自転車のサドルで穴や溝切りがされているのはなぜ?

自転車、特にスポーツタイプのサドルには、座面がまっさらで平坦なものは少なく、溝切りがされていたり、穴が開いているものもあります。

これはファッションでそうしているわけではなく、ちゃんとした理由があります。

そこで今回はその理由も含め、自転車のサドルの形状についてお話ししていきます。

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自転車のサドルの穴や溝切りは股間の圧迫軽減のため

最近のスポーツバイクのサドルは個性的なものも多くなりましたが、共通して言えるのは穴が開いているものや溝切りされたものが中心的存在になってきているということです。

サドルではお尻の痛みというのが永遠のテーマのごとく語られますが、中でも穴や溝は股間付近の圧迫を軽減するために設けられています。

スポーツバイクは大抵の場合ハンドルよりもサドルが高い位置にきますので、乗車姿勢が前傾します。

イスに座った状態で前傾姿勢を取ってもらえれば分かりますが、体が起きた状態に比べ明らかに股間付近が圧迫されます。

スポーツバイクでは個人差はありますが、10分、15分で股間付近にしびれが出てくるはずです。

これは圧迫によって血行が悪くなっている証拠ですが、これが続くと前立腺の病気になる危険もあるとされているのです。

そこで考えられているのが、圧迫される部分に穴を開けたり溝を切るサドルのことです。

穴開きや溝切りサドルは前傾姿勢が深くなる乗り方に有用性がある

自転車のサドル表面に施されている穴や溝切りは、股間への圧迫を軽減させるものであるとお伝えしました。

サドル表面の穴や溝はお尻に触れない部分ですので、結果として表面積が小さくなるのでかえって股間の圧迫が強くなる、と指摘する専門家もいます。

サドルに限らず人間が何かに座る際は、骨盤の最下部にある「坐骨」が体重を支える形になります。

そこで体重を支えるからこそ、安定した状態で座っていられるということです。

その考えからすれば、走行前に体が起きた状態でまたがった際は、表面積が小さくなったことで、坐骨以外の部分に圧力が掛かるのは納得がいく話です。

それほど前傾姿勢にならないママチャリやMTBに穴開きサドルが少ないのも、こういった理由が大きいでしょう。

しかし、筆者も含めてですが、多くのサイクリストは穴開きや溝切りサドルで股間の圧迫から解放されています。

日本人は胴長なのでサドルが高くなると、より前傾姿勢が深くなりますので、特にロードバイクではこういった種類のサドルの有用性はあるはずです。

穴開きではなく溝切りサドルにこだわるメーカーもある

イギリスの新進気鋭のパーツブランド「ファブリック」は、穴開きサドルを一切製造していません。

穴開きサドルは完全にくり抜くためベースにまで穴を開けますので、ファブリック曰く強度が下がると言います。

その分座面を硬くして強度を出す必要があるので、結果としてお尻に優しくないサドルになるということです。

また、かたくなに穴開きサドルを製造しなかった「フィジーク」が、このほど初めて穴開きサドルを製造しました。

また、何十年と封印してきた「ブルックス」も、近年穴開きサドルを復刻版として再開しています。

この流れからするとファブリックの戦略は不利に映りますが、穴を開けるのではなく溝切りで股間の圧迫は十分に軽減できるというのがファブリックの考えです。

定番の人気サドルである「スクープ」をベースに、中央に溝を切った「ライン」というモデルで、他メーカーの穴開きサドルに挑戦しています。

筆者は残念ながら試してはいませんが、インプレを見ていると股間の圧迫に対する不評は聞こえてきません。

ファブリックのスクープはお尻へのフィット感のよさが評価されているサドルであり、その評価を落とすことなく、股間の圧迫も軽減できているとなります。

世界的サドルブランドが穴開きと溝切りの両立を狙っている?

前項でもお伝えしましたが、世界的なサドルブランドであるフィジークもついに穴開きサドルを2018年モデルから投入しました。

それまではほぼファブリックと同じ理由で、強度や剛性を保てないことから溝切りモデルを推奨してきました。

フィジークの穴開きモデル「OPEN(オープン)」は、ベースにナイロンやカーボンを使用しており、しなりと強度を確保しています。

ベース自体に強度を持たせることで、乗り心地が悪くならないような工夫がされているということで、穴開きサドルの弱点を補完し優れたサドルという評価をされています。

しかし、世界的なブランドでありながら、ようやく2018年モデルに穴開きが登場したということは、圧迫の軽減に関しては溝切りで十分という認識があったからでしょう。

実際にフィジークは穴開きのOPENの販売と同時期に、溝切りモデルの「VERSUS(バーサス)」もモデルチェンジしており、さらに進化を遂げています。

これは、穴開きと溝切りは両立させていくという強いメッセージとも受けとれるので、どちらが優れているという判断は難しいところです。

サドルは実際に乗ってみなければ分からない部分もある

穴開きサドルは穴のエッジ部分に会陰部が当たってしまい、圧迫が大きくなるという意見があります。

しかも、穴が小さいタイプですと、エッジを回避しようとして別の場所に座ることになりますから、今度は圧迫そのものが回避できなくなり、穴開きの意味がなくなります。

しかし、穴を大きくすると強度が落ちるので、溝切りが推奨されているというのは前項でもお話しした通りです。

ただ、サドルというのは本当に微妙なもので、穴の大きさが違うだけでエッジが当たらないこともあるので、問題なしと主張する人もいるのは当然のことです。

また、サドルの極端な位置に乗る場合であれば、穴や溝の意味はなさないこともあります。

もし、推奨部分よりも前に乗る場合は、先端部分まで穴や溝があるものでなければ圧迫は回避できません。

したがって、一概に穴開きや溝切りがよいとは言えず、結局は自分で使ってみないことにはフィットするか分からないというのが本当のところです。

サドルに穴や溝切りがされていれば股間が圧迫されないとは限らない

穴開きや溝切りがされているサドルについては、股間の圧迫に悩んでいる方は一度試す価値があります。

個人差があるので「試す価値」などという若干曖昧な表現になりますが、多くの先人たちが解消に向かったとの報告がありますから信じてよいと考えられます。

ただし、股間の圧迫は座面の硬さや幅にも関係があり、根本的な理由がそちらの可能性もあります。

座面は硬いと圧迫が強いと思っている方が多いかもしれませんが、実は柔らかいものも痛みの可能性があります。

サドルの中でも、クッション性があり過ぎて体が沈んでしまうような柔らかさでは、レーシングパンツやズボンが引っ張られて股間と擦れるので違和感やしびれが出ます。

また、お尻は坐骨が支えているとお伝えしましたが、幅の狭いサドルですと坐骨が外にはみ出てしまいます。

そうなれば坐骨では体重を支えられず、別の部分に圧力が掛かるようになり、特に股間は座面に直接当たってしまうので、大きな圧迫が避けられなくなります。

したがって、穴開きや溝切りモデルであっても、こういった要素も考慮して選ぶ必要があるということです。

自分に合ったサドルは簡単には見つからない

今回は自転車のサドルについて、股間の圧迫軽減をテーマにお話ししてきました。

穴開きや溝切りがされているものは、多くのサイクリストが恩恵を受けてきている歴史があるので推奨はできます。

しかし、個人差があるのは否めませんし、それで全てが解消するとは限りません。

月並みな言葉ですが、サドル選びは「沼」と言われるほど奥が深く混迷するものですので、実際に乗って試してみるしかありません。