最近は、通販サイトが増えたことで、自転車の購入もずいぶんと手軽になりました。
しかし、購入後に、「やっぱり気に入らない」とキャンセルしようとして店側とトラブルになるケースもあるようです。
そういったトラブルを防ぐため、自転車購入後のキャンセルは可能なのかどうかについて、解説していきます。
注文した自転車を購入後にキャンセルできる?
自転車を購入する際、店頭に在庫があれば一番ですよね。
しかし、お店のスペースも限られていますし、サイズ違いですべて揃えるのも、店側にとってはリスクになりますから、気に入った自転車があるとは限りません。
そのため、お店からメーカーや代理店に発注をかけて取り寄せるのが一般的でしょう。
購入後、自転車が届く前に気が変わったり、あるいはいろいろな事情で購入をあきらめざるを得なかったりで、注文をキャンセルしたい、ということがあるかもしれません。
その場合、購入後のキャンセルは可能なのでしょうか。
結論から先に申し上げれば、キャンセル自体は一定の条件のもとには可能です。
キャンセルが可能な場合の条件や、キャンセルが認められない場合について、解説していきます。
口頭契約を理由に購入後のキャンセルはできる?
自転車を購入後にキャンセルしたい、という場合に、「契約書なしに口頭だけだったので、キャンセルできるのではないか」という人もいるようです。
しかし、残念ながら契約書がない口頭での購入契約であっても、契約は成立します。
民法では、「要式契約」という考え方があります。
一例を挙げると、民法の第460条に、保証契約(保証人を立てて行う契約)について規定されています。
その条文の中で、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」という条文があります。
このように、条文にはっきりと成立の要件が規定されているものを要式契約といいます。
逆にいえば、要式が規定されていなければ、どんな形でも契約は成立するということなのです。
そもそも、契約というと何か大げさな感じもしてしまいますが、私たちがコンビニで朝、100円のコーヒーを買うことも契約です。
実は、要件契約の方が少数派で、世の中の圧倒的多数の契約は口頭契約で成立しているのです。
たとえ、それが高価なマンションや、新車の購入であっても同様です。
契約する際、わざわざ書面で残すのは、後々の面倒を避けるためであって、法律で契約書を作成する義務が規定されているわけではありません。
口頭契約を理由に、契約を反故にすることは、できないと思ってください。
購入後のキャンセルは自転車店にとって迷惑行為
自転車を購入後、予約が確定した時点で自転車店はメーカーや代理店に発注をかけます。
この発注が完了した段階で、すでに契約は成立しています。
自転車店としてはメーカーや代理店などと、良好な関係を保っていたいと考える方が自然で、なるべくキャンセルすることは避けようとするでしょう。
もし、その自転車の購入をお客さんに拒まれてしまうと、その自転車は店側の在庫となってしまいます。
自分が購入しなくても、「店頭に並べて別の人に売ればいいのでは」と考える人がいるとしたら、それは非常に身勝手な考え方でしょう。
特にロードバイクなどについていえば、毎年、新型モデルがリリースされます。
そのシーズンに売れてしまえばよいのですが、サイズや色の好みが合わないなどで売れ残ってしまうリスクもあります。
そうすると翌年にその自転車を販売する際には、旧型モデルとして、値引きをしないとなかなか売れないことが現実なのです。
このように、購入後のキャンセルを受け入れてしまったら、自転車店側がいかにダメージを受けるのか、お分かりいただけますよね。
自転車購入後にキャンセルしたら手付金は返ってくる?
自転車を予約した時、手付金として、購入代金の一部を前払いで求められる場合があります。
購入後にキャンセルする場合、この手付金は返ってくるのでしょうか。
結論から先にいえば、手付金は返ってきません。
手付金については民法第557条に規定があります。
条文では、「買主が売主に手付を交付したとき、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる」となっています。
つまり、購入者が自転車購入の手付金として、自転車店に2万円を支払ったとします。
購入をキャンセルした場合は、この条文の通り手付金を放棄することになります。
理不尽だと思いますか?
いえ、これは買主が所定の金額を支払えば契約をキャンセルできるという、買主を守るためのものと考えてください。
もし、キャンセルできないのであれば、購入代金をすべて買主が支払う必要があるからです。
一方、条文後半の部分では、逆に売主側の都合でキャンセルとなった場合、手付金である2万円の倍の4万円を買主に支払えば、こちらも契約がキャンセルできることになっています。
どちらを比較してみても、買主の方に有利な条件になっていることが理解できるでしょう。
ただし、当事者の一方が契約の履行してしまっていたら、適用されないので注意が必要です。
手付金が内金だと購入後にキャンセルできない?
自転車購入後のキャンセルにあたって、トラブルのもとになる可能性があるのが、手付金と内金の違いです。
手付金は前の項目でご説明したとおりですが、それとは別に「内金」という名目で代金の一部を先に支払うことを求められることがあります。
先に一部を支払うという点では同じなのですが、内金と手付金は異なります。
内金は商品代の一部、いわゆる内側であり、手付金は、お店に渡しておく別の代金です。
そして、内金が手付金と大きく異なる点としては、民法などで解約できるという規定があるわけでは無いことです。
内金の場合は、購入後にキャンセルしようとして、先に支払ったお金を放棄しても契約を解除できません。
さらに、内金として支払った額に更にプラスして違約金という形で請求する場合もあるようです。
自転車の購入時に、お店によっては、「予約金」という名目で一部を支払うことはよくあることでしょうが、このままでは手付金なのか内金なのかが明確ではありません。
支払った予約金が手付金に当たるのか、それとも内金に当たるのかは念のための確認しておいた方がよいでしょう。
もちろん、キャンセルを避けるのが一番なのはいうまでもありません。
通販では自転車購入後のキャンセルはほぼ不可能
最近は自転車の通販サイトも増えてきています。
近隣に自転車専門店がない方はもちろん、品ぞろえや価格の面で通販を選ぶという方も多いでしょう。
こういった自転車の通販サイトの規定をみると、基本的に購入後のキャンセルは受け付けないとしている場合がほとんどです。
通販の場合、クリックした瞬間に注文が確定し、発注データが送付されてしまいます。
もちろん、届いた自転車に不具合があった場合は別ですが、自己都合によるキャンセルは受け付けてもらえないと考えた方がよいでしょう。
大手自転車通販サイトの規定をみると、どうしても返品したい、という場合には、車両代金の50%程度を支払う必要があると規定されていました。
さらに、返送時に必要な梱包材、宅配業者、運賃についても買主が用意する必要があります。
また、自転車が返却された時点で検品し、傷・パーツの不足などがある場合は、返金額から差し引かれることになります。
さらに、最初の送料に手数料、防犯登録代金、TSマーク取得にかかった代金は返金できないとする通販サイトがほとんどなので要注意です。
自転車の購入は慎重に
いかがでしたでしょうか。
最近は自転車もローンを組んで購入することも当たり前になりました。
また、通販サイトも増えたので、以前よりも気軽に購入できるようになったのは確かです。
しかし、自転車は決して安い買い物ではないので、購入にあたっては慎重になるべきでしょう。
安易に購入を決めて、気に入らなかったらキャンセルすればいい、と考えているなら意外なしっぺ返しをくらうことにもなりかねません。
しっかり選んで、長く愛せる1台を手に入れたいですね。