ロードバイクに長いこと乗っていると、タイヤの消耗が気になってくるものです。
唯一地面と接している部分ですし、動力や摩擦によって、常に大きな負荷が掛かっていますから、激しく消耗してもおかしくありません。
また、前後の消耗度合いの違いも、事故を未然に防ぐ上で、知っておかなければいけません。
そこで今回は、タイヤの前後の違いを確認してみましょう。
ロードバイクのタイヤはほぼ前後兼用
まず、市販されているロードバイク用のタイヤですが、ごく一部のものを除き、前後の区別はありません。
前後輪どちらでも対応可能なものばかりなので、自動車のように、前後のローテーションも可能です。
しかし、前輪と後輪では、後輪の方が激しく消耗しますので、注意が必要です。
自転車は、後輪にしかチェーンが掛かっていないことでもお分かりのように、後輪しか駆動していません。
前輪は惰性で転がっているだけで、動力は伝わっていません。
また、自転車はサドルが中心点よりも後方にあるので、どうしても後ろ重心になります。
そのために、後輪には駆動輪として大きな負荷が掛かり、さらに乗り手の加重があるので、消耗が激しくなります。
さらに、ブレーキを多く掛けるような乗り方も、後輪のタイヤに負荷を掛けることになります。
ブレーキを掛けると前輪に重心が一気に傾くので、後輪は軽いロック状態になります。
完全に制動するまでは、ロック状態のまま動きますので、後輪タイヤはスリップし、摩耗が激しくなります。
このように、後輪のタイヤには、様々な負荷が掛かっていることを覚えておいてください。
ロードバイクのタイヤの消耗は摩耗+経年劣化
ロードバイクに限りませんが、自転車のタイヤは地面との接触による走行中の摩耗に加え、外的要因による経年劣化が避けられません。
タイヤの表面はゴムで覆われていますが、ゴムは水分や紫外線に弱いです。
そのため、屋外で直射日光や風雨にさらされていると、それだけ劣化は速くなります。
ロードバイクなどは、車体自体の盗難の危険性もあるので、屋内保管の人も多いかと思います。
しかし、ママチャリは屋外に置くことが多いでしょうから、乗らなくても、どんどん劣化していくと考えてよいでしょう。
タイヤの寿命は2年~3年という説がありますが、これはあくまで目安であり、実際には見た目や使用感を重視したほうが賢明です。
明らかに、傷やひび割れが目立つのに、「まだ1年しか乗っていないから」という理由で放置するのは、あまりにも危険です。
以前と比べて滑りやすくなった、ブレーキの効きが悪くなったなどは、タイヤが劣化している可能性があります。
また、前後の摩耗の変化にも要注意です。
前輪だけを見て、まだ大丈夫と思っていても、後輪はガッツリと減っているというのは、よくある話です。
ロードバイクのタイヤにおいて前後ローテーションは?
ロードバイクのタイヤにおいて、前後の消耗度の違いは、如何ともしがたいことです。
そこで考えられるのは、前後タイヤのローテーションです。
自動車では、ごく一般的なメンテナンスで、むしろ定期的なローテーションは推奨されています。
自動車のタイヤは、4本が4本とも摩耗する箇所が違うので、ローテーションをして、意図的に摩耗する箇所を均等にするという意味があります。
自転車の場合は、そこまで顕著ではないですが、摩耗を均等にするという発想は同じです。
ただし、単純な前後のローテーションには、危険性があります。
走行中にタイヤがバーストするなどのトラブルを考えた場合、かじ取りをしている前輪のほうが制御不能になるため、危険性が高くなります。
先述通り、後輪のほうが消耗が激しいわけですから、単純なローテ―ションでは消耗しているほうのタイヤを、前輪に持ってくることになります。
消耗度が低い最初の内に行うならまだしも、ある程度年月が経ってしまっている場合は、避けたほうが賢明です。
タイヤの前後ローテーションは新品を1本用意する
ロードバイクのタイヤの前後ローテーションの危険性についてお話しましたが、近年、主流となっている方法をご紹介します。
それは、タイヤを1本だけ新調して前輪に履かせ、今まで前輪が履いていたタイヤを後輪に持ってくるという方法です。
これですと、前輪をフレッシュな状態に保てる期間が長くなりますし、摩耗の均等化も図れます。
1本のタイヤを使い切るという意味でも、経済的です。
タイヤの摩耗は、タイヤの形にも表れます。
新品のときは真円に近い状態ですが、走行中の摩耗により、地面との接地面である中央付近が潰れて、平たくなってきます。
それが顕著になり、全体的に台形状になってきたら、寿命のサインです。
転がり抵抗が増えるので、スピードの乗りが悪くなります。
また、本来のグリップ力が低下しますので、滑りやすくなります。
まして、そういう状態のタイヤを前輪に持ってくると、挙動が不安定になるので、ガタついたりフラついたりして危険です。
そういったことがないように、前輪はできるだけ、フレッシュな状態を保っていたほうが良いわけです。
タイヤ交換の際はチューブも同時に
タイヤの前後ローテーションも重要ですが、忘れてはいけないのは、タイヤを交換するときは、チューブも一緒に交換するということです。
チューブもタイヤ同様ゴムですから、経年劣化もします。
タイヤの中に隠れているとはいえ、摩擦熱にやられていますし、常に高圧の空気が充填されているので、伸びも気になります。
また、劣化が進むと「内部摩耗パンク」といって、タイヤと擦れる部分が摩耗して薄くなり、パンクするという現象が起きやすくなります。
何度修理しても頻繁にパンクするようなら、チューブが原因と考えて間違いありません。
チューブはタイヤと比べても、かなり安価です。
そして、ロードバイクはホイールがクイックリリースなので、簡単に外れます。
そのため、タイヤもチューブも交換が容易なので、積極的に行なっておきたい部分です。
前後で違った性質のタイヤを履く意味
タイヤの話に戻りますが、ロードバイクのタイヤは、性質の違ったものがあります。
耐久性や耐パンク性に優れるもの、軽量で転がり抵抗が少ないもの、グリップ力が強いなど様々です。
これを活かして、前後で違う性質のタイヤを履くのも一考です。
例えば、空気抵抗を受けやすい前輪を軽いタイヤにして、消耗しやすい後輪に耐久性の高いものを持ってくるのは、良いバランスではないでしょうか。
また、前後でタイヤの太さを変えるという考え方もあります。
少数ですが、世界的タイヤメーカーの「コンチネンタル」には、前後で違う幅のタイヤセットがあります。
前輪が細く、後輪が太くなっており、前輪で漕ぎ出しの軽さを稼ぎ、後輪で安定感と乗り心地を確保する考え方です。
レースでの決戦タイヤという趣が強く、シビアなセッティングをするプロレーサーなら、その恩恵も認められるでしょう。
しかし、ホビーライダーで、そこまで前後輪で太さが違うことに、メリットはないように思います。
むしろ、同じ幅で場面によって、空気圧を変えて対応したほうが、安定して走れるはずです。
そのため、前後のタイヤ幅に関しては、同じほうが使い勝手が良いと考えられます。
タイヤの前後では消耗度が違うことを常に意識しよう
今回は、ロードバイクのタイヤの前後の違いについて考えてみました。
前輪用・後輪用という区別は、ほぼありませんが、消耗度は大きく違うことが分かりました。
また、ローテーションを考える場合は、消耗の激しいタイヤを前輪に持ってこないように心掛けてください。
さらには、タイヤを交換する際は、チューブも一緒に交換することを忘れないでください。