自転車パーツのメーカーとしては世界最大の規模である「シマノ」は、ロードバイク用のコンポでトップのシェア率を誇ります。
シマノのコンポにはグレードがありますが、特に価格の差が大きいため、筆者は「一体どこにそこまでの違いがあるのか」、という質問を受けることも少なくありません。
そこで今回は、シマノのコンポについて、グレードの違いはどこに出るのかを検証していきます。
シマノのロードバイク用コンポの概要
今回はシマノのロードバイク用コンポについて、グレードの違いによる差を検証していきますが、まずは全体像からお話ししておきます。
シマノのロード用コンポには、完成車にグループセットで導入される正規グレードが6つあります。
グレードは以下のようになります。(上から上位グレードで価格はセットの定価)
Dura-Ace(デュラエース):約21万円(電動式変速Di2モデル:約30万円)
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ULTEGRA(アルテグラ):約10万円(電動式変速Di2モデル:約13万円)
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105(イチマルゴ):約6万円
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TIAGRA(ティアグラ):約5.5万円
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SORA(ソラ):約3万円
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CLARIS(クラリス):約2万円
ひと目で違いが分かるのは価格の差で、特に最上位モデルのデュラエースがセカンドのアルテグラの2倍以上になりますので、別格の存在です。
また、分かりやすいグレード間の違いはリア変速の段数で、上記の上から3番目までは11速、ティアグラは10速、ソラは9速、クラリスは8速になります。
あとは重量ですが、これも価格同様グレードが上がるに連れて軽量になっていくという図式で、下位モデルのソラとクラリスはグループ一式の重量は公表されていませんが、実測値ではデュラエースの1.5倍程度とされています。
シマノのロードバイク用コンポの違い①ブレーキ
前項では、シマノのロードバイク用コンポの大まかな違いをお伝えしましたが、ここからは、パーツ別にどんな違いがあるのか見ていきます。
まずは、ブレーキです。
性能に大きな差があると言われるのがブレーキで、特にティアグラ以下のグレードになると路面の状況によっては効きに不安が出ることもあります。
ロードバイクのキャリパーブレーキは、アームの先に付属しているブレーキシューが左右からホイールのリムを挟み付け、そこで起こる摩擦で回転を止める仕組みです。
そのアームがワイヤーに引っ張られる際に剛性が弱いと、たわんでピタッとリムをつかめないので効きが悪くなります。
また、ブレーキシューも下位グレードと上位グレードでは精度が違うので、制動力に影響が出ます。
ブレーキは命に関わる部分なので妥協をしてはなりませんし、そこまでコストが掛かるわけではないにも関わらず、なぜかコストダウンの対象にされがちです。
それなので、筆者はシマノであれば105以上のブレーキをおすすめします。
なお、リア11速の3グレードにはディスクブレーキも用意されています。
シマノのロードバイク用コンポの違い②フロント変速
前項ではシマノのコンポについて、まずブレーキの違いをご説明しましたが、続いては変速機の違いです。
まずフロント変速からですが、ロードバイクの場合大半が2段であり、軽いギアの方が「インナー」、重い方を「アウター」といいます。
フロント変速は、クランクの先に付いているギアの歯車(チェーンリング)にチェーンを掛け替えることで変速するという仕組みです。
その際に、チェーンを保持してギア間を動くのが、「フロントディレイラー」になります。
上記のようにフロントは2段しかスピードの変化がなく、ギアの歯数が違うのでフロントディレイラーの動きが大きくなります。
そのため、フロントディレイラーが精度を欠くと、変速が「ガッシャン」という感じでスムーズではないですし、最悪の場合チェーンが落ちてしまいます。
ソラやクラリスも近年のモデルチェンジで、フロントディレイラーの動きは依然と比べだいぶ滑らかになりましたが、それでも上位グレードにはかないません。
特に電動式変速のDi2のなめらかさはケタ違いで、ピタッと正確に変速されるという感覚は、ワイヤー式にはないものです。
シマノのロードバイク用コンポの違い③クランク
前項でお話ししたフロント変速には、当然ですが「クランク」も関わります。
正確に言うとクランクの先に付属しているギアの歯車であるチェーンリングですが、これもコンポのグレードによっての違いは明らかです。
先述しました通り、フロント変速は動きが大きいので、チェーンリングにも負荷が掛かります。
この時にチェーンリングの剛性が低いと変形しますので、チェーンが収まるまでに時間が掛かる、いわゆるタイムラグが生まれます。
それがスムーズさを欠く一つの要因であるので、シマノの上位グレード(デュラエースとアルテグラ)はチェーンリングに剛性を高める加工がされています。
そのため、変速の正確さという意味では、上位2グレードが優位となります。
そして、クランク自体もグレードによって剛性が違います。
チェーンリングを保持しながら回転するクランクアームにはペダルを漕ぐ力が掛かりますので、剛性が低ければ変形して力が吸収されてしまいます。
それを防ぐためにシマノでは、アームの中をくりぬいて中空構造にすることで剛性を高めるという技術(ホロ―テック)を採用しています。
しかし、ホロ―テックは、2018年11月時点の情報では、105以上のグレードにしか導入されていません。
そのため、105以上はガチッとした踏み応えで、それ以下のグレードになると少し力が抜けてフワフワしてしまうような感覚になります。
シマノのロードバイク用コンポの違い④リア変速
続いてのシマノコンポはリア変速ですが、リアは後輪のハブに付属しているギアの歯車である「カセットスプロケット」の歯間を、チェーンを保持した「リアディレイラー」が行き来する仕組みです。
リアは8速から11速まであり、フロントに比べ歯間が小さく1回の変速の動きが少ないので、グレードによる性能の違いが分かりにくい部分です。
スプロケットの素材や作り込みの精巧さなどが違いますので、重量や見た目は上位グレードの方が優位ですが、性能の違いは微々たるものです。
強いて言えば、上位の3グレードは転倒時や細い道を抜ける際に障害物へのヒットを防ぐために、横に張り出しの少ない「シャドー形状」になっている点です。
しかし、これも順次導入されており、いずれティアグラ以下もこれを受け継いでいくかと思いますので、急ぐ必要はないかと思います。
性能面以外のシマノコンポの違い
ここまでシマノのロードバイク用コンポのグレードによる違いについて、主に性能面から確認してきました。
そして、性能面以外の違いで大きいのは、耐久性です。
上位グレードの方が寿命が長いと言われており、デュラエースに至っては5万キロ乗っても故障一つ無いというインプレ情報を見たことがあります。
下位グレードだからすぐに壊れるという意味ではなく、あくまでも寿命が長く、上位グレードは長期間使用に耐えられるということです。
また、これはシマノの位置付けなので違いと言うよりは参考程度ですが、105以上はレースモデルとされています。
ギアの多さ、変速の正確さ、制動力の強さ、耐久性、レースに必要なこれらの要素は今回確認してきた中で確かに違いが明確でしたので、その位置付けもうなづけるところです。
完成車でもレースモデルとされている機種には105以上が付属していることが多いので、レースが視野に入っているかどうかで選択肢が変わってくるのも事実です。
シマノのコンポは想像以上にグレード間の差が大きい
今回はシマノのロードバイク用コンポについて、グレード間の差はどこに出るのかというテーマで確認してきました。
価格や重量など目に見えて明らかな部分から、細かな性能、耐久性の違いまで、想像以上にグレード間の差は明確でした。
中でもブレーキだけは生死に関わる問題なので、妥協せず最低でも105を基準に考えてください。