コンポーネントメーカーとして有名なシマノですが、ホイールも出しています。
そのホイールのハブ部分にはシマノのハブが使われていますし、手組でもシマノのものはよく使われています。
今回はロードバイク用コンポーネントであるシマノのハブの紹介と分解方法やメンテナンスについてご紹介していきます。
シマノのハブについて
まずはシマノのハブについてみていきましょう。
シマノのハブは、過去には5万以下の手組では『オープンプロのリムにデュラエースハブ』というのでよく使用されていました。
ですが、現在、9000からR9100にモデルチェンジしたデュラエースと、6800からR8000にモデルチェンジしたアルテグラにはそのグレードのハブがありません。
正確には、アルテグラR8000にはディスクブレーキ用のハブはありますが、今回は使用者も多く、分解整備を試みようと考える方も多いであろうリムブレーキモデルについてみていきますので、省かせていただきます。
現在販売されているシマノのハブは、105クラスのHB・FH-5800、ティアグラクラスのHB・FH-RS400、クラリス・ソラクラスのHB・FH-RS505及びHB・FH-RS300の4種類です。
販売されていないものでは、シマノの完組ホイールに使用されているハブがあります。
これは完組ホイール専用モデルになります。
シマノのハブの仕様
分解方法の前にシマノハブについてもう少し詳しくみていきましょう。
統一されているのは、フロントハブはオーバーロックナット寸法100mm、ハブ軸はM9で108mm、フランジ間寸法は71.6mmです。
まずは、HB・FH-RS300シリーズです。
HB・FH-RS300は、スポーク穴数がフロント・リア共に28、32、36と3種類あります。
ハブのシェル材質は、アルミでアルマイト加工されています。
フリーハブの部分は、スチール製で、シールは接触シール、ベアリングの鋼球は鉄球です。
次に、HB・FH-RS505シリーズですが、これはRS300シリーズの11速版と考えて問題ありません。
RS300シリーズが8~10速仕様に対し、RS505シリーズは10、11速仕様となっています。
そして、HB・FH-RS400シリーズ。
これは、上記のRS300シリーズのベアリング鋼球が、ステンレス球に変更されています。
その上位のHB・FH-5800シリーズは、RS400シリーズからシール部分がラビリンス構造に変更されています。
ラビリンス構造というのを簡単にご説明しますと、小さなホコリ等の侵入を防ぐ構造になっています。
そして、シマノ完組ホイールのハブですが、専用のハブになっており、完成車に付属してくることのあるWH-RS010はフロント20、リア24のスポーク穴で、それより上のホイールはフロント16、リア21となっています。
また、最上位のWH-R9100はフリーボディがチタン製になっており、軽量化が図られていたりと、市販のハブとは大きく異なります。
シマノハブの分解前の予備知識
シマノハブの分解方法をご説明する前に重要なポイントがありますので、予備知識としてご説明しておきます。
シマノハブは、カップ&コーンタイプのベアリングになり、鋼球を受けるための受け具(カップ)とその反対側の押し当てる金具である(コーン)という部品に分かれます。
ちなみに、一般的な工業用品やマビックのホイールに使用されているのは、シールドベアリングというものです。
通常シールドベアリングは、アウターレース(外輪)とインナーレース(内輪)に分かれており、その間に転動体(鋼球)がリテーナー(保持器)に支えられている状態になっています。
そのため、シールドベアリングは意図的にシールを外したとしても、転動体が脱落することはありません。
ですが、カップ&コーンタイプのベアリングは、リテーナーがある場所と無い場所があり、油断していると転動体が脱落し、行方不明になることがあります。
ですので、シールドベアリングがついているものと思って作業すると大変なことになります。
この情報は念頭に置いておくといいでしょう。
シマノハブの分解に必要な工具と分解方法・前編
分解及びメンテナンスの際に必要な工具ですが、
①15mmのスパナ
②5mmのアーレンキー
③細いマイナスドライバーや針等
④パーツクリーナー
⑤グリス
⑥薄いバットやボウル等
⑦タオル
以上になります。
シマノのハブはユーザー側による分解整備を推奨していますので、出来るだけ必要工具を少なくしてくれているのでしょう。
分解方法について説明していきますが、ここではリア側のご説明をしていきます。
フロント側は、リア側のフリーボディがなくなっているだけなので、リア側の分解方法を理解していれば、フロント側も問題なく分解出来ます。
また、今回はハブがホイールに組み込まれており、自転車に取り付けられることを前提としていきます。
では、ご説明していきましょう。
①フレームからホイールを外し、クイックリリースを抜きます。
②ホイールを寝かせ、反フリー側のクイックリリースが刺さっていたところにアーレンキー、その下側のナット状になっている部分にスパナをかけ、供回りしないよう押さえておき、緩めます。
③フリー側からアーレンキーで押さえておき、先程のナットをスパナを用いて外します。
この2つのナットを外すことで、フリー側からボルトを抜くことが出来ます。
ボルトを抜くと、反フリー側からカップ&コーンの転動体となる鋼球が確認出来ます。
シマノハブのリア側分解及びメンテナンス方法・後編
④鋼球が確認出来たら、この鋼球を上側のシール部分を傷つけないように注意して、フリー側にタオルを敷いておき、マイナスドライバー等で落とします。
このとき鋼球をそのまま落としてしまうと傷が入ったり、ゴミ混入の可能性がありますので、タオルを敷いておきましょう。
その際、更にその下にバットなどを置いておくと、転がって無くなるという心配がありません。
⑤フリー側、反フリー側両方にあるので、どちらの玉も落としていきましょう。
これで分解は完了です。
次は、鋼球とハブボディ内をパーツクリーナーにて清掃します。
このとき、ハブボディ内にクリーナーが残った状態になると、せっかくグリスを入れて組み込んでも流れ落ちてしまうことがあります。
しっかりとクリーナーの拭き取り及び、乾燥をするようにしましょう。
十分に乾燥させたら、鋼球、フリーボディ、ハブボディにそれぞれグリスを塗布します。
そして、元あったように鋼球を入れていきます。
このとき、鋼球の数を間違えないようにしてください。
鋼球を入れたら、フリー側からボルトを入れますが、ボルト全体とナットの内側にも十分にグリスを塗布します。
ボルトを通したら、反フリー側のナットを取り付けますが、このときも同様にグリス塗布を忘れずに行いましょう。
ここからがシマノハブで最も重要とされる玉当たり調整です。
分解後は玉当たり調整!メンテナンス頻度は?
シマノのハブが分解出来たら、玉当たり調整を行っていきましょう。
まずは下部のナットを締めます。
このとき、締めすぎると回転が渋く、緩いと鋼球が中で遊び、カップやコーンが破損する可能性があります。
あくまで感覚的なものですが、締め込んだところから1/8回転程度を緩めるくらいが、ちょうどいい気がします。
そして、下部ナットをスパナで押さえ、上部のナットを締めます。
このとき、構造上どうしても下部ナットが多少緩みますので、それも考慮して調整しておいてください。
また、フレームをひっくり返した状態でホイールをつけます。
このとき、クイックリリースはホイールが抜けない程度に軽く締めておきます。
そして、フレームを押さえリムを掴み、上下左右に押したり引っ張ったり揺すったりして、ガタがないことを確認してください。
ガタがなければ手で軽く回転させ、回転の渋さやゴリゴリ感がないことも確認します。
面倒と感じても、これくらい大丈夫と妥協してしまうと、ハブ内が破損してしまう可能性もあるので、慎重に判断してください。
また、メンテナンスを行う頻度については、3000~5000kmを目安とするといいでしょう。
ベアリングというものは厳密には金属同士は触れ合っておらず、グリスによる油膜がある状態でお互いを保護した状態で回転しています。
グリスが劣化すると、保護機能が落ちたり流れ落ちたりして、ベアリングの劣化を早めます。
ですので、期間を決めてグリスアップを行うことは大切なことです。
分解整備推奨のシマノハブは自分でメンテナンスしよう
さて、シマノハブの詳細とその分解整備についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
重要なのは、ホイールというものはノーメンテでずっと乗れるものではないということです。
メンテナンスや調整も慣れれば難しいものではないですし、自分の大切な自転車のパーツですから、メンテナンスをしっかり行って、楽しい自転車ライフを送りましょう。