かつては人気だったmtbをロード化した自転車は、最近のロードバイク人気や、クロスバイクの一般化で、あまり見かけなくなりました。
しかし、実はmtbロードは街乗りに最適の自転車という意見もあるのです。
そんなmtbをロード化するためのカスタム方法や、生まれた背景、ブームが下火になった原因などについて解説していきます。
ロード化mtbはメッセンジャー御用達だった?
1999年に公開された、「メッセンジャー」という映画を見た方はいらっしゃるでしょうか。
当時、まだまだ日本ではなじみが薄かったメッセンジャー(自転車便)を主題にした映画で、非常に楽しめる娯楽作品に仕上がっており、大ヒットとまではいかないものの、自転車好きの間では話題になったので、ご覧になった方も多いでしょう。
この映画の中で、主人公たちが使用していた自転車は、タイヤやホイールを軽量化し、mtb(マウンテンバイク)をロード化したものでした。
現在のメッセンジャーの方々を見ると、ロードバイクや、固定ギアのピストバイクを使用していることが多いようで、ロード化したmtbを見かけることはありません。
現在も、自転車便業界の中でも、この映画を見て「懐かしい」という感想を持った、と言う方はいます。
もちろん、20年近く前の映画なので、ファッションなどを含めて懐かしさを感じるのは当然ですが、主人公たちが使用している機材がロード化したmtbということに感慨を覚える方も少なくないでしょう。
ロード化したmtbは、すでに過去の流行なのでしょうか?
いえ、実は、ロード化mtbは街乗りでは最強、という意見があるほどでまだまだポテンシャルは十分あるのです。
今回は、そんなロード化mtbについてご紹介していきます。
ロード化mtbが生まれた背景は?
もともとmtbは、それまで自転車が苦手としていたダートなどの荒れた路面でも走行可能にした自転車で、1970年代にアメリカで誕生し、一大ムーブメントとなりました。
日本では、1980年代の後半になって、アウトドアブームとともに認知度が上昇し、一躍、スポーツ自転車の主流に躍り出ました。
mtbはごつごつしたブロックパターンのタイヤや、頑丈なフレーム、派手なカラーリングなど、それまでの自転車の常識とは大きくかけ離れたスタイルでしたが、それがむしろかっこいい、と受け入れられたのです。
当時、日本で自転車と言えば、軽快車(いわゆるママチャリ)が一般的で、スポーツ用の自転車については現在よりも認知度が低かったこともあり、mtbは久々にヒットしたスポーツ自転車となったのです。
自転車便が日本で始まった1990年代には、メジャーなスポーツ自転車としてはmtbがほとんど唯一と言っても良い存在だったので、彼らが自転車便の機材としてmtbを選択するのは自然な流れだったのでしょう。
そして、mtbを街中で乗りやすいスタイルに仕上げていく中で、ロード化mtbに移行していくのです。
mtbをロード化するにはまずタイヤから
mtbをロード化する場合、まず最初に行うカスタムはタイヤの交換です。
mtbのブロックパターンのタイヤは悪路での走破性を第一に考えて作られており、舗装路では抵抗が大きいため、スピードはどうしても出すことができません。
ブロックパターンのタイヤ以外で選ぶのであれば、センターリッジタイヤ、スリックタイヤ、セミスリックタイヤが選択肢として挙がってきます。
センターリッジタイヤとは一見、ブロックパターンと同じように見えますが、真ん中のブロックが山の尾根状(センターリッジの名称の由来)につながってフラットになっています。
オフロードもたまに走る機会がある、というのであればセンターリッジタイヤがおすすめです。
もっと街乗りに特化した自転車にしたいのであれば、セミスリックタイヤがおすすめです。
スピードを考えれば溝のないスリックタイヤの方が良いのですが、雨が降った際には滑りやすいという短所があります。
街乗りでは、セミスリックタイヤにしておいた方が安全です。
mtbをロード化するにはハンドルやサスの交換も
mtbは、オフロードを走りやすいようにアップライトなポジションが設定されています。
ハンドルは幅広で位置は高く、悪路でも抑えが効くようになっています。
ロード化にあたっては、スピードを重視して、ハンドル位置を下げて、前傾姿勢を若干強る方向でセッティングします。
また、あわせてハンドルの幅をやや狭いものに交換した方が取り回しがよくなるので、街乗りでは便利です。
極端な方は、ドロップハンドルに交換する方もいらっしゃいますが、そうするとシフトレバーなども合わせて交換する必要があるので、コストを考えればあまりおすすめできません。
mtbは、悪路を走るために、前後にサスペンションが設定されているものがあります。
特にリアサスペンションは、オフロードでも路面の追従性が高くなり、またふんわりとした柔らかい乗り心地も味わえますが、ペダリングの力が逃げたり、車重も重くなるなど、舗装路を走る上ではデメリットも増えます。
このため、リアサスペンションについてはリジッド(固定式)のものに交換する方がベターでしょう。
あわせてペダルもSPDペダルに交換して、ビンディング仕様にすれば、より効率的なペダリングが可能になります。
ビンディングに抵抗がなければおすすめのカスタムです。
ロード化mtbが下火になったのはなぜ?
自転車便で、ロード化mtbが下火になった理由は、ロードバイクやピストバイクに乗り換えるライダーが増えたためです。
ロードバイクに乗り換える理由は、なんと言ってもスピードです。
速く走ることを最優先に考えて設計されたロードバイクに比べれば、いくらロード化したとは言え、mtbはフレームも重く、ポジションも前傾がきついくないので、スピードではかないません。
特に車重の重さは、坂道の多い東京都内を走行する上では、非常に不利になります。
1日に約100kmを走行するというメッセンジャーの方々にとって、自転車の重量には敏感になって当然でしょう。
また、ロード化mtbから、固定ギアのピストバイクへの移行は、シンプルな構造によるメンテナンスの容易さや、メッセンジャーの本場、NYではピストバイクが主流になっていたことが大きく影響しているのではないでしょうか。
一方、一般のユーザーにとっては、クロスバイクの普及が大きいと考えられます。
クロスバイクはもともとmtbとロードバイクのクロスオーバーから来ている、とも言われることがあるように、両車の良い部分を兼ね備えているのが特徴です。
あえてmtbを改造しなくても、リーズナブルでスポーティな自転車が購入できるのであれば、そちらを選ぶのが自然な流れでしょう。
それでもロード化mtbが街乗り最強な理由は
それでもロード化mtbが街乗りでは最強、という方もいます。
まず、クロスバイクなどに比べて、頑丈なフレームは、多少ラフな扱いをしても大丈夫なので、気を使わなくて済むのはメリットです。
リアキャリアを装備して、多少多めに荷物を積載してもmtbのフレームなら、影響は少ないでしょう。
オフロードを想定してギア比がワイドに取られていることが多いため、トップスピードはそれほどでもないものの、都内の坂道も軽くこなします。
また、リアサスペンションは、街乗りではデメリットの方が大きいことはさきほど述べたとおりですが、フロントサスペンションは、段差などが多い街乗りでは、意外に重宝します。
街乗りで便利なサイドスタンドを付けても、ロード化mtbなら違和感はありません。
今こそロード化mtbを見直してみる?
いかがでしたでしょうか。
ちょっと懐かしい感じのあるロード化mtbですが、まだまだメリットも多いことが理解いただけたのではないかと思います。
とは言え、わざわざ新車のmtbを購入して、というのはなかなか難しいでしょう。
オークションなどで安く入手したり、自宅に眠っているちょっと古いmtbをロード化してみるのも良いでしょう。
基本はタイヤ交換などの、さほど難しくない改造なので自分でパーツを選んでカスタムしてみるのも楽しいのではないでしょうか。