キャノンデールは、かつて「アルミのキャノンデール」の異名があったほど、アルミフレームにこだわりを持っています。
カーボンフレームに負けない重量の軽さと、金属とは思えない快適さを持つ「caad」シリーズは、現在もなお変わらずキャノンデールの主力です。
その礎を築いたと言われているのが、2009年モデルの「caad9」になりますので、振り返ってみましょう。
カーボンで一定の評価を受けた現在も、アルミにこだわる「キャノンデール」
ロードバイクはプロのチームに機材として提供されており、その成績がブランドイメージの一つになっています。
その意味ではプロが使用するカーボンフレームが、一般ユーザーの間でも評価が高くなるのは当然のことです。
キャノンデールも「アルミ」に強いイメージがある一方で、2017年にはツール・ド・フランスで、個人総合2位の選手を輩出する程のカーボンフレーム車を製造する域にまで達しています。
アルミへのこだわりからカーボンへの参入が遅れた経緯もあり、僅か十数年での進化は称賛に値するものです。
しかし、このようにカーボンフレームで一定の評価を受けた現在も、アルミフレームへのこだわりは以前と全く変わりません。
今回の主役である「caad9」は2009年からのモデルですが、当時としては超軽量と言える、フレーム重量1200g台を達成しています。
caad9はキャノンデールが海外へのOEMに乗り出す前の最後に自社工場で生産されたモデルで、これが今のcaadシリーズの礎になったと見られています。
caadシリーズの先駆け「caad9」の重量は?
近年、アメリカのスポーツバイクメーカーには、アルミフレームを見直す動きが見られます。
各メーカーが独自の成型や溶接の技術を用いて、カーボン並みの美しい見た目と剛性と重量のバランスに優れたフレームを生産しています。
キャノンデールもアメリカのブランドですが、この流れができるずっと前からアルミにこだわっているのは先述の通りです。
caad9が発表された当時は正に主流がカーボンに移る真っ只中で、各メーカーがこぞってカーボンロードの開発をしていた時期です。
それでもキャノンデールはアルミにこだわり、現在のスペシャライズドの「DSW」や、トレックの「Invisible Weld Technology」のような、優れた技術をすでにcaad9に投入しています。
それが、caad9でフレーム重量1200g台、シマノ・105搭載で8㎏台前半という破格の軽量を実現した要因です。(重量は未公表なので実測値です)
現在(2018年)のcaadシリーズは「caad12」ですが、ハイエンドモデルのシマノ・アルテグラ搭載車は8㎏を大幅に切っています。
キャノンデールの「caad9」は重量面ならプロ仕様レベルだった
キャノンデールは以前から「打倒カーボン」という姿勢があり、アルミフレーム独自の反応性のよさや、良い意味での硬さを活かしながら、とにかく重量にこだわってきました。
caad9の時代は、アルミフレームの完成車は9㎏台なら軽いと言われたくらいだったので、その頃から既に8㎏台前半のcaad9は「カーボンキラー」と呼ばれていました。
現在は先述通りさらに軽量化が進み、ホイールなどのパーツ次第によっては6㎏台突入も不思議ではありません。
世界最高峰のロードレースの年間シリーズ戦であるUCIワールドツアーでは、バイクの重量が6.8㎏以上という規定があります。
ですから、物理的には前項でお話した「caad12」のフレームは当然、caad9でもコンポとホイールを替えるだけで6.8㎏付近に持ってくることができたはずです。
金属疲労の問題もあり過酷なプロツアーでは持たないという理由もあり、今後もアルミフレームがプロのレースに登場することは少ないでしょう。
しかし、重量の問題は既にクリアをしていますし、プロのロードレーサーでも個人所有のロードバイクはアルミが多いと聞いています。
それだけアルミフレームの性能が上がっている証拠ですし、その基礎を作ったのは紛れもなくキャノンデールです。
完成車の重量の概念をも覆してみせたのが「caad9」
現在でも、アルミフレームの完成車がカーボンに比べ重量が重いのは事実です。
これは素材そのものの重量差でもありますが、組み合わせれているパーツの差もあります。
ロードバイクは軽さが全てのようなところがありますので、パーツ類も基本的にはレベルが高いものは軽量です。
アルミは依然として価格の安いエントリーグレードの完成車に用いられていますので、当然ながらパーツも安価なものが使用されます。
そうなると必然的に重いものが使われることにもなるわけで、余計にトータル重量が嵩んでしまうことになります。
いくら「アルミのキャノンデール」であっても、パーツのコストの問題だけは覆すことはできません。
そこでキャノンデールはフレーム自体を軽量化することにこだわり、完成車のパッケージでもカーボンに負けないというところを見せ続けてきたわけです。
先述通り、caad9で達成した1200g台のフレームは、caad12となった現在1100gを切っているという実測値の報告もあるほどです。
このように、軽量化が難しいアルミの完成車において、妥協せずに突き詰めていく姿が正に「アルミのキャノンデール」たる所以と言えるでしょう。
「caad9」が重量と共にこだわっていたものとは?
筆者はこの記事に当たりcaad9のインプレを見返してみましたが、重量と共に、衝撃吸収性の優秀さを伝えるものが多いことが分かりました。
ここまでもお話してきているように、現在はアルミの成型技術が向上しましたが、当時はアルミ=硬いと言うイメージが定着しており、ハードな乗り心地が当たり前というところでした。
レースバイクというコンセプトがあるので、快適性重視のコンフォートモデル(現在はエンデュランスモデルと言われる方が多い)ほどの快適さはありません。
しかし、従来のアルミの概念を覆すには十分であり、その乗り心地が強調されているのは今となれば理解できる気がします。
また、その頃から少し剛性が低めで柔らかいとされていた、シマノ製のホイールが組み合わせられていたことも見逃せません。
そこにも快適性を求める姿勢が見られ、昔から革新的なもの作りで名を馳せてきたキャノンデールらしさが表れていますね。
キャノンデールが重量と同じくらいこだわった「BB30」とは?
キャノンデールがアルミフレームの成型技術や重量と同じくらいこだわってきたものに、「BB30」があります。
BBは「ボトムブラケット」の略で、クランクをフレームに支持するためのパーツです。
30という数字はクランクのシャフト(軸)の太さが30㎜という意味で、従来は24㎜でしたので太くして剛性を高めています。
また、従来のBBはベアリングを内蔵したカードリッジ式のため、フレームにネジ切りがされていてそこにねじ込んでいく装着方法でした。
しかし、BB30はベアリングをフレームに直接圧入する方式であるので、余計な部品がない分、軽量化できるという趣旨です。
caadシリーズでは、caad9の最終年となった2010年モデルよりこのBB30を使用しており、現在でも規格は少し変わりましたが継続をしています。
詳しい方はご存知かと思いますが、BB30には「異音」という弱点があり、現在はかなり下火になってはいます。
しかし、本来の目的である剛性の高さと軽量性はメリットとして残っていますし、以前のものに比べると異音の発生も抑えられているようです。
良くも悪くも一つのことにこだわるキャノンデールらしさが、こんなところにも表れているのですね。
caad9は現在のcaadの地位を強固なものにする基礎となった
今回は、キャノンデールのアルミロードバイク「caad9」を振り返ってみました。
アルミフレーム車に軽量化の概念が薄い時代からこだわってきたキャノンデールにおいて、caad9は中間地点までの集大成的存在であったかと思います。
現在もさらにcaadは進化を遂げていますので「中間地点」と言いましたが、進化の礎となったのは間違いなくcaad9でした。