皆さんはシクロクロスという競技をご存知でしょうか?
専用のダートコースを走行しながら、道中には自転車を担いで走る区間があるという、極めて珍しいレースです。
シクロクロス競技には専用のバイクが使用されますが、メリダにはその名の通りシクロクロス(CYCLO CROSS)というバイクがあります。
今回はその中でもアルミフレームを採用した、シクロクロス500についてお話ししていきます。
シクロクロス競技を知ろう
シクロクロスは、冒頭でもお話ししたように、ダート(砂地)が敷き詰められたコースを走る自転車競技で、世界選手権まで行われる人気競技です。
1902年に、発祥の地とされるフランスで国内選手権が行われたということから、100年以上の歴史を持つ競技でもあります。
その成り立ちは諸説ありますが、かつては冬場で作物を何も作らない時期であれば、畑に立ち入ることが許されていたため、競争中の近道で畑を通ったことが起源とも言われています。
また、競争では無くてもトレーニングのために不整地の畑を好んで走る選手もいたそうです。
実際に、今でもロードレーサーが、オフシーズンの冬場にトレーニング目的で、シクロクロスのレースに参戦することも珍しくありません。
その起源にも由来するところですが、コースには柵や階段など人工で作られた障害物があります。
そして、必ず「自転車から下車して自ら担いで走るコースがある」のが、通常のロードレースとは全く違うところです。
競技にはロードバイクとは違う専用の自転車が使用され、今回の主役であるメリダのシクロクロス500はそのバイクです。
メリダのシクロクロス500(400)からシクロクロス車を学ぶ
それではメリダの「シクロクロス500」を確認していきながら、シクロクロス車の特徴を確認していきましょう。
なお、シクロクロス500は2018年モデルでは、シクロクロス「400」に変更されました。
スペックを見る限りタイヤが別種類のようですが、それ以外に大きな変更はなく、ボディカラーなどのマイナーチェンジと考えて良さそうです。
シクロクロス車は競技の特徴でもありますが、走行性能とともに、担ぎやすさが重視されます。
そのため、シクロクロス500(400)もそうですが、トップチューブが偏平になっており、肩に担ぎやすい形状になっています。
また、溶接痕などの金属のバリがあると、担いだ際にユニフォームに引っ掛かってしまい危険です。
しかし、これはメリダの高い技術でカバーしています。
ハイドロフォーミングというアルミ成形技術を用いて、溶接痕が目立たない、まるでカーボンのような美しいフォルムのフレームに仕上がっています。
また、後述しますが、太めのタイヤやディスクブレーキなど、重量が嵩む要素がありながら、52サイズで10㎏を切るのは軽量と言ってよい部類です。
これも「担ぐ」ということを考えれば、見逃せない要素です。
メリダ・シクロクロス500のフレームジオメトリ
メリダのシクロクロス500(400)を確認していますが、次はフレームの形状(ジオメトリ)です。
ダート(オフロード)を走ったり、担いで自走したりする競技ですから、ロードレースのようなスピード勝負ではありません。
そのため、空力性能や軽快さというよりは、安定感や衝撃吸収性が重視されています。
短めのトップチューブと長めのヘッドチューブにより、ハンドルがサドルから見て近く高いので、上体が起き気味になるアップライドな姿勢で乗ることができます。
また、チェーンステーが一般的なロードバイクに比べて20㎜以上長く取られているので、フレーム後ろ側の三角形が大きくなっています。
これによりさらにアップライドな姿勢になることと、衝撃を吸収しやすくなっています。
さらに、シクロクロス500はフロントフォークがカーボン製のため、上半身への衝撃も吸収しますので、競技向きのフレームに仕上がっています。
そして、忘れてはいけないのは、泥つまりへの対策であり、各所がつまりを防ぐために広く取られています。
また、泥を被って動作の妨げになるのを防ぐために、シフトやブレーキのケーブルをチューブ内に通す「インターナルケーブルルーティング」を採用しています。
しかも、一般的なシクロクロスはトップチューブを経由しますが、メリダはダウンチューブ経由になりますので、メンテナンスがしやすいのも大きなメリットです。
メリダ・シクロクロス500のタイヤ
ここまでは、メリダのシクロクロス500(400)について、主にフレームを中心に確認してきました。
ここからはパーツを確認していきますが、まず特徴的なのはタイヤです。
シクロクロス車のタイヤは、ゴツゴツとしたブロックをダートにめり込ませてグリップを得るために、シクロクロス用のブロックタイヤを使用することが多いです。
しかし、MTB用のブロックタイヤほど太くはなく、日本の競技では33c以下に規制されており、シクロクロス500も400も標準装備は33cです。
2018年モデルのシクロクロス400には、メリダと同じ台湾を本拠とする「マキシス」の【ALL TERRANE(オールテレーン)】が標準装備されています。
余談ですが、これはシクロクロス用としてはグレードの高いタイヤなので、400はエントリーモデルですが、タイヤはコストカットの対象にしていないことがうかがえます。
ホイールがメリダオリジナルの手組みで、残念ながらコストカットが見られるだけに、余計に目立ちます。
シクロクロス車にチューブレスタイヤが適しているわけとは?
前項に引き続き、メリダのシクロクロス500(400)に装備されているタイヤのお話をします。
マキシスのオールテレーンは、広めに配置されたブロックがパターン化されており、泥が詰まりにくく、多少詰まっても、直ぐに掻き出される作りになっています。
また、このタイヤは「チューブレスレディ」といって、中にチューブを入れる必要がないタイヤです。
泥の上を力強く走るためには、空気圧を下げた方がよいと言われています。
空気圧を下げるとタイヤがグリップしやすくなって安定感が出ますし、車体もコントロールしやすくなります。
しかし、チューブタイヤでは空気圧を下げてしまうとチューブがグニャグニャになり、ホイールのリムと地面に挟まれやすくなってしまうので、「リム打ち」というパンクが起こりやすくなります。
そのため、タイヤをなるべく減圧したいシクロクロスやMTBでは、チューブのないタイヤが適しています。
メリダ・シクロクロス500のブレーキ
引き続きメリダのシクロクロス500(400)のパーツスペックを確認しますが、コンポはギア周りがロードバイク用の「シマノ・105」、機械式のディスクブレーキはテクトロ製です。
特にスピード系の重めのギアが必要ないので、フロントはMTBのような軽めのギア構成ですが、リアはロードバイク同様の構成ですので、平坦の巡航性能も何ら問題はないでしょう。
少し残念なのは、ディスクブレーキが機械式という点で、上位モデルが使用しているのが油圧式だけに、コストカットの対象にされてしまった感があります。
機械式も、従来シクロクロスで使用されてきたカンチレバーブレーキに比べれば、十分に制動力は高いですが、油圧式の方がより軽い引きで強い制動力が得られます。
また、油圧式にはワイヤーケーブルがなく、ハンドルの取り回しがスムーズなので、タイトなハンドリングになるシクロクロスにおいては油圧式の方が向いています。
なお、その他のパーツに関しては、ほぼ一般的なロードバイクと違いはありません。
メリダのシクロクロスは競技だけの用途ではない!
今回は、メリダのシクロクロス500(400)を確認しました。
競技が特殊なのでバイクも少し風変りなところはありますが、シクロクロス500はオフロードも走れるロードバイク、という考え方もできるスペックです。
スピードを争うレース向きではありませんが、ロングライドや通勤には適していると思われますので、競技目的だけのバイクではないですね!