自転車のタイヤサイズは、様々な表記が入り混じっています。
単位はインチやmm、小数点表記だったり分数だったり、わざとややこしくしているのかと思えるほどです。
例えば、ママチャリの標準が26インチ、ロードバイクが700cと聞いただけで、大きさがピンとくるでしょうか?
しかも、これはタイヤの外径の話で、幅(太さ)はまた違う表記です。
今回は、こんな煩雑なタイヤの世界を整理してみましょう。
26インチや700cはタイヤの外径
まず、自転車のタイヤの表記が機種別に、どうなっているのか整理しておきます。
タイヤのサイズの従来型の表記は、先に外径が示され、後ろに幅が示されています。
ママチャリやMTBは、外径も幅も単位はインチで、外径は整数、幅は小数点や分数で表記されます。
例えば、26×1-3/8という表記のタイヤは、大きさが26インチで幅が1-3/8インチ(約35mm)ということになります。(1インチ=2.54mm)
しかし、この26インチは、タイヤの外径のことではなく、ビード径と呼ばれるものです。
自転車の車輪は、タイヤのビードがホイールのリムに、はまる構造で成り立っています。
そのため、上記のタイヤは26インチのホイールに、はめることができる、約35mmの幅を持つタイヤということです。
一方、ロードバイクやクロスバイクは、タイヤの外径と幅はミリメートルで表記され、対応するリムの幅を示す記号が最後に付きます。
700×25c表記のタイヤは、700cサイズで25mmの幅という意味です。
26インチや700cのような異なる表記を統一するのが「ETRTO」
上記のように、自転車の機種によって、タイヤのサイズ表記は異なります。
しかし、これでは非常に分かりづらいということでできたのが、「ETRTO」という統一規格です。
これは異なる表記は尊重するが、互換性を分かりやすくするというコンセプトでできています。
表記が26インチだろうが、700cだろうが、同じホイールのリムに、はまりさえすれば互換性があるということです。
そのため、ETRTOの表記は、タイヤのビード径になります。
単位はミリメートルに統一され、幅が先に表記されます。
先ほど例に挙げた26×1-3/8サイズはETRTOで【35-590】、700×25cは【25-622】と表記されます。
よって、この2つのタイヤはビード径が違うので、互換性がないということが分かります。
現在のタイヤは従来の表記に加え、ETRTOを同時に表記することが義務付けられているので、互換性は分かりやすいです。
ただ、そこまで考えなくても、ミリメートル表記をするのが、ロードバイクとクロスバイク。
インチ表記をするのが、MTBとママチャリと覚えておけば、大きな間違いはないです。
しかし、最近は用途が多様化しているので、「ロードバイクでMTB用のタイヤを履きたい」のような要望があります。
このときに、ETRTOが必要になるのです。
ETRTOのビード径が合えば、理論上はロードバイクにMTB用のタイヤが適合するわけです。
しかし、ブレーキとの相性や、フレームとのクリアランスの問題があるので、実際に履けるかどうかはケースバイケースです。
MTBのタイヤは26インチに始まり27.5インチに落ち着いた
スポーツ自転車のタイヤのサイズには、いつの時代も主流があります。
それは、スポーツ自転車が基本的にはレースに使われる機材であり、その時代のレースに使われている規格が、エンドユーザーにも流れていくからです。
現在のMTBは、27.5インチが主流です。(650Bという表記のされ方もします)
正にこれは、レースの世界からの波及であり、26インチから29インチを経て、現在の27.5インチにたどり着いているのです。
27.5インチは、ママチャリよりは少し大きいですが、ロードバイクよりは小さめのサイズです。
タイヤの外径は漕ぎ出しの感覚、スピードの維持、小回り性などに影響があります。
外径の小さなタイヤは漕ぎ出しが軽く、小回りは効きますが、スピードの維持が難しくなります。
一方、大きなタイヤは、漕ぎ出しは重く小回りは効きにくいですが、一度スピードに乗れば維持がしやすいです。
MTBは、ママチャリほどの小回り性は必要ないが、ロードバイクほどスピードを維持する必要もないです。
そのため、中間の27.5インチが主流になったと言われています。
ロードバイクやクロスバイクの主流は700cですが、こちらは次項で詳しく説明します。
ロードバイクやクロスバイクは700cが主流
ちなみに、ママチャリのタイヤに主流はありません。
ママチャリは、そもそもタイヤのサイズが、そのまま自転車のサイズとなっているので、自分に合ったサイズを選びますからね。
女性は24インチ以下、男性は26インチが良いと言われていますが、あくまでも目安です。
そしてロードバイクですが、700cは主流というよりも、このサイズしかほぼ見たことがありません。
ロードバイクはスピードが最優先ですが、一瞬の瞬発スピードよりも、巡航性を重視します。
そのため、1回転ごとの進む距離が長くなる、大口径の700cが採用され続けてきました。
また、ロードバイクは他のどんな自転車に比べても、ホイールに力が注がれています。
各メーカーが、いかに軽量で、よく転がるホイールを作れるかを競っている状態です。
そういった状況下では、700cワンサイズで大量生産できるメリットは、かなり大きいです。
その影響で、タイヤもほぼ700cに統一されていると考えられます。
また、最近ではクロスバイクもスピード化の傾向にあり、大半の完成車で700cのタイヤが採用されています。
タイヤは大きさ(26インチなど)と太さが重要
さて、ここまでの話では26インチや700cなど、どちらかと言えば、タイヤの大きさについての話が中心でした。
タイヤは大きさに加えて、幅(太さ)も重要な要素のひとつです。
タイヤの幅は主に、スピードと乗り心地に大きな影響を与えます。
細いタイヤは地面との摩擦が少なくなるので、よく転がるぶん、スピードが出ます。
しかし、空気圧を高くする必要があるので、安定感には少し欠けます。
一方、太いタイヤは、地面との接地面積が大きくなり、摩擦が大きくなりますので、スピードには欠けます。
しかし、充填する空気量が大きくなるぶん、クッション性が増すので、乗り心地は良くなります。
こういったことが考慮され、スピード優先のロードバイクには細目のタイヤ。
乗り心地優先のママチャリや、地面とのグリップ力が大事なMTBには、太いタイヤが採用されているわけです。
しかし最近では、やや太めのタイヤがトレンドになってきており、ロードバイクも多くの完成車に、700×25cのタイヤが採用されています。
それに伴って、ホイールのリムも幅が広がり、ワイドリム化の傾向になっています。
タイヤのサイズの変遷
タイヤはホイールを交換しない限り、大きさを変更することはできません。
ETRTOの項でも触れましたが、26インチのホイールに700cのタイヤは、どうやってもはまりません。
私が知っている中で互換性があるのは、MTBの29インチとロードバイクの700cです。
ETRTOでビード径が同じ622mmなので、理論上は可能ということです。
MTBの29インチ車は、「29er」とも呼ばれる特別な存在です。
大口径タイヤのMTBとして一世を風靡しましたが、レースの世界においてはオールマイティさを欠くため、に下火になりました。
さらには、市販車の面でも、街乗りに使える、スピードの出るMTBとして人気がありました。
しかし、ほぼ同じタイヤサイズであるクロスバイクの台頭により、29erは少数派へと落ちていきました。
このように、タイヤのサイズは時代の流れによって、刻一刻と変化していくものなんですね。
タイヤの大きさは覚えてしまった方が良い!
タイヤのサイズは、自転車の機種ごとに表記の仕方が違う、ややこしい状況でした。
現在は、ETRTOができたおかげで、少し整理されましたが、相変わらず旧表記の方が認知度が高い状況です。
そのため、自分の乗っている自転車は、タイヤサイズを覚えてしまうことが一番確実です。
そうすれば、タイヤ交換の際は、太さを決めるだけですからね。