり2°右にずれるので、結果的にハンドルはまっすぐ前を向くことになります。
まめに増し締め!ハンドルの位置ずれを防ぐ
ハンドルバーもステムも、ボルトもナットも、熱に晒されれば膨張します。
しかも、素材によって熱膨張率はマチマチで、外側にある物の方が大きく膨張すれば、そこは当然緩みます。
そのため、どんなボルトであっても、一度しっかり締めてもその後放置すれば必ず緩んできます。
また、温度変化だけではなく、自転車には常に振動がかかっていますから、その振動が原因でボルトが緩んでくることも、もちろん起こります。
そのボルトの緩みがハンドルの位置ずれの原因になることはもちろんですし、不意に位置ずれを起してしまうと転倒・落車につながることもあります。
普段、どの程度自転車に乗っているかにもよりますが、全く乗らなかったとしても、3ヵ月に1回は、ハンドル回りのボルトを増し締めするようにしましょう。
やってみればわかると思いますが、3ヵ月も放置していると、思った以上にあちこちのボルトが緩んでいます。
転倒でハンドルの位置ずれが起きると大抵の場合、ボルト類の締め込み不良が原因です。
裏を返せば、普段から定期的にメンテナンスして、増し締めする習慣を付けてしまっておけば、ハンドルがずれてしまうということは、よほどのことがない限り、起こりえません。
締めれば良いってものじゃない!増し締めする際の注意点
「勝手に緩んでくるならば、位置ずれしないように、その分も見越してガッチリ締め込んでしまえばいいのでは?」
もしかしたら、そう思われる場合もあるかもしれませんね。
ですが、どんな素材でも締め上げに対する限度があります。
特に、カーボンハンドルはあまりガッチリ締め込んでしまってはいけないと言われています。
と言うのも、カーボン素材には、圧力がかかることを想定している箇所と想定していない箇所があるからです。
例えばハンドルの場合、バーを曲げる方向への力は頻繁にかかるため、当たり前のことですが想定されています。
しかし、当然、バーを左右から同時に押す向きや、バーそのものを押しつぶす向きへの力は想定されていません。
カーボン素材は金属とは違い、ハンドルを必要以上に締め上げてしまっていても、見た目の変化はありません。
しかし、炭素繊維を除けば、カーボンハンドルはプラスチック(エポキシ樹脂)と同じです。
見た目には判断が付かないくらいのたくさんの亀裂や炭素繊維の剥離が起こり、限度を超えると、折れて(もしくは潰れて)しまいます。
あくまで、自転車におけるカーボン素材は炭素繊維が中に入っている「プラスチック」であると認識しておきましょう。
ハンドルの位置ずれがクセに!?その対処方法
これはあまりないことですが、まれに、ハンドルの位置ずれがクセになってしまっているステムがあります。
理由としてあり得るのは、以下の3つです。
・ボルトをネジ止めする穴のネジ山がなめてしまっている
一度、ネジ山がなめてしまうと、一見しっかり締まったように見えても、少し力が加わると緩んでしまう、という状態になってしまいます。
ボルトが傷んでいるのであれば交換すればいいのですが、ボルトを新品にしても効果がない場合は、ステムそのものを交換する必要があります。
・ステムとコラムの間にグリスが入ってしまっている。
シートポストをフレームに挿し込むときには、フレームとの固着を防ぐために微量のグリスをシートポストに塗ります。
しかし、コラムとステムの間は触れている面積が小さいので不要です。
・ハンドルバーやステムの破損
特に、カーボン素材を使用したものの場合、衝撃が加わると曲がるのではなく、ひび割れたり折れたりしていることがあります。
表面からそれが分からないレベルであっても、ひび割れの結果パイプが変形し、必要な締め付け圧力が生まれていないと、簡単にずれてしまいます。
いずれの場合も、掃除や交換など、しっかり対処しないと危険であり、ハンドルとしての機能は果たせません。
メンテナンスの際に、異常がないかよく見ておくことが必要です。
ハンドルの位置が真っ直ぐなのは正しい乗車姿勢への絶対条件
マシンと人体はペダル・サドル・ハンドルのたった3点でつながっています。
中でもペダルはマシンの推進力、ハンドルはマシンのコントロールを司る大切な部分です。
また、ペダル・サドル・ハンドルの3点の位置関係によってマシンへの乗車姿勢は決まってきます。
そのため、ハンドルが真っ直ぐ前を向いているのは、正しい乗車姿勢への絶対条件になります。
メンテナンスの際は、必ずハンドルの位置を確認して、ずれがあれば直すのは、徹底しておきましょう。