近年、女性がスポーツ系の自転車に乗っているシーンをよく見ます。
ショップの店員さんにも女性が多くなりましたし、各フレームメーカーも「女性専用」に力を注いでいるように感じます。
その中でサドルは以前から男女別に製造されてきましたが、最近は「人間工学」に基づき、身体に負担を掛けないものの開発が顕著です。
そこで今回は、自転車における女性用のサドルについて考えてみましょう。
女性が自転車に乗る際に女性用サドルにするべき理由
以前のロードバイクなどの女性専用フレームは、男性モデルと同じジオメトリで、ただ小さいサイズを「女性用」としていたものが多かったです。
しかし、現在は専門のスタッフが、プロライダーや女性ユーザーの声をフィードバックして、設計から始めるメーカーが増えましたので、男性用(男女兼用)とは別物として考えることができます。
男性と女性では身体の構造や体型が違いますし、体力や筋力も男性に比べ弱いわけですから、ジオメトリを変えるというのはむしろ当たり前に思えます。
その中でサドルですが、これはどう考えても専用のものが必要になります。
と言うのも、女性は骨盤が男性より横に広いので、男性の骨盤の幅に合わせたサドルでは、骨盤の端にある「坐骨」が外側に出てしまうのです。
坐骨は人間が何かに座る際にお尻を支える役目がありますので、それが外側にはみ出てしまうと、安定感がなくなります。
また、自転車のサドルにまたがった際は、坐骨がはみ出してしまうことで股間に圧力が直接掛かり、長時間のライドなどでは擦れて痛みが出てしまいます。
そのため、女性用のサドルは男性用よりも座面の幅が広くなければなりません。
自転車の女性用サドルの特徴
前項でお話した自転車の女性用サドルの幅ですが、例を挙げながらもう少し詳しくお話ししていきます。
世界的なフレームメーカーである「スペシャライズド」は、女性用のフレームに力を注いでいることでも有名です。
先述したように、設計段階から専門のスタッフが携わり、プロライダーの声なども交えて専用フレームを作り出しています。
そんなスペシャライズドはサドルにも非常に力を入れており、フレームメーカーでありながらサドルだけを求めるファンも大勢います。
その中には当然ながら女性専用もありますが、その座面幅は168㎜と非常に広くなっています。
男性用(兼用)は143㎜と155㎜なので、いかに女性用が広く座面幅を取っているかが分かります。
また、スペシャライズドのサドルは座面に穴が開いているか、溝が彫ってあるかの、いずれかの細工が施されています。
これが冒頭でもお話しした人間工学に基づいた、身体に負担を掛けない仕様であり、現在はサドル界全体がこの流れに傾いています。
自転車での股間付近の痛みは男女で場所が違う
自転車に長い時間乗っているとお尻が痛くなるというのは、誰しもが一度は経験したことがあるかと思います。
それが坐骨付近の痛みであれば、サドルに体重を掛け過ぎていることが主原因なので、乗り方を見直すのが改善への早道になります。
しかし、男女を問わず股間付近の痛みは、プロレーサーでも同じ悩みがあり、乗り方だけで改善できる問題ではありません。
そこで、穴あきだったり、溝が彫られているサドルがあるわけで、股間への圧迫を軽減するのが目的です。
筆者は男性ですが、男性の場合は会陰部が圧迫されて尿道付近に痛みが出ます。
直接的な因果関係が証明されているわけではないですが、自転車乗りとEDの関係については、いくつもの論文が発表されています。
それくらい、股間が強く圧迫されるということですが、女性の場合は当然ながら男性とは生殖器の構造が違いますので、圧迫される部分も違います。
筆者は男性なので詳細までは分かりかねますが、「Iライン」と呼ばれる部分に最も圧力が掛かるようです。
また、肛門の周辺は擦れて痛みが出るとも聞いています。
女性は完成車を選ぶ段階から女性専用の自転車がよい
前項でお話しした自転車に乗る際の股間の痛みですが、短い時間や距離であれば気にならないことです。
そのため、日常生活で短い距離しか自転車に乗っていなかった方が、スポーツ系の自転車を購入して、乗る時間や距離が増えた際に初めて「痛み」に直面するわけです。
そうなると、これは始めから痛み対策をしてあるサドルを選ぶ必要があるということになります。
しかし、ロードバイクなどの完成車は1つのパッケージとして仕様が決まっていますので、サドルだけをチョイスすることは難しいでしょう。
追加料金を払えば交換も可能にはなりますが、あまり現実的ではありません。
ただし、女性専用モデルであればサドルももちろん女性用なので、穴あきや溝などの加工が施されている可能性が高くなります。
その意味でも、女性専用モデルを選択するのが賢明かと思います。
サドル選びの第一歩は自分の坐骨幅を確認すること
先ほど自転車のサドルの座面幅について触れましたが、女性が男性より骨盤が広いというのは確かですが、あくまでも相対的な話であり、もちろん個人差はあります。
そのため、最適なサドル選びの第一歩として、自分の骨盤の幅=左右の坐骨間の幅を把握しておく必要があります。
自分で測ることも可能ですが、より正確性を期すためにショップで測ってもらうことをおすすめします。
先述したスペシャライズドや、これも世界的なメーカーである「トレック」などの正規販売店では、イスのような計測器に座るだけで坐骨幅を調べてもらえます。
そこでおすすめのサドルを教えてもらうのもよいですし、その時に購入しないとしても嫌な顔をせず測定だけしてくれるショップも多いです。
自分の坐骨幅に合わないサドルは、弊害を生み出す元になりますので、まず自分の坐骨幅を把握しておいてください。
おすすめの女性用自転車サドル
それでは最後に筆者がおすすめする、自転車の女性用サドルをご紹介します。
【VELO(ベロ):Plush VL4126 女性向けサドル】
ベロはレースモデルからクロスバイク・ママチャリなどにも向くものまで、幅広くしかもリーズナブルな価格で展開しているメーカーです。
こちらは座面幅が広めなので、坐骨幅の広い方におすすめのモデルです。
また、女性向けと謳っているだけあり、Iライン付近に穴あき加工がされており、「痛みが全くなくなった」と言うインプレもあります。
価格は変動しますが、いつ見ても大体3,000円前後ですので、お試し感覚でもよいかと思います。
【Bontrager(ボントレガー) Nebula Plus Women’s】
トレックのパーツブランド「ボントレガー」の女性用サドルです。
つい最近筆者の知り合いの女性がこのサドルを購入して、とても快適になったとお話ししていたのでおすすめとさせていただきます。
こちらは幅が160㎜、170㎜、180㎜の3サイズから選択できますので、ショップに出向いてサイズ合わせをした方が賢明です。
また、ペダルを漕いでいる際に、骨盤を自然に動かせるためにサドルをわずかに回転させる機能がありますので、Iラインの圧迫やお尻への衝撃を軽減できます。
女性には女性用サドルがおすすめ
今回は自転車のサドルについて、女性に注意して頂きたいことをお話ししました。
女性は骨盤が横に広いので、坐骨をカバーするべくなるべく座面の広いサドルが向いています。
また、Iラインなどのデリケートゾーンの圧迫は、男性とはまた違ったものですので、女性専用のサドルを選ぶのが賢明です。