scottのアルミロード【speedster】は、2016年にモデルチェンジしました。
アルミのエアロ形状ということで硬いイメージを持たれているspeedsterに、乗り心地の良さという概念が導入されています。
先ごろ発表された2018年モデルでは、全車が700×28cのタイヤとなり、ますます快適性重視になる印象です。
そこで今回は、speedsterのモデルの変遷を確認します。
scott・speedsterはこんなロードバイク
まず「speedster」が、どんなロードバイクかを説明します。
scottのロードバイクはカーボンフレームがラインナップの中心ですが、speedsterはアルミフレームです。
現在、どこのメーカーもこぞって品揃えしている、エアロ形状のフレームです。
エアロ形状なのでレーシーな仕様でしたが、2016年のモデルチェンジによりジオメトリが変更され、エンデュランスモデルに近くなってきました。
そして最新の2018年モデルは、scott側がほぼエンデュランス系に位置づけられるスペックを採用しています。
また、搭載されているシマノのコンポのグレード順に品番が振り分けられており、明快に分かりやすくなりました。
そして、2018モデルから、全車が700×28cのタイヤを装備することになりました。
太いタイヤの時代が到来しているとはいえ、大胆な改革と言えるでしょう。
scott・speedsterの転機は2016年
ここでは、scott・speedsterの転機となった2016モデルを、前年までのモデルと比較してみます。
まず、ジオメトリですが、ヘッドアングルを寝かせ気味にしています。
2015モデルの54サイズはヘッドアングルが73度でしたが、2016モデルは72度と1度差が付いています。
ヘッドアングルは立ち気味になると、ハンドルのキレが良くなり反応が早くなりますが、低速域ではハンドルがフラつきます。
反対に、寝かせ気味になると、ハンドルが切りにくくなりますが、直進性が増し低速でも安定して走れるようになります。
ですから、2016モデルは高速域よりも低速域での安定感に、針が振れたことになります。
また、ホイールベースを長めにとったのも、大きな変更点です。
ホイールベースは前輪のハブから後輪のハブまでの長さのことですが、ここが長くなると安定感が増して、乗り心地が良くなります。
2016モデルは2015モデルよりも、54サイズで15mm、56サイズで9mm長くなっています。
ホリゾンタルのトップチューブ長は変わっていませんので、チェーンステーを長くして、後ろ三角を大きめにしています。
このことでレーシーな前傾ポジションをキープしつつ、乗り心地も確保するというバランスになったわけです。
scott・speedsterは2016年に大量に新モデル投入
scott・speedsterが転機を迎えた2016年、形状は大幅な見直しがされました。
上位モデルのCR-1に限りなく近いジオメトリとなり、エンデュランスモデルに舵を切り始めます。
ただ、コンポなどのスペックはそこまで変更はなく、価格もそれほど変わっていません。
しかし、日本限定モデルやディスクブレーキ採用モデル、フラットバーモデルなど、計11種類が投入されました。
日本限定モデルは確認したところ、カラーバリエーションくらいしか、違いが分かりません。
やはり注目すべきは、ディスクブレーキモデルなんですが、本格的なシマノの油圧式を採用しています。
メインコンポに105を据えたモデルで20万円そこそこですから、コスパは悪くないと判断できるのですが…
このほど発行になった、2018年のカタログによると、speedsterにディスクブレーキモデルはありません。
これは戦略的な部分で、よりエントリーモデルに近い価格設定になっているのと、無関係ではないでしょう。
ロードバイクにディスクブレーキは、賛否両論分かれるところです。
2018モデルの2016モデルとのスペックの違い
前項でお話したように、scott・speedster2018に、ディスクブレーキモデルはありません。
また、ブレーキを見ると、ハイエンドモデル以外が、全てテクトロ製になってしまっています。
2016モデルまではリア11速はシマノ製だったのですが、2018モデルは105搭載の「speedster10」まで、テクトロ製になりました。
テクトロだから何でも悪いとは言いませんが、シマノに比べれば、制動力に差があるのは歴然です。
せっかくドライブトレインを、クランクに至るまでシマノ製で統一しておきながら、若干、残念な仕様変更になりました。
また、先述したように2016モデルで25cだったタイヤが、28cにサイズアップされました。
28cで統一するのも珍しいですが、クリアランスに、さらに余裕を持たせ、32cまで装着可能にしています。
これは、いかにscottが全体的な乗り心地や快適性に、自信を持っているかの証明ではないでしょうか。
スポーツ自転車で32cというと、ランドナーやツーリング車が採用する太さですから。
余談ですが、こうなってくると「speedster」という、いかにもレーシーで速そうな名前に違和感を覚えますね。
コスパの高い【speedster SE】
ここまで見てきました2016モデルも、十分にコスパの高さを感じさせましたが、2018モデルは、さらに進化しています。
特に、ハイエンドモデルの【speedster SE】は、他メーカーの同グレードに、全く引けを取らない1台だと思います。
カーボンフォーク採用に、カセットスプロケット以外のコンポが、新型のシマノ・アルテグラR8000系搭載です。
ホイールとタイヤに重量があり、総重量9kgを切れていないのが残念ですが、価格は20万円を切っており、コスパは高いです。
高級カーボン車のイメージが強いscottだけに、余計に際立つのかもしれません。
先述したように、エアロロードに相反する乗り心地を加味した、稀有なモデルになっています。
直進性の高さに加えて、上体が起きるようなジオメトリでもあります。
そのために、用途が限定されないメリットがあり、エアロ初体験の人にも、自信を持っておすすめできる1台になっています。
SEだけでなく、その他のモデルもブレーキ以外は、おおむね納得できるスペックですので、ぜひ1度試乗していただきたいですね。
speedsterはエアロロードとして勝負できるのか?
scott・speedsterの大幅なジオメトリの見直しがされた、2016モデル以降の変遷を確認してきました。
元々が完全なエアロロードとまでは言えない、極端な形状ではなかったことで、レーシー仕様からエンデュランスモデルに、舵を切りやすかったかもしれません。
そもそもscottには、アルミフレームのロードシリーズがspeedsterしかありませんので、オールマイティになるのは、当然の流れだったわけです。
しかも、他メーカーには驚くほどコスパの高いエアロロードがありますので、その分野で勝負するのが厳しいと考えても、おかしくないです。
個人的に最も驚いたのは、メリダの【REACTO 400】です。
アルミフレームでありながら、惚れ惚れするような流線型の見事なエアロフォルムです。
装備を詳しく記すスペースがないですが、正直、speedsterも真っ青なコスパの高さです。
今回はspeedsterの話なので、メリダを持ち上げるのはこれくらいにしますが、強力なライバルであることは間違いありません。
speedsterはオールラウンダーになった!
今回は、scottのアルミフレームの今後を占うspeedsterのモデルチェンジを追いかけてみました。
快適性を加味したジオメトリに28cの太めのタイヤで、エンデュランスモデル的な存在になってきました。
だからと言って、レーシーな部分を完全に失ったわけではなく、オールラウンダーになったと見るべきでしょうね。