スポーツ用自転車はもちろんのこと、街乗り用の軽快車であっても、変速機が装備されているものがほとんどです。
自転車には、なぜギアチェンジが必要なのか、きちんと考えたことがありますか?
効率的にペダルを回して無駄なく走るためには、ギアチェンジの意味や、変速機の種類、仕組みなどを知っておくことは大切です。
今回は、自転車のギアチェンジに注目していきます。
自転車でギアチェンジが必要な理由
現在、販売されているほとんどの自転車には変速機が装備され、ギアチェンジを行って走れるようになっています。
ただ、あまり意識せず、なんとなくガチャガチャ変速して走っている、という方も多いかも知れませんね。
特にロードバイクでは、フロント3段×リア11段、合計33段の変速が可能なものもあります。
しかし、細かく多くのギアに、使い方が分からない方や、上手に使いこなせていないという方もいらっしゃるでしょう。
うまくギアチェンジをしてスムーズに走行するためには、まず、変速機の仕組みを知ることが大事です。
自転車の変速機は、大きく分けると外装式と内装式に分けられますが、それぞれについて仕組みを見ていくことにしましょう。
外装式変速機のギアチェンジの仕組み
外装式とは、ギアがむき出しになったタイプの変速機です。
ロードバイクやMTBなどのスポーツ用自転車だけでなく、一般的な軽快車にもついています。
外装式の変速機でギアチェンジを行う仕組みは、簡単にいえばチェーンをいったんギアから外して、別のギアにかけ替えるというものです。
チェーンをギアから外す装置のことをディレイラーと呼びますが、もともとは「脱線装置」という意味でした。
外装式の場合、このディレイラーの性能がギアチェンジの精度を左右します。
外装式のメリットは、なんといっても構造がシンプルで、軽量に仕上げることができてパワーロスが少ないという点です。
また、変速比を大きく取ることができるので、低速から高速まで細かい設定が可能になります。
デメリットとしては、日常のメンテナンスが欠かせないことと、転倒した際にダメージを受けやすいところです。
内装式変速機のギアチェンジの仕組み
内装式とは、その名の通り、リアホイールのハブの部分に変速機が内装されているタイプです。
主に軽快車(いわゆるママチャリ)などに使用されることが多いものですが、クロスバイクなど、一部スポーツ自転車にも採用されています。
外装式は一枚一枚のギアの大きさで変速比を決めますが、内装式の場合は歯車の歯数で変速比が決まる仕組みです。
内装式のメリットは、なんといってもメンテナンスフリーというところです。
メカがすべて内装されていることから、汚れなどにも強く、細かな調整も不要で、1年に1度ぐらい、潤滑油を差すだけで大丈夫です。
外観もすっきりした印象に仕上がります。
また、外装式のように、チェーンをいったん外して他のギアにかけ替えることをしないので、停車中でもギアチェンジが可能です。
一方でデメリットとしては、変速数をあまり増やせないことが挙げられます。
通常は3段から5段、多くても11段までなので、外装式のような細かなギア選択はできません。
また、構造が複雑で重くなる上、歯車は走行抵抗も大きいので、パワーロスも発生します。
さらにハブに機構が集中している関係上、自転車がパンクした際に車輪を簡単に外すことができないので、修理が面倒です。
究極の自転車用変速機?無段変速機の仕組みとは
自転車の変速数は、最大でロードバイクに採用されている外装式のフロント3段×リア11段の合計33段となっています。
これほど細かく段数を分けるのは、ギアチェンジによって人間の脚力の効率を最大限に高めるためです。
それならばもっと細分化してしまえばいい、という考え方から生まれたのが無段変速機です。
これは、スクーターで最初に実用化されました。
自動車でも30年ほど前に実用化され、現在の国産車では「CVT」として一般的な存在となっています。
軽自動車や、コンパクトカーではすでに、主流の変速機ですね。
自転車用にもこの考え方を応用した、ドイツのFALLBROOK TECHNOLOGIES社による Nu Vinciとい名称の無段変速機がリリースされています。
見た目は一般的な内装式と変わりません。
仕組みは少し複雑で、2枚の平行したディスクの間に、シャフトを真ん中に通した鋼球が仕込まれています。
この鋼球がディスクに当たる位置によって、変速比が変わります。
付属するシフトレバーには、当然ですが段数は書かれていません。
その代わりに、自転車が坂道を上る様子がイラスト化されており、そこで変速の状態を確認するというユニークなものです。
「3速だと低すぎるし、4速に上げてしまうと失速しそう。その真ん中のギアがあれば…」という場合に有効でしょう。
ただし、変速機単体で2,450gと構造上重くなるのがネックで、完成車への採用例はまだまだ少ないようです。
スポーツバイクではなく、電動自転車とは非常に相性がよさそうなシステムなので、今後、採用例は増えてくるかもしれませんね。
効率的なギアチェンジの方法は?
自転車に乗り始めたばかりの子供たちが、重いギアでペダルを回すのを自慢しあっているのを見かけたことがあります。
本人たちは頑張っているつもりなのでしょうが、変速機の仕組みから考えればメリットはなく、疲労がたまってしまうばかりでしょう。
最も効率的なギアチェンジとは上り下りに関係なく、一定の回転数でペダルを回し続けられるギアを選択することです。
1分間のクランク回転数のことをケイデンスと呼びますが、一定のケイデンスをキープするようにギアチェンジを行うようにします。
ペダルを踏んでクランクを回して、「重いな」と感じたらすぐギアを一段落とし、「ちょっと軽いな」と感じたらギアを一段上げてみるといいでしょう。
もちろんレースに出場するわけではないので、あまり神経質になる必要はないでしょうが、意識してギアチェンジを行う癖をつけておくようにしましょう。
自転車のギアチェンジで注意したいこと
ロードバイクの場合、フロントが3枚、リアが11枚など多数のギアが組み合わさっているので、どう組み合わせればよいのか悩む方もいるでしょう。
まずは注意点からご説明していきます。
フロントとリアで片方が最も内側で、もう片方が最も外側のチェーンが斜めになるギアの組み合わせは、できるだけ避けて下さい。
変速機の仕組み上、チェーンへの負担が大きくなります。
また、チェーンが切れやすくなる上、段差を乗り越えた時などに衝撃でチェーンが絡まってしまう恐れもあります。
なるべく真ん中同士のギアを組み合わせることで、自転車のギアに負担をかけず、スムーズなギアチェンジができるようになります。
かつての自転車用の変速機は、正直精度も今1つでしたし、ダブルレバー式のように、経験と勘で、「だいたいこれぐらい」と変速するような感じでした。
シマノの製品が一般的になってから、劇的に変速はスムーズになり、ストレスからも解放されました。
特に、最新の電動シフターは変速すること自体が快感なほど精密な仕上がりですが、あまりにスムーズ過ぎて、ギアやチェーンの状態を意識しなくなってしまうので要注意です。
ギアチェンジのやり方で自転車の走りは変わる!
いかがでしたでしょうか。
自転車のギアチェンジの仕組み、効率的なやり方などについてご説明してきました。
自転車の変速機は、電動化などによって性能の向上が目覚ましいですが、最終的に使いこなせるかどうかは乗り手のスキルにかかっています。
そのためにも常に、ギアの状態を意識しながら操作することが大事なのではないでしょうか。