インターハイ(全国高等学校総合体育大会)に自転車競技もあるのをご存知でしょうか。
最近では、大人気の自転車マンガ「弱虫ベダル」で、インターハイでのロードレースを舞台にしていることから、認知度も高まってきてはいます。
また、競技種目やレギュレーションなどをご存知の方はまだまだ少ないでしょう。
今回の記事では、自転車競技の甲子園とも言えるインターハイの競技種目や特色、「弱虫ペダル」との違いなどについて解説していきます!
インターハイは高校生スポーツの祭典
インターハイの正式名称は「全国高等学校総合体育大会」(Inter-High School Championships)と言います。
高校生スポーツの全国的な祭典として8月を中心に開催され、バレーボールやテニス、バスケットボールをはじめ様々なスポーツ競技が行われます。
この種目の一つに自転車競技も入っており、最近では大人気自転車マンガ、「弱虫ペダル」がインターハイのロードレースを舞台にしていることから、一躍一般にも知れ渡ることになりました。
かつては各都道府県持ち回りの開催が基本だったので、皆さんの地元で開催されていたりしたのを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
現在は、施設が充分に整っていない県の負担を軽減するために、各地方での開催方式に移行しています。
とは言え、特に自転車の場合には自転車が走れるようなクローズドにできる広い施設が必要で、他の競技よりも開催できる場所が限られてしまいます。
このため、2015年に近畿地方で開催された際には、ロードレースのみ東海地方の三重県鈴鹿サーキットを利用して開催されるといった措置が取られたことがありました。
ちなみに2017年度は、南東北地方開催で主会場は山形県で行われる予定です。
自転車競技については、福島県が会場となり、2017年7月27日(木)~30日(日)にかけて開催されます。
トラック競技の会場は、いわき市のいわき平競輪、ロードレースの会場は、石川町・浅川町の特設した周回コースとアナウンスされています。
自転車競技はトラックレースとロードレースの2種類
先に会場の関係で少し触れましたが、インターハイの自転車競技は4日間にわたって開催され、クローズドコースで行われるトラックレースとロードレースの2種類に分けられます。
各種目に個人優勝と団体競技での優勝があり、4日間で最高のポイントを獲得した高校が優勝となります。
トラックレースは種目が多く、
・1kmタイムトライアル
・スプリント
・ポイントレース
・4km速度競走
・3kmインディヴィデュアル
・パーシュート
・ケイリン
・スクラッチ
・4kmチームパーシュート
・チーム・スプリント
と多くの種目があります。
これだけの種目を3日間でこなすというのはなかなかハードですね。
また、トラックレースは、秩父宮記念杯全国高等学校対抗自転車競技選手権大会を兼ねています。
そして、最終日4日目に行われるのがロードレースです。
かつてはチームでの団体戦を行っていた時代もありますが、現在は個人競技のみとなっており、周回コースを利用した合計100km程度を走ってタイムを競います。
インターハイの自転車競技と言えばこちらを思い起こす方も多いかもしれませんね。
こちらは、全国高等学校自転車道路競走中央大会を兼ねての開催となっています。
インターハイでの自転車競技のレギュレーション
インターハイで使用する自転車は、高校生のレースとはいっても本格的なもので、プロのロードレース同様にUCI(国際自転車競技連合)のレギュレーションが適用されます。
このレギュレーションは非常に厳密なもので、各種目によって自転車の重量やギア数、ハンドルやサドルの高さ、服装に至るまでしっかりと規定されています。
検査項目も多岐に渡り、自転車の数も多いことから全自転車の検査は行わず、ランダムに自転車を選んで競技前と後に検査することになります。
検査で違反事項が見つかれば、失格になるなど厳格に運用されています。
2017年の南東北大会の規定では、1チームは7人までとなっています。
トラックレースの個人種目については1名1種目、団体種目はいずれか1種目となっています。
ロードレースは個人ですが、ブロック選出枠として割り当てられた人数が参加できて、1校の出場枠は3名までです。
外国人留学生の出場枠も設けられていて、出場者が6名以上なら2名まで、5名以下の場合は1名で 団体種目については1名となっています。
なお、自転車競技については男子のみとなっており、トラック・ロードともに女子の正式種目はまだありません。
しかし、2009年からトラック種目について公開競技ですが、女子の競技が開催されるようになりました。
インターハイとプロのロードレースの違い
プロの自転車ロードレースでは、有名なツール・ド・フランスや、ブエルタ・デ・エスパーニャなどのように、一般公道を利用して行われることが多いです。
インターハイにおいては、公園やサーキットといったクローズドのコースで行われます。
ちなみに2016年に開催された中国地方大会でロードレースのコースとなったのは、広島県立中央森林公園サイクリングロードでした
また、プロのロードレース部門は複数日に渡って開催されるいわゆるステージレースが多く、総合優勝の他にもポイント賞や山岳賞、新人賞が用意されています。
それぞれに合わせたジャージが用意されることで有名ですが、インターハイについては開催は1日だけで個人総合優勝のみとなっています。
また、プロと違ってドーピングや尿検査もありませんが、こちらは今後適用されるようになるかもしれませんね。
プロのロードレースもインターハイも個人競技である点は共通しているのですが、プロの場合はチームメンバーがそれぞれ役割分担を行って、最終的にはチームのエースをゴールラインに運ぶという団体競技に近い性格です。
そこがロードレースの魅力となっているのが最大の違いと言えるかもしれません。
大人気自転車マンガ「弱虫ペダル」版インターハイ、ロードレースについて
大人気自転車マンガでTV、映画アニメ化もされた「弱虫ペダル」。
主人公が高校生の自転車部に属していてインターハイが舞台として設定されていますが、現実のインターハイとはルールがかなり異なっています。
まずトラックレースについては、劇中では全く触れられていません。
このため、インターハイ=ロードレースのみと思っている読者の方も多いのではないでしょうか?
ロードレースについては実際のインターハイがクローズドコースを使用した周回レースなのに対して、プロのレースと同様にステージレース形式となっているところ最大の違いです。
また、劇中では2日目以降のスタートはお正月の「箱根駅伝」復路のように、前日のタイム差順にスタートしていくところがユニークです。
前日の順位に関係なく一斉スタートにすると、見た目の順位と実際の順位が一致しなくなる場合が生じます。
これも箱根駅伝復路の一斉スタートを思い起こしていただければわかりやすいと思います。
劇中のインターハイのコース設定にも箱根駅伝の影響がうかがえるので、こういったルールにも箱根駅伝の要素を取り入れたのかもしれませんね。
あの佐藤琢磨選手がインターハイの自転車競技で優勝していた!
もとF1ドライバーで先頃、アメリカ自動車レースの最高峰、インディ500で優勝したことで話題となったレーシングドライバーの佐藤琢磨選手。
実は彼が高校生の時に自転車競技でインターハイに出場していたことをご存知でしょうか。
しかも、もともと自転車部がない高校だったにも関わらず、インターハイに出たいがために先生に頼み込んで自転車部を作ったそうです。
そこでたった一人の部員として練習にはげみ、高校三年生の時のインターハイでついに優勝を果たしました。
一時は自転車競技でオリンピックを目指そうとまで考えていたそうです。
大学に入ってからも全日本選手権で1位になるなどの活躍を見せていたことから、19歳でオリンピアンをあきらめてモータースポーツに転向していなければ、ひょっとしたらロードレースの世界でもトップアスリートになり、グランツールにも出場していたいたかもしれませんね。
現在も自転車好きとして知られており、自転車専門誌の誌面に登場することもあります。
インターハイから世界のロードレースへ!
インターハイに出場するためには、高校の自転車部に所属する必要があり、さらに全国高体連自転車専門部に加盟していることが条件となります。
全国での加盟している高校の数ですが、約240校程度となっています。
高野連(高校野球連盟)に所属している学校が約4000校もあることを考えれば、自転車競技がまだまだマイナーな競技であることは間違いありません。
しかし、だからこそ佐藤琢磨選手のように一人で自転車部を立ち上げてインターハイに出場、さらには優勝までしていまうというマンガを超えるような展開が可能になったのでしょう。
今後、自転車のロードレースが盛り上がって行けば、インターハイを目指す高校生も増え、その中から世界の大舞台、グランツールに羽ばたいていく選手も出て来るかもしれませんね。