BROOKSの代名詞「革サドル」の乗り心地をよくするためには?

BROOKS(ブルックス)は創業140年以上にもなる、イギリスの老舗サドルメーカーです。

BROOKSのサドルと言えば「革」ですが、独特なものなので乗り心地にクセがあり、最初の内は硬くてお尻が痛くなるという経験をされた方も多くいらっしゃるでしょう。

そこで諦めてしまう方も多いと聞いていますが、本当にそこで終わりにしてよいのか検証してみましょう。

BROOKSの革サドルは時間を掛けて乗り心地をよくするもの

BROOKSの主力は「革」製のサドルですが、非常に硬質な素材なので新品の状態ではお尻への優しさは皆無で、乗り心地はハッキリ言って悪いです。

硬いものは衝撃が伝わりやすいので、地面からの振動はビンビン伝わってきますし、お尻に反発してしまってフィットしないので、安定感も欠いてしまいます。

これがBROOKSの革サドルに対して感じるファーストインプレッションなのですが、革サドルは革がお尻の形にそって馴染んでいくので、形状に関係なくフィットしていくのです。

自転車に乗っている頻度やお手入れによって、どのくらいで馴染んでいくのかは個人差があるようですが、そこまで我慢できるかが大きなカギを握っているということになります。

自分のお尻の形に合わせてフィットしてくれるわけですから、革が馴染んだ際のフィット感は抜群で、経験者によれば異次元の乗り心地のよさと言います。

少し大げさですが、「サドルに座っている感じがしない」とまで言う人のインプレも読んだことがあります。

いずれにせよ革サドルは、忍耐の先に極上の乗り心地が待っているという、まるで「修行の」ような世界なんですね。

BROOKSの革サドルで最高の乗り心地を手に入れるためのメンテナンス

BROOKSの革サドルは最高の乗り心地を手に入れるため、馴染ませていく必要があるので、まずはメンテナンスのお話からさせていただきます。

BROOKSに限ったことではないですが、革製品は動物の皮が原料です。

生きている時は皮脂などの油分で皮の表面が保護されているので潤いを保っていられますが、製品化されてしまうと油分がなくなるので、放っておくと乾燥してひび割れてしまいます。

そのため、革製品は定期的にオイルで表面を保護する必要があります。

BROOKSには純正オイルの「プルーファイド」がありますので、最初はそれを使いましょう。

プルーファイドをサドル表面に薄く塗り込んだら、馴染ませるために半日置きます。

そして、自転車に乗る前には必ず余分なオイルを拭き取ってください。

革サドルはメンテナンスが面倒と言うイメージがあるかもしれませんが、BROOKSならこれだけです。

革が馴染むまでは、1週間に1回ほどオイルを塗り込み、お尻に馴染んできたら、3~6ヶ月に1回程度で大丈夫です。

BROOKSの革サドルは裏面にもオイルを塗る必要がある?

BROOKSの革サドルのメンテナンスの話でよく議論になるのは、サドル裏面にもオイルを塗るか否かです。

裏面は公式では水や泥が跳ねるコンディションで走ることが多い場合に、防水のために薄く塗るとされています。

革は水に触れるとすぐに型崩れしますので、BROOKSの革サドルも雨の日は乗らない、泥跳ねする路面は避けるなどと言われます。

しかし、現実はそうとばかりも言っていられないので、オイルで防水する必要はありそうです。

ただ、否定派の意見では、裏面にオイルを塗ると型崩れが起きるので塗らない方がよいと言う意見もあります。

裏面にもオイルを塗ると早めに馴染むのは確かですが、あまり頻繁にやり過ぎると想像以上に柔らかくなって、型崩れを起こすということです。

したがって、これは筆者の提案でもありますが、表面は馴染むまで1週間に1回程度オイルを塗りますが、裏面は1ヶ月に1回程度にしておきましょう。

とは言え、どれが正解というのもありませんし、好みの乗り心地は人それぞれなので、自分のペースで馴染ませていけばよいかと思います。

BROOKSの革サドルは座面の張りを調整する必要もある

前項で型崩れに関するお話をしましたが、革は伸びますので型崩れとまではいかなくても、垂れ下がって座面の張りが弱くなってきます。

それを放置していると本当に型崩れをして取り返しのつかないことになりますので、革の張り具合を調整してあげる必要があります。

サドルを横から見て、真ん中が垂れ下がっていれば張りが足らない状態ですので調整をしましょう。

BROOKSのサドルは先端に調整ボルトがありますので、スパナなどで90度回転させてください。

あまりテンションを張り過ぎると、レーシングパンツやズボンに引っ掛かりができて乗り心地が悪くなりますし、場合によっては破れてしまいますので、注意しながら調整してください。

また、型崩れをさせないためには、濡れてしまった時の対処を素早く行うことも大切です。

濡れてしまったら素早く水分を拭き取りますが、伸ばしてはいけないので拭くというよりは吸い取る感じにします。

そして、完全に乾くまで自転車に乗るのは避けた方よいでしょう。

さらに、濡れた状態でオイルなどを塗ると型崩れをして革が完全に伸びきる恐れがありますので、水分を吸い取ったら乾くまでは何もしないのが賢明です。

BROOKSの非革モデル「カンビウムサドル」の乗り心地は?

BROOKSは2002年に「フィジーク」ブランドでも有名な、イタリアの「セラ・ロイヤル」の傘下となりました。

それ以来、チタン製のレールを導入したり、限定品の販売を行ったり、少しづつ革新的な施策が行われてきました。

その極め付けとなったのが、革以外の素材のサドルの開発です。

「CAMBIUM(カンビウム)」と名付けられたサドルは、従来の革サドルとは全く似ても似つかない新感覚のものです。

サドルトップ(土台)は柔軟性がある上に強固な天然ゴムで作られ、座面にはオーガニックコットンの層が貼られています。

その素材もさることながら、坐骨のラインに支柱がないので地面からの衝撃を伝えにくい構造になっており、快適な乗り心地が期待できます。

また、革サドルでは気を使わなければいけない雨の日も、表面のコットンに防水加工がされているので、気を使わずに走れます。

しかも2017年からは、さらに上からナイロンのトップカバーをかぶせた「オールウエザー」モデルも加わり、進化を遂げています。

また、カンビウムには完全穴あきタイプもあり、また別の乗り心地が加味されているので、股間付近の痛みに悩んでいるBROOKSファンにも朗報ではないでしょうか。

BROOKSは乗り心地を意識している部分があるかもしれない

前項でお伝えしたように、BROOKSは非革モデルの発売に踏み切ったわけですが、これはロードバイクの用途の多様化と無関係ではないでしょう。

現在はフレームを作る多くのメーカーに、「エンデュランスモデル」というスピードよりも衝撃吸収性や安定性を重視し、快適な乗り心地を求めるモデルが存在します。

そうなると、エンデュランスモデルに合わせるサドルも必要になるわけですが、前項でお伝えした「カンビウム」は正にそれに該当します。

また、革サドルにも初めから座面をオイルで馴染ませてある、「B17 AGED」という製品があります。

仕様は定番の「B17 STANDARD」と同じですが、既に使い込んだサドルのような「ユーズド加工」がされています。

最初から柔らかめの乗り心地で、しかも普通のモデルに比べ早めにお尻にフィットしていくので人気が高いと聞いています。

BROOKSのサドルは進化している

今回はBROOKSのサドルについて、主に革サドルを中心にお話ししました。

座面の革を馴染ませるには時間が掛かりますが、その先に極上の乗り心地が期待できますので、ゆっくりと育てていく覚悟をしましょう。

お手入れも難しい印象があるかもしれませんが、定期的にオイルを塗り込んで、革の張り具合を確認・調整すればよいだけです。

また、カンビウムという新提案もありますので、ぜひ一度BROOKSのサドルに注目してみてください。