自転車に乗っていると色々な音がすることがあります。
その中でも故障に繋がるような音を「異音」と呼びますが、特にクランク周りから音がする場合は、ひと漕ぎ毎に音がするのでストレスになります。
大きなトラブルになる可能性もありますので、早めに対処しておきたいものです。
そこで今回は、自転車のクランク周りから発生する異音について考えていきます。
自転車のクランク周辺の異音の原因①~ベアリングのグリス抜け
自転車はクランクの先に取り付けてある「チェーンリング」と、後輪の「スプロケット」という、前後の歯車にチェーンが掛かっています。
ペダルを漕ぐことでクランクが回転してチェーンを動かし、ホイールを回すことで前に進む仕組みです。
そのため、クランクは自転車の駆動の要とも言える部分であり、大きな力が掛かってくるので、異音がする可能性が高くなります。
クランクは「BB(ボトムブラケット)」というパーツを介して、フレームに取り付けられています。
フレームに開いている「BBシェル」にBBを入れ、そこにクランクの軸を通すイメージです。
クランクの軸をスムーズに回転させるために、BBには軸受けとなる「ベアリング」が内蔵されています。
自転車は、上記の通り回転力が動力ですので回転体が多く存在し、そこには必ず回転軸とベアリングがセットになっています。
そして、このベアリングは摩耗してしまうので、「グリス」という潤滑油が必要不可欠なのですが、グリスが抜けてしまうことが異音の原因になることがあります。
自転車のクランク周辺の異音の原因②~各所の緩み
前項では自転車のクランク周りからする異音について、BBのベアリングのグリス抜けの可能性を上げました。
次に考えられるのは、ペダルやクランク、BBの緩みで、「カチカチ」「ギシギシ」などの音がする場合は可能性が高いです。
先述通りクランク周りは、BBをフレームに取り付けて、そこにクランクを通し、さらにクランクの先にペダルを装着するという、二重三重の構造になっています。
そのため、どうしても走行中の衝撃などによって緩みが出ますし、回転を優先させるために最初から締め付けを緩めにしている場合もあります。
これに関しては、クランクやペダルだけならボルトの締め直しで済みますが、BBはクランクを外さなければ作業ができません。
べアリングのグリス抜けだった場合も、クランクを外しての作業になりますので、これについては後述します。
また、クランクとチェーンリングを組み付けるボルトが緩んでいる場合も、異音に繋がることがあります。
ママチャリなどは、クランクにチェーンリングが溶接されている一体型が多いです。
しかし、スポーツ自転車では単独のパーツですので、固定ボルトがしっかり締まっているかどうか確認しましょう。
自転車の異音は原因の特定が困難
自転車のクランク周辺から異音がする場合の原因を紹介しましたが、クランクが直接の原因ではなくてもクランクで音を感じることがあります。
例えば、サドルの緩みでも「キシキシ」と軋み音がしますが、ペダルを踏み込んだときに音がするので、足回りに原因があるのかと思ってしまいます。
その場合はサドルにお尻を付けずに、立ち漕ぎの状態でペダルを踏み込んでみて、それで音が収まるようならサドルに原因があるということになります。
また、ロードバイクでは特定のBBが異音の原因になったことがあり、構造上の問題が指摘されている例もあります。
とにかく、自転車からする異音は様々な原因があり、特定するのがとても難しいです。
ここまで紹介した原因を全て確認してつぶしていったとしても、音が治まる保証はどこにもありません。
そこでおすすめするのは、一度自転車屋さんに点検してもらうことです。
費用は掛かるかもしれませんが、異音がしたまま原因も分からずに走っているストレスを考えたら安いものです。
後述しますが、特にクランクを外すことになれば専用の工具も必要になり、その工具代とお店での修理工賃はあまり変わりません。
良い店員さんに当たれば今後のためにアドバイスなんかもしてくれますから、まずはお店に持っていきましょう。
自転車のクランクの種類
それでは、ここからはクランクやBB(ボトムブラケット)が異音の原因と特定出来た場合、自力で修復する方法をお話していきます。
自転車のクランクにはいくつか種類があり、外すにしても、締めるにしても専用の工具が必要になります。
また、BBにも種類があり、メンテナンスできるものとできないものがあります。
こういった複雑な事情があるので、最初はお店に持って行った方が良いわけです。
ママチャリなどは、「コッタレスクランク」という昔ながらのものが使用されています。
回転軸がBBの方に付属しており、そこにクランクのアームを嵌合(かんごう)させる固定方式です。
非常に強い力で嵌合されているので、外すには「コッタレス抜き」という専用の工具が必要になります。
スポーツ自転車の主流は、クランク側に回転軸が付属しているタイプです。
右クランクに付いている回転軸をBBに通して、左クランクで固定します。
嵌合部が一箇所なので、剛性が高く固定力が強くなります。
これも外すには専用工具が必要ですし、メーカーによって使う工具が違ったりもします。
BB(ボトムブラケット)のシールドベアリングはノーメンテで良いのか?
次にBBですが、ベアリングの取り付け方法が2種類あり、中でも「シールドベアリング」はメンテナンスがいらないと言われてきました。
ベアリングをゴムや金属製の「シール」で覆っているために、水分や汚れが入らないのでグリス抜けも起こらないという理論です。
最もな話だと思いますし、私も何の疑いもなくノーメンテでした。
しかし、実際に自転車のクランク周辺からの異音に悩み、BBの異変にたどり着いた際にシールドベアリングのグリスアップを行いました。
その結果異音が消えたので、シールドベアリングもノーメンテナンスとは言い切れないと判断しました。
考えてみれば、シールドとは言っても完璧に密封されているわけではないので、ホコリが入ったり水がしみこむこともあり得ますね。
メーカーはシールを剥がすことに対して非推奨の立場ですから、当然何かあっても自己責任ではありますが、異音がどうしようもないならやってみる価値はあります。
なお、ベアリングがシールで覆われていない「カップ&コーンベアリング」であれば、定期的なグリスアップが不可欠です。
自転車のクランクの異音が気になったらまずプロに見せる
自転車のクランク周辺の異音の話をしてきましたが、しつこいようですが異音は原因の特定が難しいです。
そのため、色々な部分をひとつづつ潰していきながら、試行錯誤して改善していくことになります。
時間の掛かる作業ですから根気もいりますし、ストレスも溜まります。
自転車、特にスポーツ自転車はメンテナンスありきの乗りものですから、ある程度自力で作業できることに越したことはありません。
しかし、知識も経験もない内はまずプロに見せることが重要です。
良いお店に当たれば、今後長い付き合いになって色々と有益な情報を得られることになるかもしれません。
以前は、自分のお店で購入した自転車しか整備点検を行わないショップもありましたが、今の時代ではそんなお店も少ないです。
そのため、臆することなくまずは一度見てもらい、そこから色々と方策を考えてみてはいかがでしょうか?
とにかく一度しっかり点検してもらう
今回は自転車のクランク周辺の異音に付いてお話しました。
ボルトの緩み、潤滑油であるグリスの抜けなどが主な原因ですが、決定的ではなく別の場合も考えられます。
自力で改善出来ることに越したことはないですが、まず一度プロに見てもらいましょう。