クロスバイクを始めとするスポーツバイクは、主要メーカーが通信販売を行っていませんので、基本的には実店舗での購入になります。
そうなると、必然的にショップでの取扱いに差が出てくるわけですが、クロスバイクの取り扱い数の多さにおいては、「ビアンキ」と「トレック」が双璧なのかと思います。
そこで今回は人気モデルなどを確認しながら、両者を比較してみましょう。
ビアンキはクロスバイクが縮小傾向にある
まず、ビアンキとトレック両メーカーのクロスバイクの品揃えですが、ビアンキは2018年から縮小傾向、一方のトレックは拡大傾向にあります。
ビアンキのクロスバイクは2017年シーズンは3シリーズ9機種の展開でしたが、2018年は2シリーズ6機種となりました。
しかも、年々モデルが減り、2018年でついに定番の2モデルのみの展開になりました。
これについては少数精鋭にしたという意見もあれば、クロスバイクからの撤退ムードと読む専門家もいます。
筆者はこの度のクロスバイクの縮小は、「ロードバイクやMTBをクロスバイク的に使ってみては?」という投げかけに思えます。
ビアンキのロードバイクやMTBには、明らかに街乗りを意識したような機種があります。
特にMTBではクロスバイクより安価なモデルが多数ラインナップされており、そことの被りを避けて縮小したと受け取れます。
実際に2017年から大きく品ぞろえが削減されたのは、ビアンキの中でもMTB寄りのスペックを持つ「カメレオンテ」シリーズです。
だからといって、クロスバイクを求めている方にMTBをおすすめするという話ではありませんが、ビアンキのクロスバイクの選択肢が減ってしまったのは事実です。
トレックはクロスバイクをさらに充実させている
前項でビアンキのクロスバイクは縮小傾向にあるとお伝えしましたが、一方でトレックは拡大傾向にあります。
定番の「FX」シリーズの名称が変更されたのを皮切りに、ディスクブレーキモデルや女性専用車なども続々と登場しています。
2018年3月現在で、4シリーズ20機種のクロスバイクがラインナップされています。
定番のFXシリーズをよりスポーティにした「FXS」シリーズ、サスペンション付きの「DS」、ロードとMTBを上手く融合させた「Zektor」。
このように一言で特徴を言えるのがトレックのクロスバイクの優れている点で、モデル別に向くタイプが分かりやすいです。
自分がクロスバイクに乗る用途や目的で選ぶことができて、豊富なラインナップの中から予算やカラーで選択すればよいわけですね。
また、上位モデルの「FXS6」「FXS5」は、クロスバイクとしては珍しいカーボンフレーム車として注目を集めています。
クロスバイクにカーボンフレームは少しやり過ぎ感もありますが、真面目なモノ作りで有名なトレックらしいのかとも思います。
ビアンキのクロスバイクの特徴
さて、話をビアンキに戻しますが、縮小傾向にあるクロスバイクですが、評価が著しく下がっているということはありません。
2018年より自走タイプ(電動アシストが1種)は1機種のみとなってしまった「CAMALEONTE(カメレオンテ)」などは、惜しむ声が多いほどです。
こちらには、いかにも頑丈そうな太めのチューブは衝撃吸収性も考えられ、少し柔らかめのアルミが使われています。
タイヤも少し太めの32c(32ミリ)なので、どちらかというとMTB寄りのクロスバイクです。
しかし、これが乗ってみるとシャキッとしたアルミフレームらしい反応のよさがあり、また、しっかりとした踏み心地なので、意外なほどにスピ―ドが出ます。
そのため、ロングライドにも向く印象があり、用途が広いことをうかがわせます。
また、どこかこっけいと言うか親しみやすいフォルムをしており、そこが全体的にまじめで硬い印象を受けるトレックとの違いですね、
ビアンキの象徴である「チェレステ」カラーの明るい雰囲気も相まって、所有欲の湧いてくる楽しさがあります。
もう一方の定番「ROMA(ローマ)」シリーズは昔ながらの角ばったフォルムで、フレームも硬めなので、スピード重視のクロスバイクです。
上位モデルにはディスクブレーキが搭載されており、天候に左右されない制動力がありますので、通勤やロングライドに向くモデルです。
ビアンキとトレックのクロスバイクの比較①
それではここからは、トレック・ビアンキ両者のクロスバイクを比較していきます。
まずは、見た目の特徴ですが、これは好き嫌いがハッキリと分かれそうです。
トレックのクロスバイクは「質実剛健」という言葉で表現されるように、見た目はシンプルでオーソドックス、カラーも黒やグレーを基調とした地味な物が多いです。
一方ビアンキは、カメレオンテのユニークな感じや、ローマのホイールまでチェレステに塗ってしまうあたりに、陽気なイタリアン気質が感じられます。
したがって、これは個人の好みの問題なので、優劣はつけがたいです。
次に価格ですが、リーズナブルさはトレックが優位です。
ラインナップ数の違いもありますが、クロスバイクのホットゾーンである5~8万円の価格帯では、トレックの充実ぶりが目立ちます。
ビアンキはローマシリーズがディスクブレーキ搭載車を増やしたために、軒並み10万円前後になってしまい、8万円以下の機種が2種しかありません。
ビアンキとトレックのクロスバイクの比較②
あとは、タイヤの太さにメーカーの特徴があります。
特に顕著なのはトレックで、32c以下の細さのタイヤを装備した機種はありません。
ビアンキはローマシリーズが28cですが、これが今のクロスバイクのトレンドともなっています。
その点で考えると、トレックは太めのタイヤを意識していることになります。
トレックはどちらかというとフレーム形状がスピード仕様の物が多いので、タイヤの太さで安定感を補っているイメージです。
また、トレックは上位グレードの機種になると、ハンドルに独自の衝撃吸収材が埋め込まれており、長時間走行への配慮がなされています。
この衝撃吸収材はロードバイクにも採用されているもので、安価なクロスバイクに同じ技術を投入している点に好感が持てます。
一方、ビアンキはロードバイクには様々な技術が投入されていますが、その技術をクロスバイクに費やしているのかが明確にはわからないところです。
ビアンキ【ROMA4】とトレック【FX3】の比較
トレックとビアンキのクロスバイクの比較をしていますが、ここからは具体的な車種を対象にしてみます。
まずは、販売台数で常にトップクラスにある人気のクロスバイクを比較します。
対象はトレックが【FX 3】、ビアンキが【ROMA 4】になります。
両者はくしくも価格が同じ7万円なので、比較がしやすいかと思います。
最初に結論から言いますと、この両者で迷った場合、スピードを求めたいのなら「FX3」、安定感なら「ROMA4」を選ぶと満足する可能性が高いです。
FX3に比べるとROMA4は衝撃吸収性に優れたフレーム形状になっており、長時間乗っても疲れが出にくい仕様です。
FX3もその点はタイヤの太さやコンフォート系のサドルでカバーしていますが、フレーム形状はスピード寄りです。
しかし、比較しておいてなんですが、両者はその他の性格がとても似通っているので最終的には見た目や色で判断することになりそうです。
なお、決定打とまでは言えませんが、FX3はリアが9速、ROMA4は8速ですので、細かなギアチェンジはわずかにFX3が優位となります。
トレックにクロスバイクへの愛着を感じた
今回はビアンキとトレックのクロスバイクは、どちらが買いなのかを検証してきました。
見た目や性能の善し悪しは別として、クロスバイクへの情熱を感じるのはトレックの方だと筆者は感じています。
単にビアンキが縮小傾向だからというわけではなく、トレックはパーツの選択や投入している技術に自信を持っている、と感じました。
ただし、あくまでも筆者個人の感覚であり、性能の優劣ではありませんので、自分の目で確かめ、乗ってみて判断してください。