ロードバイクに限りませんが、何か大きな買い物をする時に自分の考えだけで決めるのは難しく、評価や評判を確認することがあるかと思います。
日本もネット社会と言われて久しいですし、SNS全盛の現代では様々な評価を簡単に見ることができます。
そこで今回は、アンカーのロードバイクについての評価をまとめ、筆者なりの意見も交えて検証してみます。
アンカーはプロチームに機材としてロードバイクを提供する
「アンカー」は日本が世界に誇るタイヤメーカー「ブリヂストン」の自転車部門から独立した、「ブリヂストンサイクル」のスポーツバイクブランドです。
ロードバイク、MTB、シクロクロス、トラックレーサーなど、多くのカテゴリーに製品をラインナップさせています。
ブリヂストンは世界的なメーカーですが、アンカーは海外に自転車を輸出していませんので、世界的に知名度は高くありません。
まして、正直言って日本国内でもシェアはそれほど高くありませんので、これだけ多くのカテゴリーに渡って生産できるのは少し不思議な感じもします。
しかし、それは自転車業界からすれば当たり前のことでもあります。
その理由は、ブリヂストンサイクルはプロチーム「チーム・ブリヂストンサイクル」を運営しており、そこに供給する機材を生産しているのがアンカーだからです。
これは、世界の有名メーカーも同様で、プロのロードレースチームに機材を提供するのが、ロードバイクメーカー最大のステータスになっています。
そして、そのレースでの結果がメーカー(ブランド)全体の評価に繋がるわけです。
今はロードバイクの裾野も広がり、一般ユーザーの口コミやインプレの情報も評価の対象にはなりますが、何と言ってもロードバイクメーカーの評価の基準はレース、しかも世界最高峰のレースです。
ツール・ド・フランスを走ると高評価になるのがロードバイク
前項では、レースの結果がロードバイクメーカーの評価に直結するという話をしました。
これは筆者の独断ですが、日本で知名度の高い海外のスポーツバイクメーカーは、「ジャイアント(台湾)」「トレック(アメリカ)」「スペシャライズド(アメリカ)」「キャノンデール(アメリカ)」「ビアンキ(イタリア)」だと感じています。
上記のメーカーは、日本に直営店を持つところもありますし、プロショップでの取り扱いが目立ちます。
また、筆者の周りでも乗っている人が多いです。
そして、この5つのメーカー(ブランド)は全て、2018年のツール・ド・フランスを走っています。
前項でお話しした世界最高峰のレースというのは、ツール・ド・フランス(以下ツール)のことであり、他のグランツールやワンデーのクラシックレースに比べても、頭一つ抜けた存在です。
しかしアンカーは、残念ながらツールに参戦した経験はありません。
と言いますのもアンカーに限ったことではなく、日本のメーカーは長年に渡りツールに参戦を果たせていません。
この点だけでも、一歩引いて見られてしまうのが現状であり、性能やデザインを見る前に「ツールを走っていない」ということだけで評価が下がるのが、もはや常識とさえなっています。
アンカーは日本人のためのブランド
前項までは、レースと知名度(ブランド力)の関係をお話ししたわけですが、ではツールを走っていないメーカーのロードバイクが性能やデザインで著しく落ちるのかと言われれば、決してそんなことはありません。
参戦していないメーカーにも名車と言われるバイクは多数存在しますし、参戦しているメーカーでも、プロ仕様以外の機種の方が評価が高いなんてこともあり得ます。
ですから、趣味の乗り物であるロードバイクにとって確かにブランド力は大切ですが、それに左右され過ぎず、自分に合ったものに乗るということも重要です。
ロードバイクはここまでお話ししているように、欧米のメーカーが中心ですから、欧米人の体格に沿って生産されています。
成人男性の平均身長で日本人を10㎝以上も上回る国もあるくらいですから、その体格に合わせて作ったものは日本人に合わない可能性も高いです。
個人の体型もあるので一概には言えませんが、平均して欧米人よりも腕が短い日本人にとっては、サイズ比でトップチューブが長くなる傾向にあります。
トップチューブが長いとハンドルからサドルの距離が離れますので、前傾が深くなり、無理な乗車姿勢になってしまいます。
その点でアンカーのロードバイクは、日本人の体型に合わせトップチューブを短めにしていますので、割と楽にポジションが出せるようになっています。
アンカーのロードバイクが小柄な方に評価される理由とは
アンカーのロードバイクは日本人の体型に合わせるというコンセプトがあり、その一環が前項でお話ししたトップチューブの長さです。
そこを評価してアンカーのロードバイクを選ぶ方も多く、サイズ展開が多いことも併せて、「適切なポジションで乗ってもらう」というアンカーの基本理念が理解されているようです。
アンカーのもの作りは「日本人の体型に合う」が基本ですから、小さいサイズもありますが、単にコンパクトに作っているだけではありません。
大きいサイズのものを単に縮めるような設計をしてしまうと、ハンドルとペダルの距離(リーチ)が異様に近くなることがあります。
そうなるとハンドルを切った時に足が前輪に触れてしまい、非常に危険な状態になります。
特に女性は男性に比べ脚が長いという傾向があるらしく、距離が近いと詰まってしまい乗りにくいという話を聞いたことがあります。
しかし、アンカーはフロントフォークを前にずらす「オフセット」の値をサイズごとに変え、適度に前輪を前に出しますので、足が干渉することがなくなります。
それにより、前足と前輪の距離も保てますので詰まり感の無いポジションが取れます。
アンカーの「セレクトパーツ」は高く評価できる!
前項までにお話ししたアンカーのフレーム作りは、代表的なものをピックアップしており、フレーム以外でも評価しなければいけないことが多くあります。
その一つに、完成車のパーツを任意に選択することができる「セレクトパーツ」があります。
サイズや乗車ポジションに関わるところでは、ハンドルの幅、ステムの突き出しの長さ、クランクのアームの長さなどが選べます。
しかも、これは独自のフィッティングシステムを使用し店頭で測定を行い、目安のサイズを出してくれますので、それに沿って選択することができます。
また、チェーンリングやスプロケットの歯数、ホイールやタイヤなども数種類用意されています。
ロードバイクの完成車はパーツメーカーとのしがらみがあったりもしますので、悪く言えばさばいてしまいたいものが取り付けられている可能性もあります。
そのため、パーツを任意に選べるというシステムは、ありそうでないアンカー独自のものなので、高評価に値するところと言えるでしょう。
アンカーはクロモリフレームでも高い評価を受けている
アンカーのロードバイクには、フレームの素材別にカーボン、アルミ、クロモリとあります。
中でも長い歴史を持ち、こだわりを持って製造され続けてきたのが「クロモリ」フレームのロードバイクです。
今はロードバイクのフレーム素材はカーボンが主流で、エントリーモデルにアルミが並ぶという図式です。
しかし、カーボンやアルミが重用される前は、自転車のフレームといえば「鉄」が主流でした。
クロモリは鉄に「クロム」や「モリブデン」を添加させた合金の一種で、正式名は「クロムモリブデン鋼」です。
鉄よりも強度が出るために、昔から世界を転戦するレースに合う素材として、ロードバイクのフレームに使用されてきました。
ただ、昔は鉄を自由な形のチューブに加工する技術はなく、自転車のチューブといえば丸形オンリーという状況でした。
しかし、丸形のチューブは溶接部分など一点に力が集中しやすく、強度や剛性に問題を抱えていたのです。
ブリヂストンは非常に早い段階でそれを見抜き、解消に向けた行動を起こしていました。
その結果、今では当たり前となっている1本のチューブ内に厚みの変化を持たせる「バテッド」や、油圧でチューブ内から外に押し広げるようにして自由な形を作る「ハイドロフォーミング(バルジ成形)」を、成形の自由度が低いクロモリで実現したのです。
さらに、「ネオコット」と呼ばれるこの技術はすぐに結果を出すことになり、オリンピック出場にまで至ります。
これにより、世界から評価を受けることになりました。
最初にネオコットの技術が導入されてから30年近く経った今も、主力バイクの一角としてクロモリフレーム車が残っているのは、ブリヂストン・アンカーの高い技術の賜物です。
日本人のためのもの作りを評価したい!
今回は、日本のバイクブランド「ブリヂストン・アンカー」のロードバイクの評価について考えてみました。
ブランド力では世界の強豪たちには及びませんが、日本人の体型や性格に寄り添ったもの作りが評価されています。
特にクロモリは世界的に高評価を受けていますので、ぜひ一度乗り心地やデザインを確認して頂きたいですね。