多くの自転車には、「リムブレーキ」が採用されています。
ホイールの外周部分のリムで制動が行われるので、そう呼ばれています。
リムには「wo(ワイヤードオン)」や「HE(フックドエッジ)」などの種類があり、それによって適合するタイヤも変わります。
ということは、リムで制動するブレーキにも何らかの影響がありそうですが、どうなのでしょうか?
自転車のクリンチャータイヤには「wo」「HE」という規格がある
自転車のホイール&タイヤには、多くの規格があります。
その中でも種類が分かれるのが、「チューブ」を必要とするか、しないかです。
チューブを必要としない「チューブレスタイヤ」は徐々に普及してきていますが、まだまだ後発の域は出ず市場に出回る数も少ないです。
一方、昔から使われてきたのが「チューブタイヤ」で、タイヤの中に入れたチューブに空気を入れタイヤとしての体を成すものです。
タイヤにチューブを縫い付けてしまう「チューブラー」タイヤが走りですが、現在はチューブを中に入れるだけの「クリンチャー」タイヤが主流です。
そして、このクリンチャータイヤは、ホイールのリムとのはめ合せ方法で種類が分かれています。
イギリスやフランスで使われていた規格は「wo(ワイヤードオン)」で、ママチャリやロードバイクなど、約8割の自転車がこの規格を採用しています。
しかし、太いタイヤに適しているとしてアメリカが、第二次世界大戦後に「HE(フックドエッジ」を開発したので、規格が増えてしまいました。
今でもMTBやミニベロを中心にHEが採用されています。
この2つの規格は、タイヤのはめ合せ方法が異なるのでリムの形にも違いがあります。
ということで、タイヤとの互換性だけでなく、リムブレーキの場合はブレーキも関係してくるということになります。
同じサイズの自転車でも「wo」と「HE」ではホイールの大きさが異なる
ホイール&タイヤの規格は徐々に世界に広まる段階でも、お互いが譲らずに今日に至っています。
前項でご説明しましたwoとHEには互換性がありませんので、サイズ(大きさ)が同じだったとしてもホイール、タイヤ、そしてブレーキも運用出来ません。
例えば、ミニベロには同じ20インチでも、2つの「20インチ」サイズが存在します。
それがwoとHEの違いですが、HEのホイールはwoよりも一回り小さいので、ややこしいことになります。
20インチという呼び方は、ホイールにタイヤをはめた際に、その外周が20インチになるという意味です。
そのため、小さいホイールに幅の広い(太い)タイヤをはめた場合も、大きなホイールに狭い(細い)タイヤをはめても同じ20インチの大きさになります。
このように規格が乱立しているので、自転車の車輪周りは注意して運用しなければならないのです。
「wo」と「HE」はサイズの表記方法も違う
自転車のwoとHEは規格が違うことで、特にタイヤはサイズの表記も異なります。
タイヤのサイズは外周の直径×幅(太さ)で表されますが、HEは直径をインチ、幅をインチ少数点で表します。(例26×1.35)
一方、woはママチャリなどのイギリス規格は、インチ×インチ分数表示。(26×1-3/8)
ロードバイクのフランス規格は、ミリ×ミリで表示され、後ろにリム外径を表す記号が付きます。(700×25c)
今回はホイールのリムとブレーキの関係がテーマなので、規格の違いのご説明はここまでにします。
ひとつだけ注意点を言っておきますと、インチをミリやセンチに換算したくなりがちですが、それをすると余計にややこしくなります。
ですから、ママチャリならwoのイギリス規格、ロードバイクならwoフランス規格と覚えてしまう方が良いです。
また、もしブレーキを合わせる時にどちらの規格か迷った際は、タイヤのサイズ表記で判断してください。
サイズはタイヤの側面に印字・刻印されています。
自転車のブレーキシューには「wo」用と「HE」用がある
自転車のブレーキはリムの形状に合わせる必要があるので、ここまでホイールとタイヤの規格の話をしました。
ここからはブレーキの話になりますが、まずは「リムブレーキ」の仕組みからお話します。
リムブレーキはリムに「ブレーキシュー」と呼ばれるゴムを押し当て、摩擦を起こすことで車輪の回転を止めます。
シューが付いたアームとブレーキレバーがワイヤーケーブルで繋がれており、レバーを操作するとアームが動きシューがリムに当たる仕組みです。
このように、リムと直接当たるのはブレーキシューなので、リムがwoかHEであることが関係するのはシューということなります。
そして、先述したようにwoのリムを持つ自転車が圧倒的に多いので、wo用のブレーキシューは見付けるのが比較的容易です。
むしろ苦労するのはHEの方で、woとはシューの形が違います。
HEはリムの幅が細かったり微妙に角度があったりするので、それに合わせるためにシューにも角度が付いています。
したがって、リムが違えば、それに合わせたブレーキシューが必要になるということです。
自転車のブレーキシューは生命線!
自転車のブレーキは乗り手の命を預かる「命綱」と言えますが、中でもブレーキシューがその生命線です。
ブレーキシューはゴムや樹脂、一方ホイールのリムはアルミやステンレスなど金属ですから、摩擦で消耗するのは当然ながらシューの方です。
特に車輪が高速で回転するロードバイクは、リムに摩擦熱で溶けたブレーキシューのカスがこびり付いてしまう程です。
シューは金属製の台座に装着されていますが、シューがすり減って金属面が露出することを「メタルブレーキ」と言います。
このメタルブレーキ状態になってしまうと摩擦が起こせませんので、全くブレーキが効かなくなります。
もし走行中にメタルブレーキになってしまったら…どうなるかは言わずもがなですね。
ブレーキシューは消耗品ですから、「効きが甘くなった」、「レバーの引き代が大きくなった」と感じたらシューを点検してください。
ブレーキシューは表面に水はけ用の溝が彫ってありますが、この溝が横から見て1ミリくらいの深さになったら交換のサインです。
交換の際は先ほどからお話している規格、woとHEに注意して交換してください。
また、特にスポーツバイクはブレーキシューと台座が一体型のものと、ゴムの部分だけが外れるカードリッジ式のものがあります。
間違えてしまっても取り付けは可能なようですが、せっかくなら正しい方を取り付けましょう。
ブレーキシューの交換は自転車屋さんに任せる手もある
ブレーキシューは消耗品なので、定期的に交換が必要です。
一般的には1年に1回が交換の目安と言われますが、距離や環境にもよりますので、判断は見た目や使用感に頼ることなります。
交換は作業自体はそこまで難しくありませんので、自力でも十分に行えます。
自他ともに認めるほど手先の不器用な筆者も何回か交換していますが、滞りなく行えました。
しかし、woやHEの問題もありますし、ママチャリなどはリムの素材が違ったりします。
アルミリムにはアルミ用のシュー、ステンレス製にはそれ用のシューがあります。
そのため、最初は戸惑ってしまうかもしれませんので、自転車屋さんにお願いする手もあります。
街の自転車屋さんの相場は不明ですが、大手サイクルチェーンなら1つ500円程で交換出来ます。
特にママチャリは、ブレーキシューが交換できるのは前輪用ブレーキだけですので、1回500円と考えて良いです。
取り付けの角度や効き具合の調整も行ってくれるので、最初は任せた方が賢明かもしれません。
「wo」と「HE」は深く考えずに覚えてしまう
今回は自転車のホイール&タイヤの規格である、「wo」と「HE」についてお話しました。
難しく考え過ぎると余計にややこしくなるので、自分が乗っている自転車がどちらの規格なのか覚えてしまうのが賢明です。
それによってブレーキシューも対応させなければいけませんが、分からない場合はお店に任せましょう。
ブレーキは命を預けるものですから、「間違った」では済まされませんからね。