アメリカのスペシャライズドはヨーロッパのメーカーに比べれば歴史は浅いですが、プロのロードレースチームにフレームを提供し、主要なレースで何勝もしているような実力のあるメーカーです。
ロードバイクはカーボンフレーム御三家と呼ばれる「ヴェンジ」「ターマック」「ルーベ」に、長い歴史を持つアルミフレームの「アレー」が主力です。
中でもルーベがヒルクライムに向くと、もっぱらの評判なのですが、どうなのか検証してみたいと思います。
SPECIALIZED(スペシャライズド)とS-WORKSの違い
まず、スペシャライズドでは「S-WORKS」の存在を知っておかなくてはなりません。
S-WORKSの【WORKS】とは、プロのチームに機材を提供して、そのメンテナンスも行う団体のことです。
SはスペシャライズドのSなので、S-WORKSはスペシャライズドのWORKSという意味です。
そのため、同じ車種でもプロ仕様の自転車がS-WORKSロゴを冠しており、一般車はSPECIALIZEDのロゴが付いています。
もちろん市販されていますので、カタログやネットにも掲載されており、例えばヒルクライム向きと評される「ルーベ」であれば、S-WORKSのハイエンドモデルは100万円を超えます。
他メーカーのロードでも、100万円を超えるモデルはありますので驚くほどではないですが、やはりおいそれと手が出るものではないですよね。
今回は一般車をご紹介していきますが、S-WORKSに比べ、格段に性能が落ちるなどということは全くなく、同じ金型で作ったフレームもあるくらいなので、自信を持っておすすめできるレベルなのは言うまでもありません。
ヒルクライムに向くロードバイクとは?
今回はスペシャライズドのカーボンフレーム車「ルーベ」がヒルクライム向きかどうかの話ですが、まずは簡単にヒルクライムについて触れておきましょう。
ヒルクライムは自転車競技のひとつで、山や丘陵の上り坂を走るタイムを競います。
ヒルクライム以外のロードレースは、風の抵抗を最小限に抑えるために集団走行になりやすく、接触の危険性が高いので初心者には不向きです。
一方、ヒルクライムは速度が出ないので風よけにあまり意味がなく、集団走行になりづらいので自分のペースで走れ、初心者向きと言われています。
また、重力に逆らって自転車を持ち上げるように進んで行くので、車体が軽い方が絶対的に有利になりますし、ギア比が軽い構成の方がヒルクライム向きです。
さらにヒルクライムは、少しアップライドな姿勢になった方が良いので、フレーム形状(ジオメトリ)やステムの突出しの長さなども注意したいポイントです。
スペシャライズドのルーベはどんなロードバイク?
スペシャライズドのルーベですが、位置付けとしてカーボンフレーム車の中では高速走行向きではなく、長時間を快適に、楽しみながら走ることを目的とした「エンデュランスモデル」です。
その為低速域での車体の安定性や、アップライドな姿勢になるようなジオメトリなので本来はヒルクライム向きなのですが、疑問もあります。
ルーベにも種類があり、ハイエンドモデルと目されるのは、シマノ・アルテグラの電動変速機Di2を搭載した【Roubaix SL4 Expert Disc UDi2】です。(参考価格:¥620,000)
現在、スペシャライズドのホームページ上ではルーベの最新モデルが閲覧不可なので、過去モデルで申し訳ないですが、恐らくこれがハイエンドモデルです。
スペシャライズドは車重を公表していないので詳しくは分かりませんが、このモデルはやはりエンデュランスと位置付けられているだけあり、それほど神経質に軽量化を図っているようには見えません。
実車を測量した人によると、8kgを超えているなんて話もありますので、それだけでも個人的にはヒルクライム向きとは思えないです。
さらにギア比も、高速巡航向きとまでは言い切れませんが、ヒルクライムに適しているかと言われれば微妙です。
これは付け足しのようなものですが、そもそも、ヒルクライムに重くなる要因であるディスクブレーキモデルで挑むのも疑問ですね。
スペシャライズドルーベSL4はヒルクライム入門機
前項では、少しネガティブな言葉を並べましたが、ヒルクライム向きかどうかという観点の評価であることを、ご了承ください。
スペシャライズドのルーベは、先述したようにコンセプト自体は違いますが、ジオメトリはヒルクライム向きなので、経験の浅い内であれば満足のいくものだと思います。
そこでヒルクライムの入門機と考えて、ルーベの中では最低グレードになりますが【Roubaix SL4】をおすすめします。(参考価格:¥220,000)
コンポはブレーキ以外、シマノ・ティアグラのフルセットです。
リアのカセットスプロケットが11-34Tなので、平地巡航では間延びするようなギア比になりますが、ヒルクライム初心者には、軽い方に多くのギアがあるほうが安心でしょう。
正直、ブレーキやホイールは褒められたものではありませんが、入門機としては十分な走行性能だと思います。
ただ、噂によると、2018年モデルよりディスクブレーキ化されるようなので、価格と重量がアップするのが気がかりです。
ヒルクライムでレースに勝つならルーベよりもタ―マック!
スペシャライズドのカーボンロードには、完全レース仕様のターマックがあります。
軽さと反応性に特化したフレームに、高速域でハンドリングがしやすいようなヘッドパーツの構成になっているので、ハイスピードでこそ最大の走行性能が引き出される1台です。
ルーベのような乗り手に与える「優しさ」はなく、とにかく踏んだら踏んだけ反応が返ってくるような切れがあるので、普段使い向きではないと思います。
また、軽量化の一環だと思うのですが、2017年モデルにはディスクブレーキ採用車は1台もありません。
では、おすすめの1台をご紹介します。
【Tarmac Men Expert】
参考価格:¥432,000
ターマックのハイエンドモデルです。
最先端のフレーム成形技術により、従来よりも200g以上の軽量化に成功し、フレーム重量がついに1,000gを切りました。
ターマックは昔から、坂の上りでの反応の良さに定評がありましたが、軽量化されたことで、さらにヒルクライム向きになりました。
新アルテグラ8000系のフルコンポに、DT swissの軽量ホイールを採用し、スペックに一切の妥協が見られません。
また、タイヤクリアランスを30mmとっており、28mmも装着可能なので、乗り心地を高めるカスタマイズも容易です。
ヒルクライム向きのアルミフレームならアレー
アルミフレームの「アレー」シリーズは発売開始から40年以上が経過する、スペシャライズドの歴史そのものとも言えるロードバイクです。
コンセプトは昔からターマック同様、レーサー仕様で、ヒルクライム向きとも評されています。
アルミですから当然、軽さではカーボンに譲りますが、そのぶん剛性が高く、しなやかです。
特に2018年、大幅にリニューアルされるアレーは、これまでのターマック寄りの攻撃的なジオメトリから、ルーベに寄ったエンデュランスモデルに近付きました。
しかし、それで失ったものは何もなく、安定した走行性能を獲得して、より万能性が高まったと言えるでしょう。
特に「Allez Elite」は、リア10速から11速の105になりましたし、フルカーボンフォークも採用されましたので、著しいグレードアップとなりました。
ターマックに装備されているのと同じ、DT swissのホイールを装備している点も見逃せず、コスパの高い1台です。
ルーベはヒルクライムよりツーリング!
今回は、スペシャライズドのルーベがヒルクライム向きか否かというテーマでした。
個人的にはヒルクライムならば、ターマックかアレーをおすすめしたいですね。
ルーベはもっと自転車を楽しみたい人向きで、ツーリングバイクのような趣です。
通勤などの普段使いにも向いており、ホビーライダー向けのロードバイクと言えるのではないでしょうか。