ランドナーと言われて、ピンとくる人は、失礼ながらオールドな自転車ファンの人ですね。
ランドナーは旅行用の自転車として開発されている背景から、荷物を積んだり、未舗装路や林道などを走ることも多いので、タイヤは太めが多いです。
また、現在では旅先でのタイヤ交換を考え、汎用性の高い一般的な規格である、ロードバイクの700Cの規格を採用するものも増えてきています。
ランドナーとは?~今でもタイヤ交換はできる!
ランドナーは、フランス語で小旅行を表す「ランドネ」という言葉に、由来していると言われる自転車の種類です。
ドロップハンドルにダイヤモンドフレームですから、パッと見ればロードバイクと変わりませんが、スペックはだいぶ特徴的です。
まず、旅行に使うということから耐久性が重視されており、フレーム素材はクロモリが多いです。
また、荷物を搭載したり、未開発の地域を走ることも想定されているので、ロードバイクほど前傾姿勢になるようなジオメトリではありません。
太いタイヤを履くためにホイールベースが大きく取ってあるので、直進安定性に優れています。
タイヤは以前、650Aや650Bが主流だったものの、現在では旅先のタイヤ交換に対応するのが難しいなどの理由から、ロードバイクの700Cの規格のものが一般的です。
もちろん、今でも650A、650Bのタイヤも販売されていますから、タイヤ交換は安心してできます。
今現在、ランドナーとして販売しているメーカーは極めて少ないですが、スペック的にはツーリング車が、それに近いものになっています。
ランドナーは輪行を意識したものが多い
ランドナーには上記以外にも、定義とも言える特徴的なスペックがあります。
自転車旅行には欠かせない荷物の積載ですが、普通の日帰り旅行にはないテントや自転車の修理、タイヤ交換の必要性が出たときのための工具や衣類も、通常より多めが理想的です。
そのため、前後にキャリアが標準装備されていて、フレームにダボ穴が切ってあります。
泥除けが標準装備されていますが、これも自転車を持ち運ぶ輪行を想定して、ワンタッチで脱着できるものであったり、真ん中から分割できるものが多いです。
さらにハンドルは、通常のロードバイク用ドロップハンドルだと、握ったときに手が前かごやフロントバックに干渉するため、下が末広がりになっているランドナーバーを採用しています。
あとはブレーキですが、太いタイヤを想定して、カンチブレーキが採用されています。
カンチブレーキは構造上、ブレーキワイヤーを取り外すのが容易なので、輪行向きということもあります。
ほかにも、輪行を意識したものには、ダウンチューブシフターも挙げられます。
正統派ランドナー~アラヤ「SWALLOW Randonneur」
では、現在でも販売が継続されているランドナーをご紹介します。
日本の老舗鋼管メーカー「新家(アラヤ)工業」が手掛けるランドナーは、創業当時の自転車部門のブランド名であった「ツバメ自転車」の名前が入ったものです。
【SWALLOW Randonneur】
クロモリフレーム、メインコンポにシマノ・ティアグラを搭載し、フロント3速、リア10速の30段変速になっています。
アラヤ自社製の650Bのホイールに、パナレーサー38Bのタイヤ、日東のランドナーバー、シマノのカンチブレーキを装備と、国産メーカーの英知を結集した1台になってます。
ドライブトレインはクランク以外はシマノ製で統一し、フリクションタイプのダウンチューブシフターを採用しています。
ブルックス製の革サドルが、高級感を醸し出しています。
もちろん、泥除けとフロントキャリアも標準装備です。
正に「これがランドナーだよ」と教えてくれているかのような、ランドナーのお手本です。
このスペックを参考に、次項からはランドナーのタイヤ交換時に必要な知識をご紹介していきましょう。
ランドナーのタイヤ交換のために規格を確認しておく
先ほども少し触れましたが、ランドナーは650Aや650Bの規格のタイヤが装備されています。
この650という数字は、タイヤの外径をミリメートルで表したもので、A・Bはタイヤの太さを示す記号です。
記号に何ミリまでという制限はありませんが、だいたい、Aが34.925ミリ(1-3/8インチ)、Bが38.1ミリ(1-1/2インチ)とされています。
ところが、自転車のタイヤというのは、規格が複数存在するので、ややこしくなってきます。
ランドナーやロードバイクはミリ表記なのですが、MTBやママチャリはインチ表記です。
そのため、タイヤ交換のときに少し戸惑ったりしますが、そういったときは、ETRTO(エトルト)という統一規格を使います。
現在販売されているタイヤは、すべてにETRTO規格の表示がされているので、互換性がひと目で分かるようになっています。
ETRTOはタイヤの太さと、ホイールのリムにはめる部分のビードの直径をミリ表記するというもので、ホイールとの互換性も明らかになるので重宝します。
例えば、650Bであれば、ETRTOは38-584となり、これに合えば互換性があることになります。
ランドナーはロードバイクに似た自転車ですが、昔ながらのランドナーの650では、現行のロードバイクのタイヤは、ほぼ履けません。
ロードバイクは700Cの規格が一般的で、ETRTOのリム外径は622ミリなので、ランドナーのホイールでは合いません。
ランドナーのタイヤ交換のためにおすすめをご紹介
では、タイヤ交換のためにランドナー用のタイヤを、何本かご紹介しておきましょう。
【Panaracer(パナレーサー):650Bタイヤ コルデラヴィ ランドナー】
参考価格:¥2,100
自転車タイヤの国産メーカーと言えば、パナレーサーです。
現状では、ランドナータイヤの扱いは国産メーカーでは、パナレーサーくらいではないでしょうか。
サイズ・太さともに、往年のランドナーで、センターリッジというMTBとロードバイク用の中間のような用途のタイヤです。
ちなみに、同じ種類で650Aも用意されています。
【パナレーサー:GRAVEL KING SK 27.5×1.90(650B)ツーリングタイヤ】
参考価格:¥5,100
ランドナー用ではありませんが、商品名を見ればお分かりのように、650Bのタイヤなので、ランドナーに適合します。
うたい文句が「未舗装路から舗装路まで」なので、ランドナーの目的には合致していますね。
コンパウンドやタイヤ全面に補強材を施してあるので、耐パンク性や耐久性に長けた作りになっています。
かなり太めのタイヤなので、フレームによっては入らない可能性もあります。
【シュワルベ:MARATHON(マラソン) 650×40B】
参考価格:¥3,900
【Michelin(ミシュラン):WORLD TOUR 650X35B】
参考価格:¥1,500
海外の有名メーカーのランドナータイヤです。
グレードの問題だと思いますが、ロードバイク用よりは、少しお得なものが多い印象です。
タイヤサイズ700Cのランドナーも考えてみる
650ミリサイズのランドナータイヤは多くはありませんが、上記のように品揃えはされています。
しかし、いざ旅先でタイヤ交換が必要になった場合、ほとんどのお店に650ミリサイズのタイヤは、常備されていないと考えた方が良さそうです。
また、後々のグレードアップとしてホイールの交換を考えた場合にも、ランドナーの完成車を販売しているメーカーはホイールを手組みで作っているので、市販されているものがほとんどありません。
650B規格(27.5インチ)のMTB用ホイールであれば、取り付けは可能ですが、MTB用のホイールはランドナー向けとは言えません。
そのため、多くの選択肢を求めるのなら、最初からロードバイクと同じ700C規格のランドナーを選択する手もあります。
もちろん、太いタイヤが履けなかったり、外径が大きくなることで車高が高くなり、荷物の上げ降ろしが大変になるなどのデメリットもありますが、旅行を考えると汎用性は大切ですからね。
汎用性を取るか本来の姿を優先するかが難しい!
今回はランドナーについてタイヤ交換という観点から見てみました。
ランドナー本来の機能を活かし切るには、650ミリサイズのタイヤが良いのですが、マイナーな存在なので、旅先でのトラブルには対応しきれない可能性が高いです。
予備のタイヤとチューブをあらかじめ持っておくか、最初から700Cサイズのランドナーにするか難しいところではありますが、今回のお話が参考になれば幸いに思います。