自転車のブレーキは、時代ごとに使用されるものが変化してきています。
顕著な例はMTBで、カンチ→V→ディスクブレーキと変遷を遂げています。
そのディスクブレーキはMTBのみならず、ロードバイクにも確実にその波がきています。
特にプロレースの世界で注目を集め始めているだけに、今後も流れは止まらないと見られています。
では、今までの「キャリパーブレーキ」はどうなってしまうのでしょうか?
検証してみましょう!
自転車のブレーキの種類と構造
今回は、ディスクブレーキの激流に飲み込まれそうなキャリパーブレーキについてお話しますが、まずは両者を比較するために、構造のお話からさせて頂きます。
自転車のブレーキは車輪(ホイール)の回転を止める役割なので、車輪のどこでその作業を行うかによって、「リムブレーキ」と「ハブブレーキ」に分けることができます。
リムはホイールの外周部分の金属やカーボンの輪っかのことで、タイヤをはめる場所です。
リムにゴム製の「ブレーキシュー」を左右から挟み付け、その摩擦で回転を止め(緩め)ます。
キャリパーブレーキはこのリムブレーキであり、ロードバイクの他には、ママチャリの前輪にも使用されています。
一方、ハブブレーキはホイール中央のハブに制動をするための機構が組み込まれており、種類によって制動方式が違います。
ディスクブレーキはハブブレーキの一種であり、「ローター」といわれる円盤をハブに取りつけ、それを金属や樹脂製の「ブレーキパッド」で挟み付けて回転を止めます。
つまり、両者は車輪の外側で回転を止めるか、内側で止めるかの違いということになります。
ディスクブレーキはキャリパーブレーキに比べ制動力が強い
前項ではまず、キャリパーブレーキとディスクブレーキの構造についてお話しました。
構造の違いにも関係してきますが、両者の決定的な違いは制動力の強さです。
キャリパーブレーキを指3~4本で掛ける「フルブレーキ」状態を、ディスクブレーキは指1本で掛けられるとも言われています。
ディスクブレーキは自動車の前輪にも使用されるほどなので、この差は当然と言えば当然です。
自転車においては、それほどの強い制動力を必要としなかったこともあり、導入は遅れました。
しかし、プロライダーや機体の進化で徐々に強い制動力が必要になり、MTBを皮切りに導入が進んでいます。
ここ最近では、MTBはほぼ独占状態、クロスバイクも感覚としては70%以上が、ディスクブレーキ仕様になっています。
車輪の中央で制動が行われるので、天候や路面状態に左右されず、制動力が常に安定しているので、通勤などでどんな道を走るか分からないクロスバイクには、最適と言えます。
自転車のプロレースでディスクブレーキが台頭してきたわけ
ロードバイクにおけるディスクブレーキは、2017年にUCIワールドツアーで解禁になったばかりですので、まだそれほどのシェアはありません。
しかし、2017年のツール・ド・フランスで、史上初めてディスクブレーキ搭載車がステージ優勝を果たしました。
詳しい部分は企業秘密もあるので明かされていませんが、MTB以上に機体の進化が凄まじいロードバイクに、ディスクブレーキの制動力が必要になってきた、ということでしょう。
その証拠にツール・ド・フランスを制したのは、スピードに特化したエアロロードです。
また、ディスクブレーキは制動力が強いので、ホイールもそれに耐えうるだけの剛性の高さがないといけません。
プロの脚力ではホイール剛性はとても重要であり、剛性が高ければそれだけパワーロスが少なく、ペダルを踏み込む力がストレートに動力になりますので、異次元のスピードが期待できます。
後述しますが、ロードバイクは元々完全に止まることは計算されていない自転車なので、キャリパーブレーキが使用されてきました。
そのため、強い制動力は必要なく、むしろ剛性面の向上目的でディスクブレーキ化が図られているのだろう、と予測します。
ロードバイクはまだキャリパーブレーキの採用率が高い
前項では、ロードバイクにディスクブレーキが使用される理由を、筆者の主観も交えて考えてみました。
ただし、ここまでのお話はあくまでもプロの世界のことですし、プロでもディスクブレーキが主流になったとは言い切れないところです。
ましてや一般市場では、まだキャリパーブレーキの方が採用率は高いです。
キャリパーブレーキは、構造が単純でメンテナンスがしやすいですし、多くのパーツを必要としない分、軽量で、安価でもあります。
このキャリパーブレーキは、前項でも触れましたが、完全に止まるというよりはスピードをコントロールする目的が強いとされています。
そのため、制動力に不安があるように見られがちですが、ホビーライダーが出すスピード程度なら、何ら問題はありません。
しかも、グレードが高いものになれば直線的に「ピタッ」と止まる感覚があるので、制動力の弱さを感じることはありません。
自転車にどう乗るかは個人的な問題ですが、一応本分というものがあり、ロードバイクは平坦で舗装された道を走るのが本分です。
したがって、キャリパーブレーキは、もの凄い雨の中で急坂を下るなどの極端な条件でもない限り、普段使いでは、安心して使用できるブレーキと言えます。
自転車のキャリパーブレーキは汎用性に優れている
キャリパーブレーキはまだ有用性があるとお伝えしたわけですが、キャリパーのよさは汎用性の高さにもあります。
トラブル時にもクイックリリースですからレバー一本で緩められますし、ブレーキシューやワイヤーは街の自転車屋さんで購入できます。
また、本体が壊れることは少なく、ブレーキシューだけなら高価なものでも2000円もしませんので、運用コストは断然、キャリパーの方が安価です。
ただし、将来的にディスクブレーキを使用したいと考えているのなら、最初からディスクブレーキ車にしておいた方がいいです。
ディスクブレーキを運用するには、本体一式はもちろん、専用のホイールとレバーが必要になります。
そのため、キャリパーブレーキ仕様からの交換となると、手間もコストも掛かり過ぎてしまい、あまり得策とは言えません。
ディスクブレーキが適しているロードバイクもある
先ほど、「自転車の本分」という話をしましたが、決まりごとではありませんし、今はロードバイクも用途が広がっています。
荒れた道(オフロード)を走ることを想定して、上体を起こした姿勢で乗れ、ギアがワイドで、タイヤも太いという「エンデュランスモデル」はとても人気があります。
スピードよりも衝撃吸収性と安定感を重視していますので、ディスクブレーキの採用率が高くなります。
エンデュランスモデルは、レーシングモデルに比べそこまで重量にこだわりませんので、多少重くなっても問題ない、という考えもあります。
また、山林道や砂利道などでは、ブレーキの頻度が高まります。
ロードバイクのシフト・ブレーキ一体型レバーは、ブレーキが掛けにくい面があります。
通常のブラケットポジションからでは、特に手が小さかったり指の短い方は、ブレーキングに苦労してしまいます。
その点では、キャリパーブレーキよりも強く、指1本でも十分な制動が得られるディスクブレーキは魅力です。
自転車に乗る用途によって選ぶブレーキが変わる
今回は、自転車のキャリパーブレーキとディスクブレーキの比較をしてみました。
ロードバイクの話が中心になりましたが、それぞれのメリットを考えれば、自分の用途に合わせるのが一番と言えますね。
強いて言うならば、「雨でもオフロードでも何も構わず走りたいのであればディスクブレーキにする意味がある」というところです。