「bb30」は、自転車メーカーのキャノンデールが提唱したbb(ボトムブラケット)の規格です。
30という数字はサイズを表しているのですが、実際にどの部分のサイズを指しているか、ご存知でしょうか。
そこで今回は、bb30の規格や、交換用のベアリングを購入する際に注意すべき点について、ご紹介します。
まずはbb30という規格を正しく理解しよう
自転車のクランクが取り付けられているところを、専門用語で「ボトムブラケット」と呼びます。
一般的には「bb(ビービー)」と略されており、こちらで呼んでいる方が多いことでしょう。
このbbには、たくさんの規格があります。
代表的なところでは「JIS/BSA」や「ITA」といった昔からあるもので、フレームにねじ山が切られており、ここにbbをねじ込んで取り付けるので「ねじ切り」と称されたりもします。
そして、最近多いのが「bb30」や「プレスフィット」といった規格で、こちらはフレーム側にはねじ山がなく、bbを圧入する必要があります。
bbのサイズを大きくすることで、クランク軸周りの剛性を高めようとする過程で、他にもさまざまな規格が登場してきました。
そして厄介なことに、これらのbb規格によって、フレームにbbが収まる「シェル」や、回転を担う「ベアリング」など、各部のサイズが異なっているので、注意が必要です。
今回は、そんな数あるbb規格の中から「bb30」にスポットを当てます。
bb30は、自転車メーカーのキャノンデールが提唱したもので、キャノンデール以外のメーカーへも波及しています。
圧入するbbとしては先駆けとも言える存在で、従来の「JIS/BSA」や「ITA」よりも、クランク軸を太くしているのが特徴です。
bb30の「30」はシャフトのサイズを指す
ところで、bb30の「30」の数字は、何を指しているものでしょうか。
自転車のbb規格でもっとも一般的である「JIS/BSA」は、bbがフレームに収まるシェルの幅が68mm、シェル径が34.8mmとなっています。
このJIS/BSAのbbシェルに、シマノのクランク規格「ホローテックⅡ」用のbbとクランクを取り付けると、クランク軸サイズは24mmとなります。
一方でbb30は、シェル幅は同じく68mmなのですが、シェルの径は42mmあり、シャフト径は30mmとなっています。
そう、bb30の「30」とは、シャフト径を指しているのです。
24mmから30mmへとシャフトのサイズをアップさせることで、剛性向上を狙っています。
ちなみに、bb30から派生した「bb30A」という規格もありますが、こちらはシェル幅が73mmと、異なる規格です。
ややこしいので、気を付けたいですね。
次章からは、シェルにベアリングを直接圧入する際のお話をしていきます。
シェルにベアリングを直接圧入するbb30のメリット
bb30にはもうひとつ、左右のペダルの幅(Qファクター)が狭くなるというメリットもあります。
JIS/BSAのbbシェルに、ホローテックⅡのbbを取り付けると、bbはフレームの外側に位置します。
一方でbb30は、ベアリングがすっきりとフレームのシェルに圧入され、左右には一切飛び出さないので、シェル幅は同じでもQファクターを狭めることもできるのです。
ただし、bbシェルにbbを圧入することは、メリットだけではありません。
JIS/BSAのようなねじ切りのシェルの場合、フレームのシェルにねじ山を設けなくてはなりません。
ねじ山を規定サイズできれいに作るには、高い精度が必要ですが、実際には精度が低い状態で出荷されることも多く、販売店で自転車を組み立てる際にねじ山をさらう作業が行われるほどです。
では圧入するbb30ではどうかというと、こちらもベアリングがぴったりと取り付けられるように、シェルには高い精度が求められます。
この精度が低いと、bb30でよく問題となる「異音」の原因となってしまうのです。
径サイズが24mmのクランクはアダプターを介して使う
bb30の弱点としては、シマノとの互換性に問題があるということも挙げられるでしょう。
bb30対応のフレームはシャフト径は30mmですが、シマノのホローテックⅡはシャフト径が24mmとまったくサイズが異なるので、そのままでは装着することができません。
また、シマノはbb30のシェル径(42mm)に対応し、ホローテックⅡクランクが使用できるbbを発売していません。
そのせいもあって、bb30をもっとも多く採用しているキャノンデールの場合、ロードバイクの完成車には基本的にシマノ以外のクランクが使われています。
しかし、シェルの径やシャフト径が異なろうとも、ベアリングのサイズが異なろうとも、互換性を持たせる方法はあります。
それは、各パーツメーカーが発売しているbbやアダプターを使用することです。
やり方は2種類あり、ひとつは「bb30のシェルに対応し、ホローテックⅡクランクが使用できるbb」を使うこと、もうひとつは「bb30のシェルに取り付けることで、ホローテックⅡ対応のbbが使用できるアダプター」を使うことです。
いずれの場合も、本来bb30が持つメリットは享受できませんが、シマノのクランクが使いたいという場合は有用な手段でしょう。
ベアリングのサイズが同じなら何でも大丈夫か
さて、bb30の肝となっているのは、なんと言ってもベアリングです。
ベアリングの性能が高ければスムーズに回転します。
しかし、雨の日にサイクリングしてメンテナンスせずにいればベアリングが劣化してしまい、異音の原因になります。
より高性能なベアリングに交換したり、劣化したベアリングから新品のベアリングに交換したいという方も多いでしょう。
bb30のベアリングは、自転車パーツメーカーから発売されていますので、ロードバイク専門店でベアリングを購入したり、作業をお願いすることは可能です。
しかし、冷静に考えてみると、自転車のbbのためだけに特殊なベアリングを使用しているとも思えません。
そこでbb30で使われているベアリングのサイズを調べると、外径はシェル幅と同じ42mm、内径はシャフト径と同じ30mm、ベアリングの幅は7mmであることがわかります。
そして、ベアリングの両側に内部を守るための「接触式ゴムシール」があります。
実は、このタイプのベアリングは、機械では広く一般的に使用されているものなのです。
例えば、日本を代表するベアリングメーカー「NTN」の製品であれば「6806-LLU」というベアリングが適合します。
複数のベアリングメーカーから同じ規格のベアリングが発売されており、価格は自転車パーツメーカーが販売している物の半分以下の場合もあります。
ベアリングの圧入作業は慎重に行おう
bb30のベアリングを、ユーザー自身が交換することはできるのでしょうか。
結論から言えば、適合するサイズのベアリングと、交換作業に必要な工具を揃えれば交換作業は可能です。
必要になる工具は、bbシェルに圧入されたベアリングを取り出すためのリムーバーと、再度ベアリングを圧入するための専用工具で、それぞれ自転車用工具メーカーなどから発売されています。
ベアリングを取り外すときは、専用のリムーバーを使い叩き出します。
叩くと言っても、慎重に作業しないとbbシェルを傷付けてしまいますし、ベアリングをグリスアップして再利用したい場合は、よりいっそうの注意が必要です。
そして、ベアリングを取り付ける際は、専用ツールで締め込むように圧入するのですが、この作業もベアリングが斜めに入ってしまわないよう、慎重さが求められます。
ベアリングを取り外す際にbbシェルを傷付けたり、ベアリングがまっすぐ取り付けられていない状態で無理に圧入すると、大きなトラブルにつながります。
そのため、自信がない方はショップに作業をお願いするのが無難でしょう。
bb30のフレームと付き合うには覚悟と諦めも必要か
自転車のbbには、さまざまな規格が乱立状態ですが、そのような状況を作り出したきっかけは、bb30の登場でした。
bb30は採用しているメーカーが少なく、音鳴りが生じやすいといったデメリットも語られますが、一方で剛性の高さなどメリットもあるため、今日でも生き残っています。
規格品のベアリングが使える点も、長期的なメンテナンスという意味ではメリットと言えるかもしれません。
音鳴りについては、ある程度諦めるか、ホローテックⅡ互換などのbbに交換することも視野に入れましょう。