ピナレロの「PRINCE(プリンス)」は現役のモデルでは最も歴史が古く、2019年のラインナップに登場したモデルが5代目になります。
今回はそんなプリンスの歴史も振り返りながら、新しいモデルのインプレ情報などもお伝えしていきます。
新時代が到来したと言われているピナレロの、今後の柱になっていく存在かと思いますので、ここで確認をしましょう。
ピナレロ・プリンスを振り返る~カーボンバックとONDA
ピナレロはレースと共に発展を遂げてきたブランドであり、プリンスも多くの名選手に供給されてきたモデルです。
初代プリンスは1998年に、世界初のシートステイにカーボンを使用した「カーボンバック」のアルミフレームとしてデビューを果たします。
カーボンバックは他メーカーもこぞって追随し一躍世界で大ブームを巻き起きしますが、その火付け役になったのがプリンスでした。
この時期は、弱冠23歳でツール・ド・フランスに優勝した、ヤン・ウルリッヒ選手がプリンスで大活躍していました。
2代目プリンスはピナレロの象徴である、ONDA(オンダ)のデビューに伴って「プリンスSL」にモデルチェンジされます。
インプレ情報では、今もなお全ての機種に採用されているONDAの技術が、初めて投入されたのがプリンスであったことを、感慨深く思う報告もされています。
この時期は現在もフラッグシップモデルとして君臨する「DOGMA(ドグマ)」がデビューしており、プリンスとの二大体制であったと言われています。
ピナレロ・プリンスを振り返る②~消滅→完全復活
ピナレロ・プリンスの歴史を振り返っています。
2008年に3代目となるプリンスは再びフラッグシップに帰り咲き、フルカーボンの「プリンスカーボン」となります。
アレサンドロ・バルベルデの大活躍や、レースバイクオブザイヤーを2年連続で獲得し、プリンスを名車に決定付けたモデルでした。
その後は再びドグマがフラッグシップに収まり、プリンスは一時期ラインナップからも外れます。
2015年モデルで復活となった4代目は、その年に使命を終えることになる「ドグマ65.1」と同じ金型を使い、素材やパーツ構成が見直された継承モデルでした。
新しいフラッグシップの「ドグマF8」がエアロ形状に寄ったので、プリンスが伝統の継承モデルとしてコアなファン層に支持されました。
そして、2018モデルまで続いた4代目が2019モデルでリニューアルを果たし、5代目となります。
マスコミ発表直後のインプレ情報では、新しく独自の金型で製造されるということもあり、「完全復活」として喜ぶ声が多かったですね。
ピナレロ・新プリンスのインプレ評価
それでは新しくなったピナレロ・プリンスを、インプレ評価も交えながらご紹介していきます。
2019モデルのプリンスはフラッグシップである「ドグマF10」の技術を受け継いだエアロロードで、ピナレロ全体のセカンドグレードの位置付けになりました。
これまでGAN(ガン)が担ってきた位置に収まる形となり、ガンは2019モデルよりノーマルグレードのみの展開となります。
前項でも触れたように、プリンス専用の金型が使用されており、見た目はF10と瓜二つではありますが、細部に独自の技術が施されています。
ドグマF10の売りであるTT(タイムトライアル)バイクの技術である、ボトルケージ部分を大きくへこませた「Concaveダウンチューブ」や、フォークの先端に整流効果を高めるフィンを取り付けた「フォークフラップ」は同様に採用されています。
しかし、プリンスはドグマよりも少し弾性率が低くしなやかな素材を使用しているため、独自のデザインや技術で空力性能を高めるという方法を取っています。
テストドライバーさんのインプレ評価でも、その工夫は伝わっているようで、レースにも十分使えるという意見が多く見られています。
ドグマより扱いやすいというインプレ評価はコンセプト通り!
プリンスはセカンドグレードの使命として、「多くのライダーに最高の乗り心地とハンドリングを届ける」がコンセプトの一つになっています。
その一つが前項でもお伝えした素材であり、ここからご説明するプリンス独自の技術によるものです。
ハンドリングの安定感という意味では、思ったところにバイクを運ぶという「ピナレロ・ハンドリング」の強化を図っています。
ダウンチューブの前側に切り欠きを設けて前輪を沿わせ、フォーククラウンとヘッドチューブをドグマ以上に一体化しています。
これにより、気流の乱れを抑制しハンドル周辺の空気抜けが良くなることで、安定したハンドリングが可能になっています。
また、左右非対称の「アシンメトリックデザイン」も、ドライブ側のボリュームを増加させることで、剛性と走行性能のバランスを図っています。
これはテストドライバーさんの試乗インプレでも、ドグマよりも扱いやすいという評価がされており、裾野を広げるという、セカンドグレードのコンセプト通りに仕上がっているようです。
ピナレロ・新プリンスのモデル別スペック
ピナレロの新プリンスは上位グレードの「PRINCE FX」、とノーマルの「PRINCE」、そしてディスクブレーキ仕様の「PRINCE DISK」の3モデルが用意されています。
2018年10月時点の情報としては、販売店にぼちぼち並び始める時期なので、購入のインプレ情報はまだなく、どのモデルが人気なのかは不明なところではあります。
そのため、スペックの詳細を確認し、どのモデルが良いのか検証していきましょう。
それぞれにフレームセットと完成車が用意されていますので、以下に一覧でまとめます。
【PRINCE FX】
フレーム素材:T900 3Kカーボン
フレーム重量:940g(53サイズ)
価格(税込)
シマノDURA-ACE Di2 完成車:¥1,047,600
シマノULTEGRA 完成車:¥570,240
フレームセット:¥491,400
【PRINCE】
フレーム素材:T700 12Kカーボン
フレーム重量:960g(53サイズ)
価格(税込)
カンパニョーロPOTENZA 完成車:¥469,800
シマノULTEGRA 完成車:¥469,800
シマノ105 完成車:¥404,250
フレームセット:¥297,000
【PRINCE DISK】
フレーム素材:T700 12Kカーボン
フレーム重量:980g(53サイズ)
価格(税込)
シマノULTEGRA 完成車:¥516,240
フレームセット:¥318,600
購入インプレ情報が無い中でどのモデルが良いか検証する
前項でご紹介したスペックを見て頂くとお分かりかと思いますが、まず価格に相当な差があるので、少々無責任にはなりますが、予算次第というところがあります。
FXは確かにピナレロが用意した素材では限界とも思える軽量化を果たしており、乗り比べをしているインプレ情報でも、軽快感や加速力の違いは指摘されています。
しかも、少し不思議な部分として、FXとノーマルではフレームセットで20万円近い差があるのですが、シマノULTEGRAの完成車の価格差は10万円以下です。
スペック表を見る限り両者の付属パーツは同じ物ですので、明らかにFXの方がお得な価格設定になっています。
そのため、コンポにULTEGRAを選ぶならFXがおすすめになります。
しかし、105搭載車になればグッと価格差が大きくなりますから、ノーマルにしておいて後からパーツをカスタムして性能を上げていくという方法もあります。
また、プリンスくらい衝撃吸収性に優れたフレームですと、用途の幅も広がり路面状況を問わない走りもしたくなるものです。
そういった志向が強いのであれば、ディスクブレーキモデルも視野に入れてみてください。
新時代を築く存在に復活!
今回は、ピナレロの新・プリンスをご紹介しました。
名車として歴史を築いてきた威信を取り戻すかのような完全復活で、ドグマと共にピナレロの新時代を作り上げる存在になりました。
ドグマの持つモンスター性が和らぎ、優しい味付けもされていますので、幅広いそのユーザーさんに受け入れられるはずです。