自転車通勤だと、通勤手当は支給されるのでしょうか。
公務員の場合には、制度として整備されているようですが、一般の会社ではどうなのでしょう。
公共交通機関のように運賃はいらず、自動車やオートバイのようにガソリン代もかからないので、支給されないのでは、と考える人もいるかもしれません。
一方で、自転車を購入するのにもお金はかかりますし、同じ距離を通勤するのならもらえて当然、と考える方もいらっしゃるでしょう。
知っているようで、実はよく知らないのが通勤手当です。
今回は、自転車通勤と通勤手当について見ていきましょう。
通勤手当は義務ではない?
公務員だけでなく、一般の企業でも正社員、アルバイトにかかわらず、多くの会社では通勤手当を支給しています。
公共交通機関を利用している場合だけでなく、自動車やオートバイ、自転車を利用していても通勤手当が支給されることが多いようです。
求人の募集要項にも、必ずといって良いほど通勤手当の支給の有無が記載されています。
しかし、実は通勤手当については法律上、必ず支給しなければならないという条項は見当たりません。
つまり、会社側では通勤手当を支給する義務は全くなく、支払わなかったからといって問題になることはないのです。
多くの会社が通勤手当を支給しているのは、いわば従業員への恩恵ということになります。
真っ先にカットされてもおかしくなさそうな手当ですが、実際に業績が悪化して通勤手当の支給をやめてしまった、という話はあまり聞きません。
当然、会社は慈善事業を行っているわけではないので、通勤手当を支払うことは会社にとってもメリットがあるのです。
どんなメリットなのか、次から詳しくご説明していきましょう。
通勤手当は非課税!
公務員ならともかく、利益を追求する一般企業でも、コストのかかる通勤手当を会社側が支給するのは、通勤手当が所得税法上は非課税になるからです。
公共交通機関を使用した場合は10万円まで、自動車やオートバイ、自転車を使用した場合には、通勤距離に応じて31,600円まで非課税枠が定められています(所得税法施行令第20条の2(非課税とされる通勤手当))。
通勤手当が非課税になると、企業が同じだけ給与を支払っても、従業員の手取りが多くなるのです。
給料として20万円を支払うケースで見てみましょう。
通勤手当なしで月給が20万円の場合、年間では20万円×12ヵ月で年間では240万円になります。
この場合、所得税を計算すると240万円×10%-9万7,500円で14万2,500円、この金額を年収から差し引くと年間の手取り給料は225万7,500円になります。
一方、給与を18万円、通勤手当を2万円支給した場合で同様に計算してみます。
18万円×12ヵ月なので年間では216万円で、通勤手当は2万円×12ヵ月で24万円です。
税金は給与分だけにかかるので、216万円×10%-9万7,500円で11万8,500円になります。
よって手取り額では216万円-11万8,500円+24万円となって、手取り額は228万1,500円となるわけです。
企業側が支払う給与は同じなのに、手取り額では年間24,000円も多くなることになりますね。
公務員の自転車通勤手当の支給額は?
通勤手当は、いくら支払わなければならない、という決まりはないので、会社によって支給額は変わります。
自転車で通勤する場合について、公表されている国家公務員の例でいくら支給されるのかを見てみましょう。
国家公務員の通勤手当は人事院規則に決められています。
通勤距離片道2km以上が支給対象となります。
(通勤手当支給額)
片道5km未満 ・・・・・・・2,000円
片道5km以上、10㎞未満 ・・4,200円
片道10㎞以上、15km未満・・7,100円
片道15km以上、20km未満・・10,000円
片道20km以上、25㎞未満・・12,900円
片道25㎞以上・・・・・・・15,800円
地方公務員についても、横浜市の例で見たところ国家公務員と同様の支給額となっていました。
他の自治体すべてを確認できたわけではないのですが、おそらく支給額については国家公務員の例にならっているものと思われます。
公共交通機関を利用した場合に比べれば、金額的には低くなっています。
片道5km未満を自転車で通勤する場合、通勤手当は2,000円となっています。
もし、公共の交通機関を使用していれば、通勤手当の支給額はもっと多くなるでしょう。
それならば、と電車で申請して、実際には自転車で通勤したら差額分もうかる、と考える人もいるかもしれません。
しかし、それは不正受給になります。
公務員の通勤手当の不正受給は処分の対象にも
電車で申請して、実際には自転車で通勤した場合、当然通勤手当の不正受給となります。
これぐらいなら、と軽い気持ちでやってしまいがちですが、不正であることには変わりありません。
特に、公務員の給与は、税金から出されていることもあって、不正受給が発覚すると、金額や期間によっては重い処分の対象となります。
さらに、悪質なケースはマスコミなどでもニュースとして取り上げられる事例も多いです。
事例としては、ある公務員が24年間、通勤届をごまかし、総額で300万円以上の通勤手当を不正受給していたというものがありました。
当該職員は、停職15日の懲戒処分を受けた上、不正受給分の全額返還を求められたのです。
このように、影響の大きさや重い罰則を考えれば、やめておいた方が良いのはいうまでもありません。
公務員だけじゃない!自転車で通勤手当の不正受給=解雇の場合も
公務員だけではなく、一般の企業においてももちろん、通勤手当の不正受給は大きな問題となります。
しかし、「これぐらいなら大丈夫だろう」と考えてしまうのか、電車やバスで通勤申請して、実際には自転車で通勤して不正受給するという事例が後を絶ちません。
通勤手当の不正受給に関して、社労士への相談は大企業、中小企業を問わず多いという声を聞きます。
そのため、就業規則で不正受給について、解雇の対象としている会社もあります。
会社の就業規則に「給与の不正申請は懲戒処分」、という旨の記載があるかどうか確認しておきましょう。
文言については会社によって若干違いはありますが、一例を挙げると次のような条項があるはずです。
(参考例文)
第〇条 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、情状に応じ、訓戒、譴責、減給、出勤停止又は降格降職とする。
(中略)
・虚偽の申告、届出を行ったとき
・従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、諭旨解雇又は懲戒解雇に処する。
ただし、情状により減給又は出勤停止とする場合がある。
(中略)
・重大な虚偽の申告又は届出を行ったとき
通勤手当の不正受給は、この例文中の虚偽の申告に該当し、非常に悪質な場合には解雇の対象にもなるのです。
自転車の通勤手当は意外に美味しい制度?
公務員の例にならって、自転車であっても、通勤手当の対象としている会社は多いようです。
当然、金額としては、電車やバスで通勤した額よりは少ないのですが、出ていくお金は少ないので、一概に安いとはいえないでしょう。
自動車やオートバイはガソリン代がかかることを考えると、ガソリン代のかからない自転車でも同じだけの金額の通勤手当を支給されるのは、むしろラッキーともいえるかもしれませんね。
片道10㎞程度であれば、公務員の場合、月額7,100円が支給されます。
比較的性能の良いクロスバイクが実売で7万円程度、これなら10ヵ月分の通勤手当で購入できます。
通勤手当2年分ならば、アルミフレームのロードバイクにも手が届きます。
このように、新車の購入資金に充てんできると考えれば、自転車の通勤手当はなかなか美味しい制度といえるのではないでしょうか。
自転車通勤はかなり良い運動になり、体質改善にもなるので、そういった意味でもおすすめです。
通勤手当で自転車購入!
いかがでしたでしょうか。
通勤手当については、必ず支給しなければならないものではないのですが、実態としては支給している会社がほとんどでしょう。
せっかく制度として用意されているなら、活用しないのもちょっともったいない話ですよね。
自転車通勤は切符や定期を買わなくて良いので、通勤手当の対象にならない、と誤解していた方も多いかもしれません。
新しい自転車の購入資金に充てて、自転車通勤を始めるきっかけにしてみるのも良いかもしれません。
ただし、くれぐれも交通ルールはしっかり守って、事故にはくれぐれも気を付けましょうね。